株式会社ユビキタスエンターテインメント代表取締役兼CEOの清水亮さんに、「大切にしている自分ルール」や「ルールについての考え方」をお聞きしました。
先週、社内に海賊旗を掲げ、我が部署は幽霊船フライングダッチマン号となった。
その船長として航海に乗り出した俺のもとに、週アス編集部のイトー君から親書が届いた。
「船長、なんか川上の親分がルールを変えるっつう本を書いたもんで、なにか船長からも一言いってやってくれねぇでゲスか?enchant.jsとかenchantMOONとかに絡んだ話でおねげえしやす」
川上の親分とゲーム用フレームワークとコンピュータを一緒くたにしてコラムを書けとは全く面倒なことを言って来る。
だが旧知の盟友であるイトー君の頼みを断ったら、海賊の名がすたる。
なんとかやってみよう、と筆をとった。
ルールを変えると川上の親分は言うが、俺に言わせれば、「変える」というのはいかにもゲームを遊ぶ側、つまりゲーマーの川上の親分らしい発想だなと思う。
俺なら、ルールは自分で作るものだと答えるだろう。俺は川上の親分とは違う。俺はゲームを作る存在、ゲームプログラマーなのだ。
ゲーム開発とは、すなわちルールを創りだすということに他ならない。
ゲームの世界は一つの完全で美しく、そして楽しいルールによって構築されている。
この「ルールを作る」体験を手軽にできるのがゲームプログラミングで、ゲームプログラミングを手軽に行えるのが、enchant.jsだ。よし、ひとつ繋がった。
「ルール」という言葉で思い出すのが、俺がまだ川上の親分のもと、海賊船ドワンゴで砲兵長をしていた頃の話だ。
マイクロソフトに居た川上親分の盟友、ジェイムズの叔父貴が、Dreamcastのゲーム開発者に向けてこんな文字の入ったTシャツを配った
「Tools to rule」
支配のための道具、と訳す。
「ルール(rule)」には、「支配する」という意味があるのだそうだ。
ルールを変える、とは、すなわち支配から逃れる、という意味である。
ふつうの人たちは、様々なルールによって支配されている。
法律、税金、貨幣制度、色々な常識、非常識、そういったもの全てが、世界を構築するルールそのものだ。
だが俺たち海賊は違う。
ルールは自分たちで作る。
もちろんシャバとやりとりするときは社会のルールに一旦は従う。
しかし例えば昔、宅急便は法律的に認可されていなかった。そこでヤマト運輸の社長、小倉昌男氏は行政訴訟し、法律を変えさせた。これぞ俺たち海賊が見習うべき、真の革命者であると思う。
画期的な技術、新しい技術は、時に他のルールとぶつかる。
川上の親分のニコニコ動画だって、最初は法的にグレーな部分もなくはなかった。
それをひとつひとつ丁寧に権利者側と交渉を重ね、ルールを変えさせてしまった。今では大手をふって、権利者がコンテンツを配信するプラットフォームになったのだ。
俺に言わせれば、川上の親分も、立派な海賊なのだ。
俺たちはenchantMOONという全く新しい思想によって、世の中のルールを永久に変えるような、新しいルールを作ろうとしている。俺たちの航海はまだ始まったばかりだが、目的地はひとつ。迷いはない。
俺たちがどうルールを変えようとしているのかはまだ言わない。ルールを変えるには、手順というものが大事なのだ。ルールを変えるためのルールというのがあるわけだ。俺たちはルールを積極的に利用することによって、新しいルールを創りだし、財宝を手に入れるのだ。
しかし、海賊風に書いてみたけど、イマイチ海賊風にならなかったなあ。
文体(ルール)を急に変えるのは難しいです。
清水亮(しみずりょう)
1976年、新潟県生まれ。株式会社ユビキタスエンターテインメント代表取締役CEO、98年から米Microsoft Corp.にて家庭用ゲーム機向けSDKの開発に関わった後、ドワンゴ入社。エグゼクティブ・ゲーム・ディレクターとして同社の携帯電話事業を立ち上げ、02年、シアトルのDWANGO North America社コンテント開発担当副社長を経験した後、03年より現職。05年、経産省管轄独立行政法人情報処理推進機構より天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。08年九州大学大学院講師などを担当。11年より秋葉原リサーチセンター(ARC)を設立し、ゲーム開発フレームワークenchant.jsを開発。任天堂WiiUの開発プラットフォームとして採用される。13年、enchant.jsをベースとして独自の思想で開発した手書きコンピュータenchantMOONをハード、OSのレベルから開発・発売し、10月1日より自らを海賊と名乗り、社長室をフライング・ダッチマン号と改名。
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株式会社ユビキタスエンターテインメント
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