2013年04月15日17時31分

第2回将棋電王戦の第4局は持将棋で引き分け!山崎バニラ観戦記

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 毎週熱い対局を繰り広げている第2回将棋電王戦だが、第4局の塚田泰明九段vs.Puella αも壮絶かつ意外な展開となった。序盤は午前中だけで50手も進むハイペースで進み、相矢倉の様相だったのだが、午後に入ってPuella αの攻めを、受けてもきりがないと判断した塚田九段は、入玉を目指す展開に。その後、駒の取り合いとなりPuella αが入玉対策が完全ではなかったこともあって持将棋となり、お互い持ち駒の点数が24点以上だったため引き分けとなった。これで、対戦成績はコンピューター側の2勝1敗1分となり、コンピューター側の負けがなくなった。
 今回も山崎バニラさんが現地で観戦。これまでの戦いを含め今回の観戦記を書いていただいた。

第2回電王戦・第4局

期待をはるかに上回るまことに痛快な結果・山崎バニラ

第2回電王戦・第4局
将棋道場には毎回12時間いた。PHS、スマホ、タブレットPC、ノートPC、そして正座椅子を持参。タブレット画面は日本将棋連盟モバイルアプリの対局中継。

 第2回将棋電王戦、第3局の船江恒平五段が負けてしまったことで、第4局の塚田泰明九段はますます厳しい戦いになるであろうというのが大方の予想だったようです。

 その根拠は、船江五段は先手だったのに対して、塚田九段は後手であること。通常は対局当日に振り駒が行なわれ先手か後手かが決まるのですが、電王戦は昨年末に行なわれた開催記者発表の際に振り駒が行なわれました。プロ棋士どうしの対局では先手の勝率が若干高いそうです。また船江五段は飛ぶ鳥を落とす勢いの若手有望棋士であるのに対し、塚田九段は年齢的に全盛期は過ぎていること。さらに船江五段は事前に当日の状態に近いコンピューター将棋・ツツカナを貸し出されていましたが、塚田九段のところにはPuella αの前身ボンクラーズが貸し出されていたこと。そのボンクラーズが昨年、米長永世棋聖に勝ち初代電王になっていること。こうして並べてみると、確かに勝ち目はないと思われても仕方ありません。

 ところが私は検討室で塚田九段とご一緒してきて、「これはいけるのではないか」という思いがつのっていきました。

 第2局、佐藤慎一四段 vs. ponanza の対局が中盤に差し掛かったころ、塚田九段はしみじみ
「人間の3戦全勝で自分の番に回ってきてほしい」とおっしゃっていました。
 私はつい
「それはある意味プレッシャーではありませんか?」と、「つい」にもほどがある質問をしてしまいました。塚田九段は気を悪くするどころか
「自分がプロ棋士初の敗者になってもかまわないから、皆に勝ってほしい」と穏やかに語ってくださいました。

 今回、スーツ姿の阿部光瑠四段が第1局を制し、和服の佐藤四段、船江五段は負けてしまいました。和服を着たら負けるというのはジンクスではなく若手棋士の先生に関しては一理あるような気がします。超有望のプロ棋士でもタイトル戦などの大舞台に和服着用で初めて挑戦する際にはいいところを見せることができずに終わってしまうことがあります。タイトル戦は番勝負なので徐々に感覚がつかめることもあるかと思いますが、電王戦は一回勝負。たくさんのマスコミがつめかける大舞台に和服まで着ては、気合が入る反面、肩の力も入り過ぎてしまうのではないかとちょっと心配になりました。ただ、お二人ともとてもよく似合っていましたね!

