2013年05月23日13時01分

ウルトラブック対抗の大本命 AMDのKabini/Temashの実力 by 笠原一輝

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AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場

 AMDは開発コードネームKabini(カビーニ)およびTemash(タマシ)で開発してきた、Ultrabook対抗薄型ノートPCおよびタブレット向けのAPUを正式に発表した。現在AMDのローエンド向けのEシリーズAPU(開発コードネーム:Brazos 2.0)の後継として開発された製品だが、ソニーのゲームコンソール“PlayStation 4”(PS4)にも採用された“Jaguar”コアのCPUと、“Sea Islands”の開発コードネームで知られるAMDの2013年型GPUを合体させ、さらに従来は別チップだったチップセット(周辺部分を接続するためのチップ)もひとつにして、本格的なSoC(System On a Chip)になっているのだ。

 本記事ではそうしたKabini/Temashの長所、短所、そして搭載製品などの最新情報についてお伝えしていきたい。

●クアッドコアのx86プロセッサーとしては初めてのSoCとなるKabini/Temash

 今回AMDが発表したのは、AMDの2013年型モバイルプラットフォームで、Kabini、Temash、Richlandの開発コードネームで呼ばれている製品だ。

今回発表されたKabini、Temash、Richlandの各製品
AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場

 このうちRichlandに関してはすでに3月に発表された製品で、今回追加のモデルが発表された。特にTDPが25/19/17Wの製品は今回新たに追加されたモデルで、IntelのUltrabook対抗の薄型ノートPCにもRichlandを搭載することができるようになる。Richlandは、ダイそのものはTrinityと一緒で、GPUでよく見られる“リネーム”と呼ばれる手法の製品だが、Trinityよりも高い動作クロックの製品が追加されるなどしているほか、顔認証などの新しいソフトウェア群がバンドルされるなど、若干のリフレッシュが図られた製品となる。

 これに対して、今回のメインテーマであるKabini/Temashは、完全に新しい製品になる。なお、Kabini、Temashと別のコードネームがついているが、ダイとよばれる半導体そのものは一緒で、ターゲットとなる市場の違いで別の名前がついているだけだ。ざっくり言えば、KabiniはIntelのUltrabookに対抗できるような薄型ノートPC向けで、TemashはハイブリッドPCと呼ばれる脱着や液晶部分の回転などによりタブレットとしても使えるノートPCかスレート型のタブレットをターゲットにした製品となる。

 AMDは、GPUを統合したCPUのことを、APU(Accelerated Processing Unit)と呼んでおり、単なるGPUを統合したCPUとは違うのだということを盛んにアピールしているが、Kabini/Temashもその定義で言えばAPUとなる。しかし、実際にはKabini/Temashは、従来は別チップだったチップセット(USBやSerial ATAなどの周辺部分とCPUとを接続するためのコントローラーチップ)の機能もすべてAPUに統合されており、いわゆるSoC(System On a Chip)となっているのだ。Intelも間もなく発表する予定の第4世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Haswell)においてSoC版をリリースするが、実際にはCPUのパッケージにCPUとチップセットという2つのチップが統合されているという“なんちゃって”SoCであるのに対して、Kabini/TemashはホンモノのSoCとなる。

 SoCになるメリットは、基板に実装する際の実装面積を小さくすることができるため、PCメーカーが基板を小さく設計することが可能になる。基板を小さく作れば本体を小さくすることも可能になるので、例えばより薄いノートPCを設計したり、Windows8タブレットを設計することが可能になるのだ。なお、x86プロセッサーのSoCと言えば、Intelがスマートフォンやタブレット向けとして販売しているAtomプロセッサーがあるが、Atomプロセッサーがデュアルコア構成までとなっているのに対して、Kabini/Temashはクアッドコアになっており、AMDでは「初のクアッドコアのx86アーキテクチャーSoC」と呼んでいる。

AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場
↑AMDが公開したKabiniのブロック図。従来は別チップだったチップセットも含めて1チップになっている。

●最新型の高効率CPUと2013年型のGPUを搭載するという豪華スペック

 今回AMDが発表したKabini/Temashの最大のメリットは、低消費電力でありながら、高い処理能力を持っていることだ。どれくらい省電力かと言えば、Temashのデュアルコア版となるA4-1200は、TDP(熱設計消費電力)と呼ばれるPCメーカーのエンジニアが設計時に参照するピーク時の消費電力が3.9Wに抑えられている。一般的に、TDPが4Wを切ると、システムに強制的に冷却するためのファンを取り付ける必要が無くなるとされており、TemashのA4-1200を利用してタブレットを作れば、ファンレスで薄型のWindows8タブレットを製造することができるのだ。

 かつ、Kabini/Temashは、AMDのJaguarと呼ばれるCPUを内蔵しており、非常に低消費電力だが高性能に作られている。具体的には内部の演算器の構成を工夫することで、複雑な構成にしなくても性能が出るような設計が施されているのだ。そもそもCPUというのは複雑にすればするほど消費電力が上がってしまうもの。そこで、Jaguarコアではそうしたことを避ける意味で、シンプルな設計を採用して、かつ前の世代に比べて細かな改良を加えることで性能向上させることに成功しているのだ。

