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全部知ってたら偉い! 持ってたら神!! SレアMSXが3機種登場:MSX30周年

2013年07月09日 10時30分更新

MSX30周年スロット&スプライトロゴ

 

 おやじホイホイって言うなーっ!

 MSXが誕生した1983年前後というと、各社から個性的な魅力あふれるパソコンが出ていて、当時の少年(少女?)たちは皆ワクワクと憧れたものです。
 色数と6重和音のパソピア7(東芝)、スーパーインポーズのX1(シャープ)、歴史あるクリーンコンピュータのMZ(シャープ)、ライバルより安いのに高性能なFM-7(富士通)、ゲームがたくさんPC-8801(NEC)、歌うパソコンPC-6601(NEC)、Z80最速クラスのインタープリタM5(ソード)、微妙に16ビットで日本語BASICのぴゅう太(トミー)、シャープ製高速互換Z80採用のRX-78ガンダム(バンダイ)…えーと、これで名前出しておかないと怒られそうなのは全部出したかな?(義務終了)
(2013/7/16 10:00修正:読者の方から「六本木パソコンはPC-6601SRだ」とのツッコミがあり、「六本木」を削除しました。ご指摘ありがとうございました。)

 そんな中、最大公約数的に凡庸な仕様にまとめたのが我らがMSXであるとか言われたものです。しかし、凡庸だからこそ各メーカーの創意工夫によってさまざまなオプションやプラスαの機能を持ったMSXも多数生まれたのです。今回はそんな個性的なMSX本体を紹介していきますよ! でも、さすがに「お! この機種持ってた!!」って人は少ないかも。

■ゼネラル『PAXON(パクソン) PCT-50』(1983年、MSX1、12万8000円)

MSX30周年記念_第5回
(写真は、MSXマガジン'84年4月号より)

 あまり変わって見えないって? だがよく見てください。主に家庭用テレビに接続されることが多かったMSXですが、このPAXONはMSXのロゴがテレビの画面右上についています。さらにその下にはカートリッジスロットが存在しており、ジョイスティック端子も2つあります。すなわちコイツはテレビとMSX本体が一体化した機種であり、実際に“MSXテレビ”というキャッチコピーで販売されてました。そういやファミコンにも似たようなのがありましたっけ。

 で、写真に見えるキーボードは実は外付けのオプション(1万8500円)というわけ。ちなみにジョイスティックが3500円なので、2個買うと、本体、キーボードと合わせて合計15万3500円也。MSXとしてはちょっと高すぎない?と思うかもしれませんが、当時は専用モニターが高かったので、そこにMSXがついてくる、ついでにテレビも見られると考えれば意外と安かったとも言えます。
※ちなみにゼネラルはその後富士通と資本提携を行ない、1985年には社名を「富士通ゼネラル」に変更しました。富士通ゼネラルの企業Webサイト(関連サイト)にもこの機種のことはちゃんと記されているのです。あと、富士通といえばやはり個性派MSXの『FM-X』ですな。

MSX30周年記念_第5回
↑『FM-X』は富士通の最初で最後のMSX。兄貴分のFM-7とつなげることで、双方から機能を拡張して使える。が、実際に使っていたという話をほとんど聞かない。詳しくはリクエストがあればそのうちやるかもしれないです。(写真は、MSXマガジン'84年2月号より)

 さて、このPAXON、実は当時のMSXマガジン編集部にとってなくてはならない機種でした。というのも、MSX本体がテレビに内蔵されているということは、MSXとモニターが最短距離で接続されているということ。もちろん出力はRGB。つまり、他のMSXと比較して画質が最高によかったのです。そこで、誌面に掲載するゲームなどの画面写真はこのPAXONに黒い大きな布切れをかぶせ、カメラ(もちろんフィルムのやつ)で撮影していたというわけ。

 いまならスクリーンキャプチャーなんて便利なものがあるけど、当時の苦労は想像に余るものがあります。リアルタイムでゲームをプレイしながらの撮影で、プレイヤーがミスってもカメラマンがミスってもやり直し!それに当時のゲームはクソゲーが多い…ゲフンゲフン、じゃなくてゲームバランスという概念が成熟していなかっただけに分かってくれますかこの苦労それを今時の若いモンはちょっとの困難ですぐ……すみません取り乱しました。


■三菱電機『テレコムステーション ML-TS2H』(1987年、MSX2、7万5000円)

MSX30周年記念_第5回
(写真は、MSXマガジン'88年11月号より)

 見よ! この本体の上にどーんと存在する“受話器”を!