第2回電王戦・第4局
今回も控え室で中継が行なわれていた。このときは藤田綾女流初段と瀬川晶司五段。

 第3局の検討室で私は塚田九段に対局当日は和服なのかどうかもご確認しました。塚田九段は「いえ、私は普通にスーツで」とのことでした。塚田九段も来週登場する三浦弘行八段もタイトル獲得経験者です。コンピューターにはない、人生経験から得ることのできる平常心。第4局では何かが起こる! という私の予想は結局、期待をはるかに上回るまことに痛快な結果となりました。

 対するは、コンピューター将棋界きってのヒール役、puella α開発者の伊藤英紀さん。伊藤さんには第1回電王戦前にロングインタビューをしましたので、是非こちらもご覧ください。昨年時点での入玉対策についてもご説明いただいております。

 一流のエンターテイナーである(と私がふんでいる)伊藤さん。第2回電王戦開催記者発表の際「事前にプロ棋士にコンピュータを貸し出すか?」という私の質問に「できれば貸したくない」という趣旨のご回答でヒール役に徹しながらも、きちんとボンクラーズは貸し出していました。対局中にツイッターで
「電王戦対局してるけど質問ある?」とつぶやき大反響。たくさんの質問に答え始めたので
「終局後の記者会見質疑応答で私が聞くことなくなっちゃうな」と苦笑。

 ところが記者会見質疑応答が始まると、背後からそっと私を呼ぶ声がする。
「バニラさん、伊藤さんに“コンピュータ将棋は名人を超えた"と今でも思っていますか? と質問したらおもしろくないですか?」といたずらっぽく笑ったのは、なんと第2局に登場したponanza開発者の山本一成さんでした。

 第4局のプロモーション・ビデオ(関連サイト)での、伊藤さんの
「コンピュータは名人を超えた」発言は物議をかもし、伊藤さんはブログ『A級リーグ指し手1号』(関連サイト)で、伊藤さん節全開でその根拠をつづっていらっしゃいました。注目のお返事は
「最高のコンピュータを使えば名人は超えていると思うが、異論は認める」今度は伊藤さんが苦笑。いや、素のキュートな笑顔になってしました。

 私にナイス・アドバイスをしてくださった山本一成さんは事実上、初めて現役のプロ棋士に勝った歴史的プログラマーで、今回の開発者の中でもいちばんお若い秀才です。
「その後、秘密組織などからスカウトは来ていませんか?」とご質問したら、
「そんなことあるわけないじゃないですか」と大笑いされていましたが、秘密組織からのオファーだったら私に教えてくださるわけないですよね。“微笑みの将棋サイエンティスト"の今後にも大注目しております。

 第3局で、倒しても倒してもよみがえるターミネーターに例えられたのはコンピューターでした。しかし、今回絶対にあきらめなかったのは人間の方でした。夕方頃は検討室も敗戦ムードが漂っていました。でも塚田九段ご本人だけはあきらめていませんでした。引き分けとなる持将棋の展開が濃厚となり、玉を詰ますゲームから駒を多くとるゲームへと切り替わりました。この切り替えがコンピューターには難しいようで、徐々にpuella αの謎の手が増えていきます。コンピュータ将棋協会・瀧澤武信会長は不安そうに
「これはこれで、いい対局ですよね」とつぶやいたので、私は力強く
「はい、最高におもしろいです」とお返事しました。私の声に驚いて、コンピュータ将棋界の重鎮、柿木将棋開発者・柿木義一さんも微笑んでいました。通常の将棋と違って終盤の難解な寄せの検討ではないため、検討室で「おおおおおおおお」と声が上がると同時にニコニコ動画のコメント欄も「おおおおおおおお」という文字でいっぱいになるなど、プロ棋士もプログラマーもニコニコ動画視聴者も記者も同じ目線で一体となり対局を見届ける貴重なシーンに立ち会うことができました。

第2回将棋電王戦・第4局
終盤の控え室では、どうなるのかみんなドキドキ(?)しながら、ニコ生画面と検討用の将棋盤を見ながらごった返していた。

 終局後の対局場でのインタビュー。
「途中で投了することは考えませんでしたか?」との問いかけに思わず声を詰まらせ
「自分から投了することは考えなかった」と答えた塚田九段。私は将棋の魅力を聞かれると、負けた側が潔く負けを認めて勝負が終わるゲームなので、情操教育にもとても役立つということも理由の一つとしてきました。ところが塚田九段はプロ棋士でありながら真逆をいき、そしてその姿は観戦者全員に勇気と感動を与えました。人間ってすごい。すばらしい。

