2013年02月22日12時30分

PS4の正体は? RADEON HD7850並みのGPUと予測 by西川善司

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PS4の性能イメージを概算してみる - RADEON HD7850以上のGPU性能か?

 PS4が発表された。現在、発表されている情報は、非常に少ないが、ハードウェアのコア部分の仕様はかなり明解に分かってきた。

『プレイステーション 4』SPEC(一部抜粋)
Main Processor Single-chip custom processor
CPU:x86-64 AMD “Jaguar”, 8cores
GPU:1.84TFLOPS, AMD next-generation Radeon based graphics engine
メモリー:GDDR5 8GB
ハードディスク:内蔵

 プロセッサーコアはAMD製のAPUの新世代版をPS4向けにカスタマイズしたものを採用する。APU(Accelerated Processing Unit)とは消費電力とパフォーマンスのバランスを最重要視して設計された統合型プロセッサーで、ひとつのチップにCPUとGPUを集約させた構成を取る。つまり、CPUもGPUもAMD製ということになる。ちなみに、包み隠さずいうと、APUとはノートPC用のプロセッサーである。ただ、2013年2月現在、同じものを搭載したノートPCは存在しない。

 公開されたスペックによれば、CPUコア部分は“Jaguarコア世代”と明記されているので、現行APUのEシリーズの未来版、といった印象をもつ。製造プロセスは28nmと見られ、CPUコア数は8コアと発表されている。
 現状、PCでも8コアを搭載するものはハイエンドに近い存在なので、この部分の“未来感”は短命かも知れないが、“現時点”では確かな未来を感じる。

 PS4のGPUコアは、AMDが自ら“Graphics Core Next(GCN)”と銘打ったRADEON HD7000系コアが搭載される。GCNコアは、これまで長きにわたって、グラフィックスレンダリングに特化したアーキテクチャーだったAMDのGPUが、GPGPU(General Purpose GPU)にも適したアーキテクチャーに変革した記念すべき新世代GPUコアアーキテクチャーである。GPGPUについては後述するが、GPGPUに先行注力してきたNVIDIAの近年のGeForceのアーキテクチャーの優位性を、AMDがやや取り入れたような構造をしているのがこのAMDのGCNコアだったりする。

 公式発表によれば、GPUは、18個のコンピュートユニットから構成されるとある。GCNコアは1コンピュートユニットが、16個の32ビット浮動小数点スカラプロセッサー(SP:Stream Processor)からなるベクターユニットが4基で構成されるので、16×4×18=1152SPということになる。これはデスクトップPC向けGPU、RADEON HD7000系でいうところの、RADEON HD7850(SP=1024基)とRADEON HD7870(SP=1280基)の中間的な位置付けになる。

 GPUの演算性能は1.84TFLOPSと発表されているので、1SPあたり、1クロックで1積和算(2ops)ができるので(1.84TFLOPS÷2)÷1152で駆動周波数が概算できる。計算すると約800MHzとなる。

PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
デスクトップPC用のGPU、RADEON HD7850やHD7870に近い性能と予想される。

 メインメモリーとグラフィックスメモリーは、共有する形でGDDR5メモリーで提供されることも明らかとなった。容量は8GB。ゲーム専用機としては、結構がんばった値だ。メモリー帯域は毎秒176GBと発表されている。RADEON HD7800系のビデオメモリーバスは256ビットであり、毎秒176GBの帯域を128ビットで実現できるとは考えにくくもあるので、256ビットと仮定できる。すると176GB÷(256÷8)=5.5GHzデータレート(5.5Gbps)という、それらしいメモリークロックが算出される。

 ということで、AMDの次世代APU Eシリーズクラスの64ビットCPUコアが8個、RADEON HD7850プラスα(あるいはRADEON HD7870マイナスα)として考えると、大体のPS4のパフォーマンスイメージが湧いてくるのではないだろうか。

PS4の表現力を考察する - DirectX11.1対応で注目すべき3つの技術

 Jaguarコアはもともと省電力性能に重点が置かれて開発されたCPUコアなので、動作クロックもそれほど高クロックが想定されていない。公式スペックに記載はないが、おそらく2GHz前後だと思われる。1コアあたりは、最新のハイエンドPCと比較しても高いとは言えないが、そのぶん、コア数を多くして、パフォーマンスを稼ごうとしている意図がうかがえなくもない。ただ、コンピューターゲーム開発およびその実行において、主役は、今やGPUにある。PS4のGPUはRADEON HD7000系ということで、ついにPCでお馴染みなキーワードである“DirectX11.1世代、プログラマブルシェーダー5.0仕様(Shader Model 5.0)”へと移行する。ちなみに、PS3のGPUはGeForce 7800系ということで、DirectX9世代、プログラマブルシェーダー3.0仕様(Shader Model3.0)だった。

 DirectX11.1世代のGPUでは、DirectX9世代GPUに対して、ポリゴンを自在に増減できる“ジオメトリシェーダー”、ポリゴンを自動分割、変移させることができる“テッセレーションステージ(ハルシェーダー、テッセレーター、ドメインシェーダー)”、そして“GPGPU”という3つの新フィーチャーが追加されている。