 そしてもうひとつ見逃せない点は、Kabini/Temashに内蔵されているGPUだ。Kabini/Temashに内蔵されているのは、AMDがSea Islandsと呼んでいる2013年型GPUコアで、昨年AMDが導入した最新のGPUデザインGCN(Graphics Core Next)に基づいたデザインになっている。ただし、Sea Islandsでは、GCNの最初の世代となる2012年型のSouthern Islandsからは若干改良されており、パフォーマンスアップが図られている。当初の計画では、AMDはSea Islandsを単体型GPUにも投入して、Radeon HD 8000シリーズとして発表される予定だったのだが、様々な事情で今年は昨年型のSouthern Islandsが継続販売されている。それなのに、Kabini/TemashにはSea Islandsが惜しみなく投入されるのだが、こうした流れからもAMDがどれくらい本気でAPUに取り組んでいるのかがわかるだろう。

 こうした改良によりKabini、Temashの性能はIntelの昨年や一昨年のメインストリーム向け製品(Ivy BridgeやSandy Bridge)に匹敵するとAMDでは主張している。

AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場
↑Temashの性能をIntelのAtom Z2760と比較しているスライド。TDPでわずか2W上がっただけのA4-1200で3D性能は5倍以上を実現している。
AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場
↑Kabiniの性能をIntelのPentiumやCore i3と比較しているスライド。いずれもKabiniが上回っている。

 このように消費電力も下がって、しかも性能が向上しているとくれば、ノートPCユーザーやWindows8タブレットを検討しているユーザーには要注目の製品であることは間違いないだろう。

●Windows 8 Connected Standbyには未対応だが、実装コストを考えるとなくて正解かも……

 ここまでいいところばかりを語ってきたが、弱点はないのかと言えば、実はある。具体的には、タブレット向けとしては必須機能と思われる“Windows 8のConnected Standby”には対応していないことだ。Windows 8 Connected Standbyは、OSが動いている状態のままPCをスタンバイ状態にできる機能のことで、電源ボタンを押すとディスプレーが切れてスタンバイ状態になり、電話やメールなどのなんらかの着信か、電源ボタンを押すと瞬時に復活する機能を実現するものだ。この使い勝手は、スマートフォンやタブレットでは当たり前の機能で、ぶっちゃけて言えばWindows 8 Connected Standbyというのはスマートフォンやタブレットの使用感をPCでも実現するためのモノだと言ってよい。IntelのAtom Z2760(Clover Trail)や今後登場する予定の第4世代CoreプロセッサーのSoC版はこのWindows 8 Connected Standby機能をサポートしているのだが、Kabini/Temashでは対応していないのだ。

 ただ、実際には大きな問題とはならない可能性が高い。ちょっと込み入った話なのだが、実はConnected Standbyをサポートするには、マザーボードの電源回路の設計をより複雑にする必要があり、そのぶんコストが上がってしまうという課題があるのだ。このため、Connected Standbyに対応するのは、第4世代CoreプロセッサーのSoC版を搭載した製品でもハイエンド向けの製品に留まる可能性が高い。だが、Kabini/Temashは価格的にCore i3やPentium、Celeronといった製品の対抗製品になる可能性が高く、PCメーカーもその価格帯の製品ではConnected Standbyを実装しない方向で考えているのだ。

●搭載製品はAcerから登場予定、タッチ対応11.6インチHD液晶で1.36キロと軽量なノートPC

 AMDによれば、Kabini/TemashのOEMメーカーへの出荷はすでに開始されており、AcerからAspire V5-122Pというクラムシェル型タッチ対応ノートPCが発売予定であることが発表されている。Aspire V5-122PはA6-1450(Temash/クアッドコア/8W)、10点マルチタッチ対応11.6インチHD液晶(1366×768ドット)、6GBのメモリー、500GB HDDで、重量は1.38キロというスペックになっており、米国での価格は499ドル(日本円で約5万円)になる見込みだ。

 このほかにも、COMPALやWistronといったODMメーカー(PCメーカーからPCの設計、開発、生産を委託される製造企業)がKabiniやTemashを搭載した製品を試作しており、現在PCメーカーへの売り込みを図っているという。それが成功すれば(あるいはもう成功しているかもしれないが……)、もう少しほかのPCメーカーからも搭載製品が登場することになるだろう。6月には、台湾においてComputex Taipeiが開催される予定なので、そこでなんらかの追加製品が登場する可能性もあるので期待したいところだ。

AMDのKabini/Temashの実力
AMDのKabini/Temashの実力
AMDのKabini/Temashの実力
↑Aspire V5-122PはA6-1450(Temash/クアッドコア/8W)、10点マルチタッチ対応11.6インチHD液晶(1366x768ドット)、6GBのメモリ、500GB HDDで、重量は1.38kg。米国での価格は499ドル。
AMDがKabini/Temashを発表 Acerから採用ノートPCが登場
↑Kabini搭載の脱着型ノートPC、ODMメーカーのCOMPALが試作した。
AMDのKabini/Temashの実力
↑A4-1200(Temash)を搭載したタブレットのリファレンスデザイン。こうしたスレート型タブレットでかつファンレスデザインにすることができる。

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