 さて、私の観戦記も今週まで。来週は出張先から応援します。電王戦を立ち上げ、第1回将棋電王戦で自ら人類代表となった米長邦雄永世棋聖。月刊『将棋世界』3月号の米長永世棋聖追悼号には「電王戦を楽しみたい」と題して私も寄稿し、本当に楽しませていただいております。週アスPLUSの観戦記者として(?)検討室にも入ることができ、プロ棋士や開発者の皆さまのお話を実際にうかがい、とても贅沢な時を過ごしました。第5局も、そして、第3回電王戦も楽しみにしております。

終局後の記者会見のおもな質疑応答

第2回電王戦・第4局

塚田泰明九段
 途中は非常に形勢が苦しくて、入玉できても点数勝負でダメだろうと思っていました。しかし点数勝負しかないと思っていたので幸いでした。

伊藤英紀氏
 正直言って途中げんなりしましたが、負けなくてよかったです。

小谷善行コンピュータ将棋協会副会長・立会人
 立会人としてですが、特殊な状況になったときどうすればよいのかいろいろ考えていて、持将棋についてもよく考えました。それが役立ってよかったと思います。今回のような状況の場合、提案して受諾するという取り決めがありまして、変なことが起こらずきっちりと終わったことはうれしいことでした。また、終盤のコンピューター将棋の持将棋についてですが、あのような状況はとても不得意で、よくするために点数をカウントするようにつくればよいのですが、いつから点数を数えるように判断すればいいのかすごく難しい問題なんです。ですので、持将棋については非常に大きな課題があると思いました。

神谷広志七段
 塚田九段とは35年以上のつきあいなのですが、泣いたところを初めて見たので、今日はいいモノを見たと思いました。将棋に関しましては、コンピューターは人間より強い部分もありますが、赤ちゃんのように無邪気なところもあるなと思ってほっとしました。

三浦弘行八段
 今回の結果、人間が負け越さない状況で最終局を指せるので、残念ながら人間の勝ち越しはなくなりましたが、来週人間側が負けなかったという責任がありますので、がんばりたいと思います。

川上量生・ドワンゴ会長
 ここまでの第2回電王戦を振り返りまして、ある程度予想してましたが、予想以上に反響があり、また将棋の内容についても大変おもしろく、いろいろなユーザーからも反応がいいです。まだ将棋連盟の方からはご回答いただけてませんが、ぜひ第3回電王戦も開催させていただきたいと思っています。そして第3回電王戦につきましては、今回現役プロ棋士とコンピューターの最初の戦いでしたので、どういう形で、どういう条件で、どういうルールで戦えばいいのかと言うことは、今回の結果を踏まえて、人間側、コンピューター側のそれぞれの方といろいろと話し合いの上で、ルールを決めていきたいなと思ってます。もう一つ、コンピューター将棋の開発者の方々に提案させていただきたいのですが、今回、歴史的な名局をつくったコンピューターソフトを、費用などはこちらで負担しますので、なんとかこのバージョンを永久保存させていただけないかと思ってます。そして、このときの将棋ソフトと対局するという、電王戦以外のところで試合ができればと思います。

田中寅彦・専務理事
 まず最初に、塚田九段よくやりました。ご苦労様でした。人間の強さを見せていただきました。伊藤さんのソフトのすばらしさとともに弱点も見させていただきました。これはほんとにいろんな意味でおもしろいことができるのかなと思いました。第3回電王戦につきましては、谷川会長と前向きに進められたらと思います。401年の将棋の歴史の中で、また新たな歴史が築かれていく可と思います。三浦九段、次回よろしくお願いします。