 “ジオメトリシェーダー”は、気体や液体のような粒子を表現するためのパーティクルシステムをCPUの手を一切借りずにGPUだけで完結して実行できるポテンシャルをもつ。こうしたシステムは“GPUパーティクル”システムと呼ばれるが、PS4への対応が明らかにされたEPIC GAMES『Unreal Engine4』、スクウェア・エニックス『Luminous Studio』といった新世代エンジンは共にこのGPUパーティクルシステムを実装済みだ。スクウェアエニックスのLuminous Studioベースの技術デモ『AGNI'S PHILOSOPHY』では、このGPUパーティクルシステムで10万匹の蛍の描画と挙動の制御をGPUだけでこなしていることを明らかにしている。

PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
スクウェア・エニックスの、Luminous Studioの技術デモ『AGNI'S PHILOSOPHY』より。10万匹のホタルがドラゴンの骨に群がっている様子。GPUパーティクルシステムによって描画されているが、1匹1匹のホタルは四辺形にテクスチャーを貼っただけのものではなく、ちゃんと立体的なジオメトリー構造をもっている。

 “テッセレーションステージ”は、キャラクターモデルの変形や、視点から見たキャラクターの遠近に応じて描画詳細度(ディテール)を動的に変更させたりするような仕組みを実践することに使われる。

 たとえばPS3では、近距離に表示するための詳細な3Dモデルを数万ポリゴンでモデリングし、遠方に表示する大まかなモデルを数百ポリゴンでモデリングし、それを適宜切り替えて描画しているが、その表示モデルを切り換えるときに形状がポコっと変化する瞬間をプレイヤーに見られてしまうことがある(これをポッピング現象という)。また、数万ポリゴンと数百ポリゴンのモデルを両方オンメモリーにしておくのもムダだ。
 PS4ならば、単一のモデルをモデリングして用意し、テッセレーションステージを活用して、近景・遠景に応じて適宜、必要な詳細度のモデルを自動生成し、ポッピング現象なしにシームレスに描画することができるようになる。また、テッセレーションステージは衣服のシワ、人体の顔面や筋肉の変形にも有効に応用できるとされる。

 このテッセレーションステージに積極対応しているといわれるのが、今回のPS4発表会で公開されたカプコンの新世代ゲームエンジン『Panta Rhei』エンジンだ。ゲーム製作において、アーティストが関わる部分からコンテンツパイプライン(3Dモデルやテクスチャーを制作する作業工程の流れのこと)がテッセレーションステージに対応したもので構築されているとされる。

PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
今回のPS4発表会で初公開されたカプコンの新世代ゲームエンジン『Panta Rhei』。

 最後の“GPGPU”は、GPUをグラフィックスレンダリング以外に活用することを許容するものだ。PS3にはCPUとしてCELLプロセッサーが搭載されていたが、このCELLプロセッサーに内蔵されていた7基のSPE(Synergistic Processor Element)と呼ばれるセクションが、並列タスクを高速に実行できた。PS4にはCELLプロセッサーはないが、その代わり、GPGPUが利用できるようになったのだ。

 前述したようにPS4のGPUには1152個の32ビット浮動小数点の演算ポテンシャルをもつスカラプロセッサーがあり、これらを用いてスカラ演算やベクトル演算を並列に実行することができる。UAV(Unordered Access View)と呼ばれるメモリーへのランダムアクセス機能もサポートされるため、比較的CPUに近い複雑なロジックまでをGPUで超並列に動かすことができるようになる。

 PS4では、物理シミュレーション、アニメーション制御(モーション制御)、AI処理といったところまでをGPGPUで実行させることが期待されており、現在、ゲームエンジンへのそうした機能の統合や、ミドルウェアの開発が進められている。

PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
HAVOK社の物理シミュレーションエンジンによる大局物理シミュレーションのデモ。当然GPGPUが活用されている。
PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
SCEジャパンスタジオが手がける『Knack』。GPGPUを活用した物理シミュレーションによって動作しているものと思われる。

おわりに - 互換性やPS MOVE、PS Vitaは今後に期待

 PS4は、ハードウェアレベルでの互換性がないことが明らかとなったが、その対処策として、PS、PS2、PS3全てのプレイステーションファミリーのゲームをクラウドゲーミングの形で提供することを予告した。
 これまで、PS→PS2→PS3(中期モデルから互換性を破棄)と互換性を維持してきたことが高く評価されてきたプレイステーションファミリーだけに、この部分がこれまでのプレイステーションファンにどう評価されるかは注目すべきポイントだ。

 またPS4では、一応PS3同様に、『PS MOVE』への対応が継続されるが、標準添付されるゲームコントローラーは新型のDUALSHOCK4になり、PS MOVEに対する熱心さはやや失われたように映った。ここも、ユーザーからどのような反応を受けるか気になるところではある。

PS4の正体とは:西川善司氏寄稿
PS4専用カメラユニット『PS4 EYE』
PS4の正体とは:西川善司氏寄稿

 それと価格面だ。今回のPS4は、既存テクノロジーの最新版を採用したわけで、開発コストに関してはPS3よりはだいぶ低いとみられる。そのぶん、安価に出てくることが期待されるが、今回の発表会では発売時期を2013年末、と発表しただけに留まった。これは、この後に出てくる、マイクロソフトの次世代Xboxの動向を見極めている節がある。そしてワールドワイドでも苦戦しているPS Vitaを、PS4と連動させて盛り返せるどうかにも期待がかかる。(トライゼット西川善司)

●関連サイト
(善)力疾走

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