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6インチは日本でも? ファーウェイの2013年スマホ戦略

2013年04月25日 16時00分更新

 ファーウェイは4月24日に業界アナリスト及びメディア向けの2012年度決算報告会“2013 Global Analyst Summit”を中国・深センで開催しました。今年で10回目となる同イベントには世界20ヵ国から300名以上の業界関係者が参加したとのことです。

2004年から通算10回目となるファーウェイのGlobal Analyst Summit
ファーウェイの2013年スマホ戦略を聞く

 同社の2012年度監査後決算は、売り上げが前年度比8%アップの2202億元。また純利益は32%増の154億元を記録しました。売り上げの内訳を見ると、まず通信インフラなどのネットワーク事業が6.7%増の1601億元、スマートフォンなどの端末事業が8.4%増の484億元、そしてICTソリューション事業が25.8%増の115億元とのこと。

 ICTソリューション事業はまだ売り上げ額は低いものの、クラウド・コンピューティングや、ビッグ・データ、BYOD(Bring Your Own Device)など新しいビジネスが伸びることで今後大きな成長が見込めるとのことです。ちなみに各事業の売り上げ比率は2012年は73:22:5となっていますが、今後5年間に10%の年平均成長率を目指し、2017年には60:25:15とICTソリューション事業の比率を増やしていく意向とのこと。

ファーウェイの取締役副会長、エリック・シュー氏
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 地域別では中国が736億元、欧州、中東、アフリカ地域が774億元、アジア太平洋地域が374億元、南北アメリカが318億元の順。各地域とも前年より売り上げを伸ばしています。なお北米ではネットワークだけではなく端末の売り上げも好調だったとのことですが、今後は北米事業を見直す可能性もあるとのこと。その他、研究開発費は売り上げの13.7%となる301億元と前年から27%増加。同社の研究開発センターは世界16ヵ所に広がっています。

端末事業を説明するデバイス部門責任者のシャオ・ヤン氏
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 決算概要の報告のあとは、各事業別に担当責任者によるラウンドテーブルが行なわれました。3つ事業のなかでもやはり気になるのは端末事業。特にスマートフォンの動きでしょう。ファーウェイ・デバイスの最高マーケティング責任者、シャオ・ヤン氏に2012年の端末事業の動向や今後についてを伺いました。

ルーターやスマートフォンなど販売は好調
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 同社の端末事業はモバイルブロードバンド(MBB)製品、携帯電話、セットトップボックスなどの家庭用デバイスと、この3つのカテゴリーに分かれています。2012年のそれぞれの出荷台数は5000万台、5200万台、2500万台で、MBBと家庭用デバイスは出荷数で世界シェアトップとのこと。また携帯電話のうちスマートフォンは3200万台で、全体の60%を占めています。

スマートフォンはシェア3位、ラインナップも広がる
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 IDCやガートナーの調査によると、2012年のスマートフォン販売量でファーウェイは世界で3位になったとのことです。同社は2011年から世界最薄モデルや高速クアッドコアモデルなどハイエンド製品を市場に投入し、製品ラインナップの幅を広げています。

 また2011年にはフィーチャーフォンとスマートフォンの比率が6:4だったものを、昨年はスマートフォンシフトを進めて両者の比率は逆転。その結果、スマートフォンの販売量が急増しているのです。

ブランド力の向上がカギを握る
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 さて同社は今年の端末売り上げ額を昨年から20%増やす計画です。シャオ・ヤン氏はこの目標を達成するために3つのキーポイントがあると説明しました。まずひとつ目はブランド力の構築です。

 同社は昨年、キャリアブランド製品を大幅に減らし、販売数の90%を自社ブランド品に切り替えました。これは自社のブランドを消費者にアピールするための思い切った戦略だったと言います。しかしそれによりヨーロッパのキャリアの一部は同社製品の取り扱いをやめる動きも出てしまいました。ところが端末の販売量は影響を受けず、ブランド構築を図ったこの戦略は成功を収めたと言います。

端末開発の鍵を握る3つの柱
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 ファーウェイブランドの端末が売れたのは、消費者ニーズに見合った製品を開発し続けた結果とも言えます。売り上げ引き上げのための2つ目のポイントは、その端末そのものの開発です。

 ファーウェイの端末はハードウェア、ソフトウェアどちらも優れたパフォーマンスを追及するのはもちろんのこと、ネットワークとの接続性も重要視して開発されています。高速かつ効率よくネットワークを利用できる製品の開発は、ネットワークインフラを長年手がけている同社ならではのものでしょう。

Ascend Mateはスマホとして世界最大の画面サイズ
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 今年のファーウェイは1月のCES2013でフルスペックのAscend D2や6.1インチの大画面スマートフォンAscend Mateを、そして2月のMWC2013ではLTEカテゴリー4対応の150Mbps高速端末Ascend P2と、ハイスペック製品を立て続けに発表。コストパフォーマンスに優れた製品に加え、これらの上位モデルは消費者の目を十分惹きつけています。

 もちろんこれらの製品はキャリアにとっても魅力的なものでしょう。同社製品の取り扱いをやめたヨーロッパのキャリアも、今年に入ってからファーウェイブランドの製品販売を続々と再開しているとのことです。

 なお同氏によると、今年の中盤には「さらにすごい製品を出す予定」とのこと。より高速なCPUを搭載した製品なのか、あるいは画面サイズが大きくなるのか、具体的な情報はまだ公開できないとのことですが、発表されるのが楽しみです。

販売チャンネルの拡大が売り上げ増につながる
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 最後のポイントは販売チャンネルを広げることです。キャリアODMビジネスを長年続けていた同社は、これまで端末の販売はキャリア経由がほとんどを占めていました。しかし昨年からはオープンチャンネル、すなわち量販店などでの販売を開始。さらにはオンラインショップでの販売も始めています。

 前出のAscend Mateはオンライン販売を先行しているとのこと。特に中国国内では積極的に販売先を広げており、ファーウェイストアもオープンさせています。この結果、昨年は出荷台数のうち30%がキャリア以外のチャンネルから販売されました。今後はその比率をより増やしていく考えとのことです。

技術力で上位2社に挑む
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 順調に端末販売を伸ばしてきた同社ですが、サムスンとアップルという2つの大きなライバルにはどう対抗していくのでしょうか? シャオ・ヤン氏はファーウェイの最大の武器は技術力だと言います。そしていい製品を作るだけではなく、テレビCMなどでも技術のある会社という点をより大きくアピールしていくとのことです。

 技術で真っ向から勝負していくのは困難な道を選んだようにも思えますが、ファーウェイが今後も成長を続けていくためにはこれこそが正道と言えるかもしれません。

日本は最重要な市場のひとつ
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 世界各地域のうち、同社がもっとも重要視しているのは中国、ヨーロッパ、そして日本の3エリア。中国は世界最大のスマートフォン市場となっており、大きな販売ボリュームが見込める一大市場です。またヨーロッパは多民族の消費者に端末を販売することで様々な文化を吸収できる市場であるとのこと。そして日本は高品質な製品を求める消費者が多く、自社製品の品質の確認に最適な市場だと言います。日本向け製品から得られた知見はグローバルモデルにフィードバックされているとのことです。

 スマートフォン重視の端末戦略を採り、昨年以上に製品数を増やす予定のファーウェイ。グローバル市場だけではなく日本向けにも意欲的な製品が投入されることでしょう。高速LTE対応製品や大画面モデルなど、海外でも話題の製品の日本登場も期待したいものです。

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