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チケット制ストリーミング配信の『Groovy』は意外とイケるんじゃないか?

2013年03月30日 21時00分更新

 既報のとおり3月28日にDeNAから新しいAndroid向け音楽配信アプリ『Groovy』が発表された。

 1月の発表時には料金体系は発表されていなかったため、流行のサブスクリプション型かオーソドックスな個別楽曲購入型、もしくはその2つを組み合わせたものではないかと予想していたのだが、そのどちらでもない、チケット制によるワンタイムのストリーミング再生というユニークな方式(個別楽曲購入も可能)だったのには意表を突かれた。とは言え、一度聞いたら終わりというその方式に正直最初はピンとこなかったのだが、よくよく考えてみると、意外にアリなんじゃないかなと思えるようになってきた。

Groovy

 その理由を説明する前に、現在の音楽配信サービスで主流となっている2つの方式について簡単に整理してみよう。

 まずは個別楽曲購入型、アラカルト型とも呼ばれるこの方式は、好きな楽曲を個別に購入し、HDなどに保存して聞くオーソドックスなものだ。以前はDRM(Digital Rights Management)と呼ばれるコピー防止機能付きのファイル形式が多く、再生プレイヤーやデバイスが制限されるなどの欠点があったが、最近はDRMフリーのMP3やAAC方式が主流となっている。アップルの『iTunes Store』、レーベルゲート(ソニーグループ)の『mora』、amazonの『Amazon MP3』などが代表的だ。

 この方式はストレージに音楽ファイルをダウンロードして保存しておく必要があるため、従来はPCでの利用がメインとなっていたが、『Amazon Cloud Player』や『iTunes Match(日本では未提供)』のように購入した楽曲をクラウドに保存し、ストリーミングで聞ける仕組みもでてきており、ストレージの少ないモバイルデバイスでも手軽に利用できるようになってきている。また、米国では配信ストアで購入した曲だけではなく、過去にCDなどで購入した曲でもストリーミング再生できる仕組み(Amazon AutoRip、iTunes Match)も登場しており日本でのサービス開始が待たれる。

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 次に月額固定料金で好きな曲を自由にストリーミング再生できるサブスクリプション型だ。海外では数年前から『Spotify(スウェーデン)』、『Rdio(アメリカ)』、『Rhapsody(アメリカ)』、『KKBOX(台湾)』などが多数のユーザーを集めており、世界の音楽売り上げ高が13年ぶりに前年を上回った理由のひとつともされている。日本でも2006年から『Napster Japan』というサブスクリプション型サービスが提供されていたが、残念ながら2010年にサービスを終了していた。

 だが、去年あたりから再びソニーの『Music Unlimited』、レコチョクの『レコチョクBest』、KDDIの『LISMO unlimited』、『うたパス』、フェイスの『FaRao』など、定額制サブスクリプション型のサービスのスタートが目立つようになってきた。大本命の『Spotify』も本年度中に日本でサービスを開始するというかなり信憑性の高い噂も流れており、今度こそ日本でもサブスクリプション型が根付くことが期待されている。

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 さて、『Groovy』だ。料金体系は前述したように個別楽曲購入とチケット(17枚99円)によるストリーミング再生の組み合わせとなっている。通常音楽のストリーミング再生を行うサービスは定額制、もしくは購入した楽曲のみ何度でも再生できるという形になっており、“1回のみ再生”する権利を買うという仕組みは私の知る限り今まで存在しなかった。

 だが、考えてみるとこの形式は映画やテレビドラマなどの映像コンテンツでは一般的である。音楽でも「1回聞けばいいや」という視聴スタイルは存在するはずだ。しかも価格は1曲6円以下とたいへん安価になっており、キャリア課金ということもあり購入ハードルは限りなく低い。

 記者発表でDeNAの守安社長は「聴いても聴かなくても料金を徴収されるより都度課金の方がユーザーの満足度が高いという調査結果もあるので、こちらを採用した」と話していた。

 私はどちらかと言えば音楽マニアなので、「せっかくお金を払っているのに1回しか聞けないなんて話にならない」というのが第一印象だったのだが、音楽ソフトの売り上げ(の下落)に歯止めがきかない今、趣味のひとつとして音楽を聞くことに対しプライオリティーが低いユーザーにとっては確かに月額課金よりも都度課金の方が現実的なのかもしれないと感じる。これは従来のように“音楽好き”を仮想顧客にしている限りは出てこない、ソーシャルゲームの世界で移り気なユーザーに対して少額課金の積み重ねで大きな利益を上げてきたDeNAならではの発想だと思う。

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 さらにGroovyの特徴はユニークな料金体系だけではない。業務提携したユナイテッドの人気音楽プレイヤー『Discodeer』をベースにしているだけあって、歌詞やジャケットの表示機能や、同じ音楽を聴いている人がわかるSNS的機能、洗練されたUIなど音楽プレイヤーアプリとしても優秀だ。特にiPhoneにおける『iTunes』のような絶対的定番がないAndroidでは十分な競争力があると言っていいだろう。

 噂どおりSpotifyの日本版が始まれば、基本無料ということもあり多くの音楽ファンは飛びつくと思われるが、ライトユーザーに関しては『Groovy』が意外とイケるのではないだろうかと感じている。

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