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アプリ開発者を悩ませるOSの断片化が行き着く末(石川温氏寄稿)

2013年07月08日 10時30分更新

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 6月10日に開催されたアップルの開発者向けイベント『WWDC』の基調講演において、ティム・クックCEOが2つの円グラフを前に開発者に対して、こう宣言した。

「世界で最もメジャーなモバイルOSはiOS6だ。2番目にメジャーなのは、2010年にリリースされたAndroidだ」

 実際のところ、iOSのユーザー動向を見るとiOSデバイスのうち93%は最新バージョンであるiOS6を使っている。1世代前となるiOS5はわずか6%に過ぎない。ほとんどのユーザーが、最新バージョンにアップデートしている傾向がうかがえる。

iOSとAndroid OSのインストール状況
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 Android OSの導入状況はカオスそのもの

 一方、Androidはどうだろう?

 Android OSのうち最もシェアの高いOSのバージョンは、2010年後半にリリースされた“Gingerbread”(Android OS2.3)で36.5%、続いて、最新の“Jelly Bean”(OS4.1、4.2)で33%、続いて25.6%の“Ice Cream Sandwich”(OS4.0)になる。“Eclair”(OS2.0、2.1)も1.5%、“Froyo”(OS2.2)も3.2%もいるとは驚きだ。

Android OSの利用状況(出展Android Developers)
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 ティム・クックCEOは「3世代のOSのバージョンが混在しているAndroidは開発者にとって迷惑でしかない。最新バージョンが9割を超えるiPhone向けのほうが、遙かにアプリをつくれる環境が整っている」と言いたかったわけだ。

 確かに開発者にとってみれば、ひとつのアプリをつくるにしても3つのバージョンに合わせたカスタマイズを行なわなくてはならない。アプリで儲けるのも大変だというのに、それだけ手間とコストがかかってしまっては儲けたくても儲からない状況に陥る。

 機器の画面サイズと密度の違いも開発者を悩ませる

 もうひとつ、開発者にとって頭を痛める問題が、画面サイズと解像度だ。

 Androidの開発者向けサイト(外部サイト)を見れば一目瞭然だが、世界のAndroid端末は本当にバラエティー豊かな画面サイズと解像度が存在する。OSのバージョンに加え、画面サイズと解像度を掛け合わせれば、膨大なフラグメンテーション(断片化)があるということになる。

Android機器の画面サイズと密度(出展Android Developers)
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 WWDCから約1カ月前に、同じサンフランシスコで開催されたグーグルの開発者向けイベント『Google I/O』で、グーグルは“Android Studio”という開発者向けツールを発表した。

 そこで開発者から歓声が沸き、最も盛り上がったのが、いちどに様々なスマホやタブレットの画面サイズでどのように表示されるのかを確認できる機能だった。

Android Studioの実行画面
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 まさか、ここでこんなに拍手が起こるとは。世界中のAndroidアプリの開発者は、よほどフラグメンテーションに悩まされているということなのだろう。

 その点、iOS機器の画面サイズは『iPhone4S』などの3.5インチ、『iPhone5』などの4インチ、『iPad mini』の7.9インチ、『iPad』の9.7インチしかない。しかも、OSバージョンはほとんど最新ということもあり、アプリ開発者は最新のAPIを使って開発に集中できるというわけだ。

 こうしてみると、確かにiOSは開発者に優しい環境と言えるのは間違いない。ただし、これは「いま現在」という注釈がつく。
 

 iOS7投入でフラグメンテーションが発生する可能性は

 iOSに待ち受けているのは、この秋に正式投入というiOS7(開発コード名Innsbruck)だ。フラットデザインを採用し、見た目もかなり変わってくる。特にアイコンのデザインは好みが分かれそうだ。基本的な操作体系は一緒だが、それでも多少の違いはあり、ユーザーに戸惑いが広がる可能性は高い。

 「デザイン的にいままでのほうがいい」として、iOS7へのアップデートを見送るユーザーがいてもおかしくないだろう。iOS6が93%ということは、それだけメジャーなバージョンだけに、アップルとしてはすんなりとiOS7に移行してもらえるように仕向けなければならない。

 また、ネットではアップルもiPhoneの画面サイズを大型化するのではないか、という噂もチラホラ聞こえてくる。どこまで真実に近いのかは判断できないが、もし大型化に踏み切ることになると、そこでもフラグメンテーションが発生してしまう。

 Android陣営も先日、ソニーが“Phablet”として6.4インチの『Xperia Z Ultra』を投入するなど、あらゆる画面サイズが市場を賑わすようになってしまった。サムスン電子も『GALAXY』シリーズを大小さまざまなサイズで出してくるなど、混乱の一途を極めている。

 スマホやタブレットのユーザー基盤を拡大しようと思えば、それだけ多種多様なユーザーがおり、彼らの物欲を刺激するのには様々な画面サイズが必要になってくる。

 すでにカオスのAndroidはさておき、これからアップルが ほとんどのユーザーをiOS7にうまいこと移行させ、どこまで画面サイズの種類を増やすことなく我慢できるかが注目と言えそうだ。

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