――終局直後にこみ上げたものがあったと思いますが、その理由をお聞かせください。
塚田九段 チーム戦ですから自分が負けたら、チームの負けが決まってしまいますから、最低でも引き分けというのが目標だったですし。点数がまったく足りず一時期は10点ぐらい足りなかたった状況で、大駒とっても足りなかったのですが、しだいに一枚ずつ取っていって24点になったので。十中八九こちらが点数勝負で負けると思っていたので、ちょっと泣いてしまいました。

――入玉を目指したのはどの局面だったのか
塚田九段 まず、▲6三馬と指されたときに受けてもいいのですが、切りがなかったので、△2六香と指した局面ですね。入玉してがんばってみようと思ったのですが、事前の研究では、先手の玉は8八王のままのはずなんですよ。いじらなければその場にじっといてくれるので、ですから入玉して詰ますことができると思っていたのですが、入られてしまったので大誤算でした。

――最後は自陣の駒を逃がさなかったので引き分けに持ち込まれましたが、その辺りは今後の課題ですか?
伊藤氏 そうですね、そのせいで今回勝ちを逃した訳ですし、課題としてはあると思います。

――対人間だったら入玉はしないのか?
塚田九段 そうですね、対コンピューターなので入玉を狙いました。対人間相手ではあの指し方では絶対勝てないので。

――入玉以外の部分で対策はあったのか?
塚田九段 序盤相矢倉にしてまったりしようとしてました。事前の研究ではまったりすると暴発しがちだったので、そういう手を指して序盤を進めていこうと思ったのですが、コンピューターはふつうにやってこられて、こっちが暴発してしまいまして、序盤は非常に不満でした。

――いまでもコンピューター将棋は名人を超えたという考えは変わらないですか?
伊藤氏 コンピューター将棋は、マシンの性能に寄るのですが、現在入手可能で最強なものを使えば、名人を超えていると個人的には予想しています。いろいろ、異論は認めますが(笑)。

――1分将棋が意外と多かったと思うが何か設定をしていたのか?
伊藤氏 まずは切り捨てに対応していないので、途中から1分将棋になっているのがひとつと、万が一トラブルがあったとき、秒読みのときだとそこで負けてしまう。なので、多少時間の余裕を持たせていた。正確な時間は覚えていませんが、40分なら40分とっといて、回復する時間に充てていた。ですので、『ツツカナ』のときよりもさらに早い段階から1分将棋でした。

――塚田九段は軽快な攻めの将棋が多いと思いますが、今回はまったりとした将棋を指す作戦ということで、これは事前の研究からですか?
塚田九段
 そうですね、後手番だとよく横歩取りをやるのですが、横歩取りをやるとコンピューターがすごく強いんですよ。互角で戦いになってはダメということで、まったりと指していると、変わったことをしてくる。それを待っていたのですが、何も起こらず、コンピューター用の対策でした。

――どのくらいの時間研究されていたのか?
塚田九段 内定したのが6月ぐらいだったのですが、何もやっていなくて、前回米長永世棋聖が練習で使っていた『ボンクラーズ』を借りたのが2月の頭ぐらいからなので、そこからです。あとは『ツツカナ』を年末に提供していただいたので、それはやってました。30秒どうしとか1分とかでやっていたのですが、全然勝てなくて、持ち時間1時間とかでやってました。ほかに設定できなくて(伊藤氏・いや、設定できます)。そうなんですか? でも1時間設定でやれば、少しは勝てるようにはなって、長い方が人間は有利だなと実感しました。ただ、やはり準備する期間としては短すぎたという気がしました。対コンピューターだけに集中できれば2ヵ月程度いいのですが、ほかの対局もありますし、生活もかかっているので、もう少し早めに始められれば、もうちょっと何とかなったのではないかと、言い訳なんですが(笑)。

――本局の序盤は人間らしいさしてだったと思いますが、コンピューターとしていかがですか?
伊藤氏 『ツツカナ』のように何手目まで何を指すというようなことはやっておらず、いつもどおりのランダム選択になっています。人間らしくなったというのは、正直言うとよくわからないのですが、評価関数を決める機械学習の成果だと思う。その辺りの仕組みをつくった『ボナンザ』の作者保木さんが偉いのだと思います。

