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スマホ主導権争いへ 新機軸で戦うサムスン 機動力で戦うソニー(西田宗千佳氏寄稿):IFA2013

2013年09月09日 13時30分更新

 ドイツベルリンで家電展示会“IFA 2013”が開催された。主役はサムスン電子とソニー。スマートフォンを軸にした、激しいヨーロッパ市場争奪戦が起きている。

■“Note”+“Gear”で連携の強みをアピール
 ソニーとサムスン、両社に共通しているのは“スマホを軸”とすることだ。ただし、その発想は大きく異なる。

サムスンとソニー:IFA2013

 サムスンは、現在の“Galaxy”シリーズの人気を背景にそのバリエーションと領域を拡大する戦略を採っている。『Galaxy Note3』は、人気製品の正当進化版。大柄なファブレットタイプのボディにペン入力という、サムスンがつくり出したパターンを、さらに正常進化で押し上げた。同社は「ペン入力というトレンドはサムスンがつくった」という強い自負がある。UIもペンにさらに最適化し、好調な売り上げを背景に、独自の世界観を打ち出している。

サムスンとソニー:IFA2013

 他方で、新しい提案として打ち出したのが、いわゆるスマートウォッチである『Galaxy Gear』だ。Bluetoothでスマートフォンと連携、電話の着発信やSMSやカレンダーなどのチェックも可能。Gear内でもアプリが動き、そこに『LINE』の姿も見えたりはするのだが、そうした機能だけを見る限り、そこに新しさはない。

 だが、彼らが打ち出しているのは連携の強みと操作性だ。Gearで電話に出る時は腕を上げて“電話で話す姿勢”をとれば、それで通話ができるし、写真を撮る時も、バンド内に自然に組み込まれたカメラから撮影できる。タッチやモーション、音声認識を可能な限り利用する。Gearでメールをチェックした時も、Note3と連携させれば、そのまま“メールの続き”から読める。Gearを単なる“受信機”として使うでなく、Note3(後日のアップデートでS3、S4にも対応する)と相互連携、お互いで情報が行き来して、違和感なく使えることを狙う。これを同社は“スマートリレー”と呼んでいる。

サムスンとソニー:IFA2013

 GearはGalaxy専用ではないが、Galaxyの人気と普及度を最大限に利用し、“新しい世界へスムーズな入口をつくろうとする”のがサムスンの作戦だ。

■“One Sony”で対抗し、巨人にはワンツーパンチ作戦
 ソニーが採ったのは“One Sony”作戦だ。

サムスンとソニー:IFA2013

 サムスンが“Galaxyの世界観を広げる”方向性であるのに対し、ソニーが採ったのは「スマホに最高のソニーをスパイスとして振りかける」(ソニーモバイル 田嶋知一 UX デザイン・商品企画部門 部門長)ことだった。ソニーモバイルのスマホ技術を背景に、カメラからオーディオ、ディスプレーへとソニー本体のノウハウを全力で注入したスマートフォン『Xperia Z1』を投入、同時に、カメラレンズ型デジカメ『DSC-QX10/100』などのユニークな周辺機器を訴求することで、「五感に訴える」(ソニー 平井一夫社長)戦略を採る。Xperia Z1でスマホユーザーに“ハイクオリティーな映像の価値”を知ってもらった上で、そこからハイエンドカメラや4Kに広げ、ソニー全体の価値とする……というアプローチだ。

サムスンとソニー:IFA2013

 ただし、スマホの世界シェアでみれば、GalaxyはトップブランドだがXperiaはまだそのずっと下。自らが挑戦者であることを、ソニーは理解している。今年1月発表の『Xpreia Z』から、さほど間を置かずに『Z1』を出したのも「今できることを出し惜しみせず、全部出す。機動力高くワンツーパンチで攻める」(ソニーモバイル 田嶋氏)ため。そうして、まずは日本国内とヨーロッパでの地盤を固めていく模様だ。

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