Amazon InstantVideoが11月26日、国内サービスイン。すでに11月25日付けで先行報道があったように、Amazonが北米で展開するサービスの日本版というもの。いわゆるVOD(ビデオ・オン・デマンド)の形態をとるストリーミング配信サービスで、カテゴリーとしてはGoogleVideoや少しサービス形態が違いますがPPV(ペイ・パー・ビュー/有料配信)コンテンツも買えるという点ではU-NEXTも部分的に競合ということになります。
Hulu、dビデオ、U-NEXT、Googleビデオまで複数のVODサービスを愛用しているイトーの視点から見たアマゾン インスタントビデオの評価は……。
●日本とアメリカのInstantVideoは全然違うものである
まず前提として、日本と北米で展開するInstantVideoは、名前こそ同じですが、少なくとも現時点ではサービスは別モノです。え?と思うでしょ。実はこういう違いがあります。
日本 | 視聴期限24〜48時間のレンタル・単体のセル販売のみ。Prime会員向けサービスはなし。 |
北米 | Amazon Prime会員向けの付帯サービス(単体加入も可能)。大量のVODコンテンツを無料視聴可能。一部有料コンテンツもアリ。 |
北米ではPrime会員になると自動的にVODも見られるという、顧客満足度アップ系サービス。日本では、GoogleVideoなどと同様の、レンタルを中心とした普通のVODサービスです。名前は同じでも全然違うもの、というのはこういうことだからです。
●日米のサービス形態の違いが、日本のサービスイン時のハードルになってない?
まずは触ってみなけりゃね、ということで速攻使い始めたわけですが、先行するサービスと比較すると、色々と気になる部分がありました。
1)HDビデオはPCでは再生可能、MacではSDになっちゃう?
まずコンテンツをレンタルしてみて最初に気づいたこと。
“HD対応機器で再生できます”というような注意書きがありますが、最初は「アプリはまだ未対応なのかな」程度に考えてました。僕の原稿書きマシンはMacなので、そのまま再生に行くと……あれ?映画のHDコンテンツを買ってもSDで再生されます。そういうもの??
対応機器を改めて見ると、国内ページには対応端末=Kindle系のみで、PC/Macについては詳細が書かれてません(ちなみに現時点の日本国内向けHD対応端末はKindle Fire/HD/HDXのみ)。
そんな馬鹿な、と北米版のInstantVideoサイトのヘルプを見に行くと、HDで見られない理由らしきものが判明。ココです(関連サイト)。
PCもMacも同じブラウザーだし同じ機能でしょ、と侮ってましたが、PCとMacとでブラウザー版プレイヤーの機能が違いました。PCはHDCP対応モニターであればHD再生が可能。一方Macはテレビ番組のみのHD対応となってます。おそらくこの仕様を引きずっているのでしょう。ということは、テレビ番組ならHD再生されるのかもしれません。
ちなみに、さっきのMacで買ったHD映画を別のWindowsマシンで再生してみると、同じ動画がすんなりHD再生できるのを確認しました。
2)Kindle以外のデバイスはアプリ対応待ち(ただしAndroidは期待薄)
これは近々改善される可能性がありますが、現時点ではiOSデバイスやAndroid向けのアプリが配信されていません。北米の本家の対応を見ると、iPad/iPhone向けのほか、Xbox360、PS3、WiiUから各種テレビでも再生をサポートしてます。北米に限って言えば、対応デバイスの観点では相当に豊富ですね(関連サイト)。
国内ではテレビは別として、iOS用アプリは近々、登場する可能性はあるでしょう。ただし、現時点ではKindle HD系ユーザー以外は、手持ち端末での視聴はできません。
またAndroidユーザーには哀しいお知らせですが、本家でも対応アプリが配布されていないようなので、日本向け対応は厳しいと思われます。HuluやGoogleVideo、U-NEXTでガマンということでしょうか。
3)むむ、18禁コンテンツがあるぞ?