――第5局の三浦八段に伝えることはありますか?
塚田九段 本来勝って回すべきだったので、申し訳なく思いますが、最後勝ってもらえば引き分けになるので、なんとかがんばってほしい。

――8八王から△7七王と上がったのは『Puella α』で入玉対策を施したからですか?
伊藤氏 米長永世棋聖に貸し出した『ボンクラーズ』は入玉対策を入れる前で、入玉対策を入れたのは、将棋倶楽部24でやっていた一昨年の年末のバージョンからです。ですから、第1回電王戦のときにはすでに入ってました。

――入玉のときにと金をつくるというのは、駒の価値が通常とまったく同じ計算だったからなのか?
伊藤氏 入玉のときに駒得を重視するとか、大駒5点、小駒1点というのは考慮はするが、そちら一辺倒になるわけではなく、通常時の評価関数と入玉時の評価関数とミックスした状態になる。なので、と金をつくると通常の評価関数ではよくなってしまうので、それを指してしまったのではないか。駒得ばかりを考えてしまうと、詰まされしまうので難しい。

――ここ数年でコンピューターが強くなったのは何が原動力なのか。
伊藤氏 『ボナンザ』が導入した評価関数を機械学習で強化していくというのがひとつ。そして、私がやったのがクラスタ接続で複数台接続して処理すれば強くなるというやり方です。これはたとえるなら、お金さえあれば棋力を買えるとうことを可能にした技術。昔は複数だつなげても強くならなかったのが、いまは確実に強くなる。ですので、この辺りが『ボナンザ』に次ぐブレイクスルーだと思います。

小谷氏 ひとつは『ボナンザ』的な動作は、強さに直結していると思う。また、個々のプログラムはパラメーターパターンなども違うし、広い意味でもボナンザ的なものであって、処理的には違うやり方をやっている。10年前ぐらいにさかのぼれば、詰め探索というのが、成功してうまくいっている。もうひとつは、探索の深さをコントロールする技術が進歩している。あるところでは深く読み、くだらない手は浅く読む。昔はある手を読まないということをしたら、全然ダメでした。結局、少しでも全部読むというのがいちばんいい。

入玉はコンピューター将棋の鬼門なのか

第2回電王戦・第4局

 さて、ここからはいーじまの観戦記となります。

 今回の戦い、人間どうしの戦いだったらあり得ない展開となった。プロ棋士の戦いとして入玉がないわけではないが、塚田九段が入玉した段階で駒点はかなり差があり、負けも同然だった。ところが、コンピューターはふつうの戦いと入玉時の駒の損得をかけた戦いの切り替えが難しく、塚田九段がじりじりと駒得していきなんとか24点の引き分けまで持っていた。ちなみに、駒の点数は王を除き、飛車・角は5点、そのほかは1点。つまり歩と金は同じ価値なのである。

 以前から、コンピューター将棋は入玉に弱いと言われていた。開発者の伊藤氏に、この入玉対策について伺ったが、いちばんの要因は入玉の棋譜が少ないこと。とはいうものの、評価の仕方が違うので、対策を打つのはなかなか難しいようだ。ただ、入玉されないようにするほうが対策を打ちやすいそうなので、そのあたりは今後強化されることだろう。

 ただ、今回の戦いはおもしろくなかったのかと言えば、答えはノーだ。対コンピューターの戦い方のひとつでもあるし、人間の意地と知性が垣間見られる戦いだったので、見ていてとても楽しかった。対局中に塚田九段が駒の点数を指さし確認している姿なんて、おそらく二度と見られないのではないだろうか。伊藤氏からすれば、第2局や第3局のようなガチンコ勝負が理想だと思うが、塚田九段がまともに戦うと勝てないとコンピューター将棋の強さを認めていたことは、うれしい言葉だと思う。正攻法ではプロ棋士でもかなり大変だということで、コンピューター将棋の強さは本物と言えるのだが、今回のようなプロ棋士では考えられない弱さも持ち合わせている。人間側も開発者側も「名人を超えた」と称するのはまだまだだと感じたことだろう。ちなみに、今回も持ち時間がありながらPuella αは1分将棋になっている。記録によると105手目以降時間を消費していないのでここから1分将棋と思われるが、半分以上は1分で指していたことになる。ある意味コンピューターは1分時間があれば問題ないということなのかな?

