2013年09月03日22時30分

MSのノキア携帯部門買収でWindows Phoneはどうなるのか?

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 9月3日、マイクロソフトはノキアのデバイス&サービス部門を買収することを発表しました。

 買収金額は54.4億ユーロ(約7100億円、約71.8億ドル)で、最近ではスカイプの買収(約85億ドル)に匹敵する大規模なものとなります。今後はノキアの株主や規制当局からの承認を得て、2014年第1四半期の買収完了を予定しているとのことです。

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↑記者会見を行うマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏(左)と、ノキア会長のリスト・シラスマ氏(右)。

●今後はマイクロソフトがノキアブランドで携帯電話を販売

 9月3日の午前10時(ヨーロッパ時間)から行われたノキアによるプレスカンファレンスには、ノキア会長のリスト・シラスマ氏、現CEOのステファン・エロップ氏、そしてマイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が登壇し、買収の詳細を発表しました。

 これによると、マイクロソフトが買収するのはノキアの『デバイス&サービス部門』。ここには“Asha”シリーズなどのフィーチャーフォンと、“Lumia”シリーズのスマートフォンの両方が含まれています。さらにノキアのデザインチーム、端末の生産施設なども含まれており、合計で3万2000人のノキア従業員がマイクロソフトに移籍することになります。

 一方でノキアという会社はそのまま存続し、ノキアブランドや特許を保持します。しかしノキアは今後10年間に渡り、マイクロソフトに対してノキアブランドや特許の使用権をライセンス供給するとのこと。これによりマイクロソフトは、今後もノキアブランドで携帯電話を製造、販売、さらには新規開発することができます。


●財務面での不安が解消、"プランB"も不必要に

 こうして買収の内容を見てみると、ノキアの携帯電話事業がそのままマイクロソフトに移行するだけで、具体的なビジネスの中身にそれほど大きな変化は起きないようにも感じられます。この点についてスティーブ・バルマー氏は「多くのプランを検討している」として、2014年第1四半期の買収成立後に向けた準備を進めていることを示唆しています。また、今後は両社の従業員レベルでのディスカッションが、世界中で行われることになるとのことです。

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↑買収の詳細を語るバルマー氏。ネクタイはいつもの攻撃的な赤色ではなく、冷静さを示す青色で、ノキアの企業カラーとも調和していた。

 マイクロソフトがノキアの携帯電話事業を買収したことで、Windows Phoneにとっての不安要素が確実に減ったと筆者は感じています。これまでノキアは財務面の弱さや時価総額の低さが指摘されており、競合他社に買収される恐れがありました。これはWindows Phoneの縮小または撤退の可能性にもつながるものでした。

 また、ノキア自身が“プランB”としてAndroidを準備しているといううわさも絶えませんでした。たとえばNokia 808 PureViewやLumia 1020で話題となったPureViewについて、「OSがAndroidなら、もっと売れていたのではないか?」との声があったことも事実です。このように、ノキア株主が経営陣に対し、Windows Phoneを中心とした戦略を見直すよう求める可能性もありました。

 しかし今回の買収が成立すれば、マイクロソフトの強力な財務基盤によるサポートが期待できます。他プラットフォームと連携していく可能性は十分にあるものの、Windows PhoneからAndroidへ方針転換するといった類の"プランB"の必要性は、なくなったといってよいでしょう。


●今後のノキアはどうなる?