海外ドラマ・映画を中心にHulu・U-NEXT・dビデオあたりの配信作品はおおまかに頭に入っているので、ざっと眺めていて……全然無関係なあることに気づきました。Amazonのストアサイトと同様に、InstantVideoでも18禁コンテンツのカテゴリーがあります。クリックしてみると……ちゃんとありますね。レンタルからセルまで。
大手VOD系サービスで18禁コンテンツのカテゴリーを用意しているのは結構珍しく、GoogleVideoやHulu、dビデオには当該カテゴリーがありません。TSUTAYA TVは(レンタル店舗の流れから当然でしょうが)18禁カテゴリーがあり、U-NEXTにも実は当該カテゴリーがあります。
後述しますがコンテンツ数は取り立てて充実しているわけじゃないのに、なんでアダルト系だけ攻めて来てるんだよ!というのが僕の率直な感想というかツッコミです。
“普及”の後押しにはやっぱり大事なんでしょうかね?
●いまのところの、おトクな使い方
先に書いた3つのポイントで触れませんでしたが、コンテンツ数はまだまだ少ないというのが正直なところ。ざっと見たところ、コンテンツ面で競合サービスにない何か新しいもの、強みの部分というのはまだ見えて来ません。
強み・弱みを競合サービスのGoogleVideo、U-NEXT(PPVがある)と並列して比べてみましょう。海外ドラマ/映画目線で見て行くと、
対競合で見るAmazon Instant Videoの○ | ・PPVオンリーだがらこそできる、競合にないコンテンツはいくつかはある ・SD100円/HD200円作品は確かにやすい(ただし数が限られる) |
対競合で見るAmazon Instant Videoの× | ・旧作のレンタル単価がやや高い(比較対象が200円前後/Amazonは315円) ・他社サービスにもいえるが、作品の被りは結構多い |
というところ。
特にわかりやすいAmazon Instant Videoの強みは、当面はSD100円レンタルでしょうね。ただし、100円レンタルには現状映画しかないので、ドラマが見たいという人は、トータルコストをよく考えたほうが良い部分です。
例えば315円でドラマ作品をレンタルしたとして、同じコンテンツがHuluやU-NEXTにあるとすると、3本〜5本以上視聴すると見放題系で見たほうが安く済む、ということになります。
一方で、100円レンタルで見たい映画がある場合は、かなりおトクな価格設定です。
●ローンチ時に気になること、コンテンツの偏りをどうするか?
最後に、疑問を感じた部分について。
リリース文には“26,000本を超える国内外の映画、TVドラマ、アニメ作品”とありますが、11月26日時点では、カテゴリー別合算で1万6000本弱。数が足りてない(ように見える)ことは別にいいのですよ、こういうウェブサービスだから段階的に素早く追いつけば良いんですから。
ただですね……アダルトカテゴリーの本数がその過半数の9800本弱を構成しているというのは、ちょっとAmazonさんソレでいいの?と言いたくはなってしまいますよ。
原稿執筆時点でいうと、カテゴリー別の実数合算で61%、Amazon公式リリース文の2万6000本(以上)という数字をとったとしても37.5%と、単一カテゴリーとしてはかなりの本数になります。
もちろん、これから一般カテゴリーの作品をたくさん集めて行くのでしょうが、万が一国内ローンチ時の本数を少しでも多く見せたかった……なんてことだったとしたら、ちょっと複雑な心境になりますね。
個人的には、見放題系VODサービスではラインナップされない映画や海外・国内ドラマのPPV作品の充実を願いつつ、日本でもプライム会員向けの無料配信コンテンツが始まることに期待しています。
ああ、でも、もしプライム会員向けサービスがはじまると、北米のようにプライム会員料金が年額$79に“価格アップ”してしまうかもしれないなぁ。とすると、現状の標準プライム会員3900円と、プレミアム会員7900円(仮)の2段階料金を希望ということで。
●関連サイト
Amazon InstantVideo
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24,800円
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51,800円
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15,800円
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