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大学生の半数が利用するツイキャスの魅力を開発者に訊く

2013年12月13日 22時30分更新

 『ツイキャス』はスマートフォンの動画生中継アプリ。TwitterやFacebookのアカウントでログインし、複雑な設定など必要なく配信ボタンを押すだけでスマホのカメラで動画生中継が行なえる。その手軽さが受け、2013年11月15日には世界で400万ユーザーを突破。特に24歳以下の若年層に人気で、約133万人の大学生が利用しているという。これは全国の大学生の約半数にあたる数字。複数IDの運用などはあるかもしれないが、ツイキャスがきっかけでモデルデビューを果たすユーザーが出はじめるなど、確実に現在、文化を生み出しているサービスだ。

ツイキャス

 海外に目を移せば、実はポルトガル語圏での利用が多く、ユーザーの16%がブラジルという。さらに本格的な海外進出を目指すとする。なぜ、若者に人気になったか、また海外とくにブラジルでユーザーが多いのか、そのヒミツをツイキャスを運営するモイ株式会社の創業者でもある赤松洋介代表取締役に話を聞いた。

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――『ツイキャス』は軽さと手軽さが特徴ですが、配信時にどんな処理をしているのでしょうか?

『ツイキャス』はスマホで手軽にできるライブコミュニケーションサービスです。ライブ配信というよりは、自分の顔とか映しながら友達や仲間とコミュニケーションを取って楽しめるサービス。基本的には9割くらいがツイッターと連携して使っているので、ツイッターよりリアルな世界を垣間見ながらつながって遊ぶツールとして広まっています。

 8割のユーザーがスマホから配信したり観たりしていて、他の人とボタンひとつでつながれます。そこはスマホなので回線が弱いことがありますが、つながりを保ち続ける工夫をしています。

 帯域の状態を見ながら、必要に応じて自動的にビットレートを落とす処理がアプリ内で行なわれます。映像のフレームレートや音声のビットレートを落としながら、なんとか“配信をする”のを続けるんです。

 具体的な数値は言えませんが、回線速度が64kbpsまで落ちても配信できるように設計されています。スマホの7GB制限を引っかかっても配信できるんです。スムーズには無理で、カクカクなったり画質は悪くなりますが……。ほかにも移動中の電波の途切れやハンドオーバーでも耐えながらつながる工夫をしています。

――ビットレートを自分でいじりたいという要求はありませんか?

 初期のアーリーアダプター層は『Ustream』の替わりとして使おうとしていたので、「ビットレート調整の項目が欲しい」とか「画質は良くならないの」とかいっぱい苦情は延々とありました。最近はまったくなくて、「つながらない」とか「聞こえない」とか基本的なお問い合わせのほうが圧倒的に多いですね。

 そもそもはじめはライブ配信自体が、友達とコミュニケーションを取るという文化がそんなになく、どちらかというとイベントを中継したりUstream的な使い方が多かったので大人の方が使っていました。そこから自由にコミュニケーションとい部分に入ってきたのが、飲み会を配信したり、猫と遊んでる様子を配信したりと……。転機は去年の11月くらい、若い女性、女子高生とか女子大生に使われだしてきて、「おもしろい」ということで急速に広まっていきました。予期しない方向で広まったので不安の大きい戸惑いの1年でした。

――そのきっかけは把握しているんですか?

 さっぱりわからない(笑) まず学校で流行ったのだとは思います。もともとロンブーの淳さんといっしょに長くやっており、震災の中継もしていて、芸能人も淳さん中心に集まっていたので、いつブレイクしてもおかしくないと思いながらも、なかなかならなくて。

 読者モデルの方に使われるようになってくると、男性だけじゃなくて女性にも人気がありますので、それを見た人も自分も配信してみようと女性の間にも広まっていき、その配信目的に男性が使ったりとか男性の人自身が使ったりという流れがあります。ニコ生と比較しても女性や若いユーザーはすごく多い。ツイキャスが無料というのもありますし、あとは今の若年層のツイッターの流行り方に似ているんじゃないかなと思っています。

――出会い目的で使われないか心配はありませんか?

 個人情報に関してはなるべく公開しないようにと注意しています。ただ、実際問題なかなか難しいところ。合言葉知ってる人のみが観られる“プライベート配信”を推奨しています。ただ文化として結構、健全なコミュニティーが育っていて、出会い目的で配信する人が少ないです。良識を持った人が多く、出会い目的の人が書き込みをしにくい流れがあって、住んでいる場所などを聞くと他のユーザーからすぐに報告が入ります。

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↑こちらは公式に使われている画像だが、トップページで観られる配信者一覧をみると、平日の午後早い時間ではあったが10代女性の姿ばかりだった。

――ユーザー属性が変わったことにより使われ方の変化はありました?

 外配信が多かったのですが、『iPhone4』でインカメ機能が付いたあたりから自画撮り的な配信が増えてきました。そこから1年くらい経ち、女性のインカメを使ったコミュニケーションが増えてきました。プロの人も居れば、シンガーソングライターのように発信する人も居れば、普通に誰かとしゃべろうぜという感じでやる人もいて、3パターンくらいで使われています。

 ツイッターと連携してるのでフォロワーさんが来て誰かと話しましょうというのが圧倒的に多いです。暇なんで雑談しましょうというコミュニケーションの取り方。おそらく『LINE』など相手を指定してやるのではなく、暇な人だけ来ればいいという気軽さがあるのかなと思います。そこで、ありのままの普段の日常的な姿を配信するという文化ができて、落ち込んだときとかコミュニケーションとりたいというときに使っていただいてるのかなと。

 若い方はメールは件名を打つのがめんどくさいと思っていると言います。LINEやチャットも文字打ったり絵文字入れたりする必要がありますが、ツイキャスならボタン押して話してるだけでコミュニケーション取れていく。いろいろな人とコミュニケーションするって意味でも楽しいし、何を考えるでもなく気軽にコミュニケーションを取るって意味でも楽なのではと感じています。

――若いユーザー層の拡大はまだまだ狙っています?