 ML-TS2Hが発売されたのは1987年11月。この頃はパナソニックからA1mkII、三洋電機からWAVY23Jといった3万円前後の低価格MSX2が発売されており、FDD内蔵の機種ではソニーのF1XDが5万4800円、しかも「イース」がついてきました(抽選で4000人)。ゲームは「メタルギア」や「激ペナ」といったMSX2作品が続々と登場し、「ハイドライド3」、「ジーザス(JESUS)」など他機種の人気タイトルもどんどん移植されMSXにとってはまさに黄金時代に突入といった時期にあたります。

 と同時に、この時期はパソコン通信(まだインターネットじゃないぞ)が本格的に普及しつつあり、その波はMSXにも少しずつ押し寄せていました。それを見通した三菱電機は、低価格路線には参加せずに通信モデム内蔵のMSXをリリースしたのです。

 当時、世のお父さんたちの多くはまだパソコン通信の仕組みが理解できておらず、何をどう買い揃えればよいのか分かりませんでした。「音声カプラって何?」って状態。でも、受話器がついたMSXならきっと簡単にパソコン通信ができるに違いない、と思ったとか思わなかったとか。三菱も宣伝で「パソコンに不慣れなお父さんでも気軽に本格的なホームトレード(※)ができる」とか言っていました。子どもはそこにつけ込み、買ってもらって結局ゲーム三昧。黄金期の名作ゲームを鷲づかみ!というもくろみだったわけです。
※いまで言うところのインターネット上での株取引。機能はかなり限定されており、手数料もまだまだ高かったのですが、証券会社の営業マンと電話でやりとりするのに比べたらはるかに手軽で画期的だったのです。

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↑普通のプッシュホン(これも死語か!)の受話器として使えるぞ。この頃はまだ黒電話が残っている家もたくさんあったなぁ。(写真は、MSXマガジン'88年11月号より)

 改めてスペックをみると、漢字ROMがJIS第二水準まで内蔵されており、各社から出ていたワープロソフトを使えばワープロにもなります。アスキーも出していましたよ~、本格ワープロソフト『MSX-Write』。また、電話帳の整理が楽にできるなど家庭用の多機能電話としての機能も備えており、同等の機能を他のパソコンよりもかなりリーズナブルなお値段で手に入れることができました(もちろんそれなりに限界もあったけど)。


■大山産業『MX-2021』(1988年、MSX2、8万9000円)

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(写真は、MSXマガジン'88年11月号より)

 大山産業という耳慣れない会社から出されたMSX。これを個人で持っている人は神!一見するとタダの白い箱みたいに見えますが、よく見ると3スロットに拡張されており、その他にもFDDやキーボード、マウスといったオプションがついています。これらを含めるとざっと15万円程度といったところでしょうか。

 高い?いえいえ。FA(Factory Automation)という世界をご存知でしょうか。FAを制御するコンピューターは一品もので専用設計されることも多いのですが、それを汎用的なMSXでやってみたらどうか、と考えて製造されたがこのMX-2021です。同様のものは当時PC-98シリーズでも発展しており、そこではOSとしてMS-DOSが使われていたのですが、MSX専用のOSであるMSX-DOS2にもMS-DOSとの互換性があることから、MSXがFA方面においても活躍することとなったのです。

 そしてMSX最大の武器といえば“スロット”。ここに各種制御用センサーをポンポンと追加していくことでさまざまな用途に使用可能となり、データの入出力が多くなるようであれば、拡張RAMを挿すこともできます。FDDが遅いというならRAMディスクもありました。そしていろいろ挿しすぎてスロットが足りなくなれば、拡張スロットも用意されているわけで、まさに万能の拡張性といえるでしょう。

 ちなみに“Mマガ”の取材時には、看板用フィルムを切るプロッタプリンターの制御用に開発されたものを見せて頂いたとのことですが、そこでわざわざゲーム(ジンギスカン/光栄)をプレイしてどん引きされていたようです。まあ、単にMSXゲームが普通に動くのを見てみたかったんでしょうけど。

 なんとなく今でも使っている小規模工場とかありそうな気がします。ご存知の方がいましたらぜひご一報くださいませ。

 さて、今回は一風変わったMSX本体をご紹介しました。なんだか当時はすごくワクワクしながら“Mマガ”や“Mファン”などのこうした記事を読んでいたような気がします。と、ちょっとおセンチになったところで今回はここまで。今後、変わり種周辺機器も特集しようかと思います。もちろんMSXバージョンアップアダプターなんかも取り上げますよ~。お楽しみに!

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おたよりコーナー

@ichiroukusakaさん
すいません、出遅れました! 週アスPLUS様にて「妹戦記デバイシス」ご紹介いただきました。ありがとうございます!

---おお! 日下一郎先生。お忙しいところ突然のインタビューにご対応頂きありがとうございました。今後MSX2+やMSXturboRの活躍する小説もぜひ読んでみたいです。遅くても40周年までにはよろしくお願いします。

@jyu_jinさん
ところで、家がナローバンドで読込遅くて気付いたけど、記事タイトルの「スロット&スプライト」のロゴ画像の題テキストが「スロット&ストライプ」になってる(汗)

---うわっ本当ですね。み、みんなが気づくか、た、試してみたのさ! うそです。修正しました。ご指摘ありがとうございました。

@shinzakiさん
何を言っているのかさっぱり分からないが、何を言いたいのかは大体わかった

---『妹戦記デバイシス』についてですね。こう言うと怒られるかもしれませんが、最近のラノベってだいたいそんな感じです。ぜひ一度読んでみてください。電子書籍版を買えば、何を読んでいるかはバレません!

@iwaihidetoさん
旧ソ連の宇宙ステーションが、宇宙線の影響を防ぐためにMSXを…やっぱりすげえや!MSX!!

---実は一般に知られていないところでもMSXは使われていました。今回の大山産業のもそうですし、一見別のものだけど中身は実はMSXってものも……。これもそのうちこの連載で書くかもしれません。

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