第2回電王戦・第4局

 今回、伊藤氏が用意したマシンは、全部で3台。CPUはCore i7-3960XとCore i7-3930X、Core i7-2600K。1秒間におよそ400万局面程度の読み。クラスター処理しているので、1台がマスターで2台がスレーブになる。前回の『ボンクラーズ』と『Puella α』とで何が変わったのかというと、マスター側のプログラムを一新しているという。ベースとなる『ボナンザ』のアルゴリズム“α-β探索”というものがあるが、この処理に手を加え、よりクラスター並列処理する際の無駄な時間をなくしたそうだ。具体的にはα値を決める前に予測するというもの。この予測値をもとにほかの処理をさせることで実現している。予測した値が本当の値になる、“子供αが大人になる”ということで、ラテン語で少女の“Puella”を使っているとのことだが、なんかすごいこじつけの気もするので、アニメの『魔法少女まどか☆マギカ』のことを振ったら、まどマギにかけていることも認めた。

 そんな伊藤氏は、今年の『世界コンピュータ将棋選手権』は出場しないという。ということは、第3回電王戦が開催されたとき、Puella αは対象外になるのか、このあたりも気になるところだ。

第2回電王戦・第4局
終局直後の伊藤氏が操作していたパソコンの画面。これまの3局で使っていたソフトと違っていた。

 いよいよ最終戦は今週末。人間側の勝ちはなくなったが、引き分けに持ち込めるかがポイントとなる。三浦八段vs.GPSの戦いが今から待ち遠しい。

第2回電王戦・第4局
おまけ・おやつとして出された千疋屋のモンブラン。
第2回電王戦・第4局
おまけその2・藤田綾女流初段がそのおやつをパクりと食べてました。

<<第2回将棋電王戦 大盤解説会概要>>

●日 時:3月23日(土)~4月20日(土)までの毎週土曜日
 午前9時開場/午前10時より大盤解説開始~対局終了まで
 ※9時45分より解説者・聞き手が登場し、対局前の
 現地(東京・将棋会館)の様子をレポート

●会 場:ニコファーレ
●料 金:一般1500円、大学生以下1000円
      (当日チケットのみ・税込)

  ※1局あたりの料金となります
  ※全席自由・立ち見あり
  ※学生の方は、チケット代金支払い時に学生証をご提示ください
  ※ニコファーレのエントランスホールでのモニター観覧は無料
  ※ニコニコ生放送の視聴は無料
●対局者および解説者/聞き手:
 第1局 (3/23):○阿部光瑠四段 vs 習甦(しゅうそ)●【終了】
 ◆解説者:阿久津主税七段/聞き手:矢内理絵子女流四段

 第2局 (3/30):●佐藤慎一四段 vs ponanza○【終了】
 ◆解説者:野月浩貴七段/聞き手:山口恵梨子女流初段

 第3局 (4/6):●船江恒平五段 vs ツツカナ○【終了】
 ◆解説者:鈴木大介八段/聞き手:藤田綾女流初段

 第4局 (4/13):△塚田泰明九段 vs Puella α△【終了】
 ◆解説者:木村一基八段/聞き手:安食総子女流初段

 第5局 (4/20):三浦弘行八段 vs GPS将棋
 ◆解説者:屋敷伸之九段/聞き手:矢内理絵子女流四段

●持ち時間:各4時間(1分未満切り捨て)
 先手番は、第1局 阿部光瑠四段
 (2局目以降は先手番・後手番が交替)
●主 催:株式会社ドワンゴ、公益社団法人 日本将棋連盟
●詳 細:「第2回将棋電王戦」公式ホームページ

●関連サイト
日本将棋連盟
山崎バニラオフィシャルサイト

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