 国内は今のペースであと3年は伸びるかというと、そこは伸びないと思います。今は若い女性が広めてくれていますが、今後はもう少し幅広い層かつ世界中の人たちに広めていきたいと考えています。目標的には3年後に3500万人のユーザーが使えるようなものにしたい。世界を目指しながら頑張っていこうと思ってます。あまり若い人文化用にサービスをカスタマイズしてしまわないで、フラットな感じで使えるようにしていたいです。日本の高校生が使って、かつブラジルではデモの配信に使われているという現状が成り立っているので、結構プラットフォームとしては中立的になれているかなと思います。

――海外展開ですが、いまのユーザー比率は?

 ユーザーの20%近くが海外で、16%くらいがブラジルです。じわりじわりと広がっているので、展開を考えています。ブラジルで流行った理由は、回線が細くても使えるのがあると思います。音声だけだと22kまで対応していますが、ブラジルは映像配信が好きみたいで、ライブ配信の特集などありそこで取り上げられました。ライバルはそんなにはいませんが、チャットサービスのほうが競合になってくるのではないかなと思っています。動画チャットも増えてきていますし、LINEもはじめたので競合になってきます。そこで負けないように頑張ろうと。

――ブラジル以外にも伸びそうな国はありますか?

 スペイン語圏でメキシコ、チリ、コロンビア。その辺は少しずつですが、政情不安があるときに使われるツールとしての認識があり確実に配信できるツールとして徐々に認知を広めています。

 実際は海外でも女性ユーザーとか、世界中に人気なアーティストのファンが集まって語り合ったりという感じで、日本で使われているような使われ方も最近しだしてきています。日本みたいにコミュニケーションのひとつの手段として使ってもらうのはできているので、いかに広げてけるのかというところだと思います。

――海外への拠点進出も考えている?

 2013年12月には拠点だけ置きます。今1番必要なのはデータセンターで、ブラジルからもパケットひとつひとつ日本から流してるので、米国にサーバーと人間の拠点をつくろうと考えています。

ツイキャス
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↑ツイキャス開発の基となった、ラジコンとLinuxの基盤、ウェブカメラなどが本社に飾られていた。

――AndroidとiOS、PCユーザーの比率は?

 配信側は76、77%くらいがiPhoneとAndroidで、最近少しAndroidがシェア的に増えてきてるが、ほぼ五分五分です。視聴者も同じくらいで、iPhoneのほうが、他の知らない人の配信社を観るというザッピング率が高い感じはします。観る側は6割くらいがスマホからで、残りがPC。もちろんPCのほうが視聴時間が長く、iPhoneだと6~8分が平均だがPCだと十数分見続けたりもあります。

――開発のきっかけやサービスの成り立ちを教えてください

 2009年にラジコンにLinuxのボードとウェブカメラを積んで遠隔操作できるサービスを1年弱やっており、それを閉鎖することになりました。その時にウェブカメラ、無線LAN、全部iPhoneに入ってるじゃないかということで、2010年にシステムを全部iPhoneに移植して、世界中どこでも使えるようになるのではと思いアプリをつくりました。「ラジコンにサーバー入れたらおもしろいんじゃね?」というのがきっかけで、おもしろいサービスでしたが、これからはスマホだと移行しました。

 iPhoneからライブ配信するには非公開APIを使わないとできませんでしたが、ちょうど2009年11月に認められて、Ustreamが先駆けて始めました。こんなおもしろいの使えるなら、つくってみようということで公開したのがツイキャスです。当時ライブ配信でコミュニケーションを取ったらおもしろいというより、先に技術があってiPhoneでこれができるようになったから合わせたらいんじゃないかくらいの感じでつくりました。

――今後の実装していきたい機能追加などはありますか?

 ライブ配信ツールというよりはコミュニケーションツールを目指しているので、もう少しコミュニケーションを活性化させるもの、色んな人をつなげていくところをつくっていく予定です。ただ、当面は映像配信、音声配信にスマホで戦うカタチになる。LINEぐらいバッと広がり誰でも使えるものがいい。電話はみんな使っているが、みんなライブ配信はしない。一般の人でも使えるようにしていきたい。

――公式番組的なもの?

 それは検討中です。モデルさんとか事務所があり、公式で枠として決まってるほうがやりやすいという話があったりするので、それに合わせてやっていきたいという思いあります。事務所に配信止められるパターンがあるという話があるので。ただ、ツイキャスはこう、ある意味素人感があるところがいいというのを支持してるユーザーが多くて、今までも特別扱いを一切していない。今後もそこまでしていくつもりはない。一般のユーザーでも頑張ったら人気が上がるし、広告もらってるからって凄く目立たせるとかすると、ユーザーもしらけてしまうと思うので、そういうことにならないようにユーザーを大切にしていきたいですね。

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(2013年12月15日20時修正:一部、お名前を間違って記載しておりました。お詫びして訂正いたします)

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