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700Mbps超の速度を実現、ソフトバンクモバイルがLTE-Advancedの実証実験を披露

2014年01月27日 16時00分更新

 ソフトバンクモバイルは1月24日、3.4GHzの周波数帯域を用いたLTE-Advancedの実証実験を東京・銀座で実施、報道関係者向けにそのデモを公開した。

 “3.4GHz帯”は、LTEの次の方式となる『LTE-Advanced』の導入に向け、総務省で新たな割り当てが検討されている周波数帯域。この帯域は現在のLTEで主流のFDD方式ではなく、2.5GHz帯を用いた『AXGP』や『WiMAX2+』などと同じTDD方式での割り当てが見込まれることから、同社ではTDD方式でのLTE-Advancedによる実験を進めていると、ソフトバンクモバイル技術総合研究室の矢吹歩氏は話している。

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↑今回の実験を実施したエリア。ソフトバンク本社のある汐留から、基地局を設置した銀座を通り抜けるルートだ。

 今回の実験では、実際の割り当てが予定されている帯域のうち、実験用に割り当てられている3480~3560MHzの80MHz幅を使用。これを20MHz幅ずつに分け、4つの帯域をLTE-Advancedの要素技術の1つである“キャリアアグリゲーション”で束ねて用いる。さらに基地局と移動機の双方に、現在のLTEで一般的なアンテナの本数の倍となる、4本のアンテナを用いて通信する“4×4MIMO”を採用。これらの要素を全て用いることで、TDD方式によるLTE-Advancedで目標としている、理論値では最大1Gbpsのスループットを実現するとしている。ちなみにTDD方式の場合、上りと下りの伝送比率を変更できるが、今回の実験では下りの比率を最大限に高めているとのことだ。

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↑80MHz幅の帯域を4分割してキャリアアグリゲーションを実施、さらに4×4MIMOを用いることで、理論値では1Gbpsの通信速度を実現するという。

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↑実験エリア内には写真のような基地局を9箇所に配備。いずれもPHSやAXGPとアンテナなどの設備を共用しており、うち1つは小型の“ピコセル”になるとのこと。

 実験用にアンテナを搭載した移動機を搭載したバスに乗り込んで通信速度を確認してみると、最も速度の出るエリアでは下り最大700Mbpsを超える速度を確認できた。矢吹氏によると、これまで測定した実績では、最大で下り773Mbpsを確認しているとのこと。700Mbpsという通信速度はイメージしづらいかもしれないが、矢吹氏によると「現在注目を集める4K動画であれば、4~5人は同時再生できる」そうで、実際にバスで走行しながらYouTubeの4K動画をスムーズに再生できる様子も披露された。より画質が落ちるHD画質の動画であれば、同時に88本再生できるという点からも、その実力の程を知ることができるだろう。

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↑実験に使用したバス。本体上部には8本のアンテナが装備されているが、今回は性能を考慮し、2本のアンテナを組み合わせて1本のアンテナとして活用しているとのこと。

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↑バスには移動機に相当する実験用のユニットを搭載している。

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↑最も速度の出る場所においては、700Mbpsを超える通信速度を記録していた。

 また今回の実験では、隣接する3つの基地局について、同一の信号を同時に発信することで基地局同士を協調させる『CoMP』(複数基地局間協調伝送技術)という技術を用いてグループ化し、同じグループのエリア内ではスループットが落ちないようにする仕組みを用意しているとのこと。矢吹氏によると、LTEは3Gと比べ干渉に弱く、基地局と基地局との間では速度が低下しやすい傾向があることから、そうした場所での速度低下を防ぐためにCoMPを導入しているのだという。実際の実験においても、グループ化された基地局のエリア内では下り500~600Mbpsの通信を継続し、4Kの動画も途切れなく再生している様子を確認できた。

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↑CoMPの採用で3つの基地局をグループ化することにより、基地局間の干渉を防いで通信速度の安定を実現しているという。

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↑バス走行中も4K画質の動画を安定して再生できるデモも披露された。

 ちなみに3.4GHz帯は、現在ソフトバンク系列のWireless City Planningが、AXGPで使用している2.5GHz帯よりも高い帯域となることから、懸念されるのは電波が遠くまで飛ぶのか?ということ。これについて矢吹氏は、「広い道路のような場所であれば、1kmくらいまで届くなど、2.5GHz帯と大きく変わらない特性であることが見えてきた」と答えている。屋内への浸透についてはまだ実験中とのことだが、近隣の喫茶店10件くらいで調べた限り、通信できることは確認できたとのことだ。

 もう1つ、3.4GHz帯をTDD方式で活用する上で懸念されているのが、事業者間による同期の問題だ。割り当てられた帯域をフルに活用して周波数の利用効率を高めるには、ガードバンド(隣接する帯域を使用する他のシステムとの干渉を避けるために設けられる、未使用の帯域)なしで運用できるのが望ましいが、それには同じ帯域を割り当てられた他の事業者と同期をとり、タイミングを合わせる必要がある。これについて矢吹氏は、「中国でもガードバンドなしで運用するよう政府から指導が出ていた。そうした取り組みを参照しながら、他社と構成やタイミングなどについて協調していく必要がある」と話している。

 今後ソフトバンクモバイルでは、実験免許の割り当てを受けている12月末まで実験を継続するとのこと。スモールセルでの検証や、アンテナの本数を増やし高速化を実現する“8×8MIMO”の実現など、無線品質を高めるべくさらなる検証を進めていくとしている。

●関連サイト
ソフトバンクモバイル

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