 今後のノキアは、ネットワークインフラのNSN(Nokia Solutions and Networks)、ロケーションサービスの『HERE』、技術開発を行う『Advanced Technologies』の3つの事業を継続するとのこと。現CEOのステファン・エロップ氏はデバイス&サービス部門とともにマイクロソフトに移籍するため、ノキア会長のリスト・シラスマ氏が暫定CEOに就任するとのこと。

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↑現ノキアCEOのステファン・エロップ氏はマイクロソフトに移籍。フィンランドに向けたメッセージを強調。

 また、プレス発表でバルマー氏やエロップ氏が強調したのが、フィンランドの重要性です。フィンランドは欧州の中でも小規模な国であるため、ノキアはきわめて大きな影響力を持っています。実際にフィンランドでは4700人のノキア従業員がマイクロソフトに移籍することになります。バルマー氏はデバイス&サービス部門買収後の戦略において、フィンランドの重要性を強調。新たにフィンランド国内にデータセンターを設置することも発表しました。

 エロップ氏は「すべてのフィンランドの人々に、今回の買収を誇りに思ってほしい」と何度も呼びかけ、ノキアという企業がフィンランドからなくなるのではなく、しっかりと残り続けることを印象付けました。


●マイクロソフトが世界最大級の携帯電話メーカーに

 ノキアは2012年まで、フィーチャーフォンとスマートフォンを合わせた携帯電話出荷台数が世界第1位を誇っていました。現在ではサムスンに抜かれたものの、現在でもアップルを押さえ、世界第2位にランクインしています。

 そのため今回の買収が成立することで、マイクロソフトは一夜にして世界最大級の携帯電話メーカーとなります。これまでノキアが世界各地で築き上げたブランドイメージや、世界各国のキャリアとのコネクションも丸ごと手に入れることになります。さらに、フィーチャーフォンからスマートフォンまで、あらゆる価格帯の端末において、様々なマイクロソフト製品との相乗効果を期待できるようになるでしょう。

 買収成立に向けて懸念されるのは、司法省など規制当局の動きです。かつてマイクロソフトは司法省から独占禁止法違反で追及を受けていたことも相まって、買収にあたっては大きなリスクのひとつといえます。

 しかし最近では、司法省の関心はアップルやグーグルに向いています。モバイル分野において相対的に"弱体化"しているマイクロソフトは、むしろアップルやグーグルに対抗する存在になり得るとして、規制当局から歓迎される可能性もあります。そのため、買収に横やりが入る可能性はそれほどないと筆者は考えています。

 さらにマイクロソフトの人事にも注目したいところです。スティーブ・バルマー氏は12ヶ月以内の引退を表明していますが、これは今回の買収が完了する2014年第1四半期を見越したスケジュールだった可能性があります。元マイクロソフト幹部かつグローバル企業のCEO経験者であるステファン・エロップ氏が古巣に戻ることで、次期CEOの有力な候補として名乗りを上げる可能性があります。


●ノキア以外の端末パートナーとの関係も維持

 今回の買収によりマイクロソフトは、様々なカードを得たことになります。Lumiaシリーズの今後の端末展開やタブレットとの連携、あるいは以前からうわさのあった“Surface Phone”など、多種多様なアプローチが可能になったといえます。

 一方で、ノキア以外のOEMメーカーとの連携もまだまだ必要です。7月の組織改編で新たにマイクロソフトのオペレーティングシステム部門を率いることになったテリー・マイヤソン氏は、今回の買収があらゆるWindows Phoneのマーケットを拡大することで、マイクロソフトだけでなく、OEMパートナーにもメリットをもたらすと言及(関連サイト)しています。

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↑2011年2月の提携以来、ノキアは最重要パートナーだったが、今後は他のOEMメーカーとの関係がより重要に。

 これまで、Windows Phoneを盛り上げていくためにはノキアだけでなく、他のメーカーの協力も必要不可欠といわれてきました。今回の買収が成立し、ノキアの携帯電話事業がマイクロソフトに移ったとしても、他メーカーの協力が重要であることに変わりはないといえます。

 これまで端末メーカーに対してOSを供給する立場だったマイクロソフトは、自らも端末を供給することになります。今後は端末メーカーの新規参入を促しつつ、既存の端末メーカーといかにして協力関係を築いていくか、これまで以上に重要になるといってよいでしょう。

●関連サイト
NOKIA(グローバル)
マイクロソフト(グローバル)

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