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祝メディア芸術祭受賞の“虚構新聞”社主が週アスに苦悩を語った

2013年02月18日 18時00分更新

 実際にありそうでなさそうなウソニュースを配信する人気サイト“虚構新聞”。週刊アスキー本紙でも隔週連載“虚構新聞号外”を抱える同サイトが、なんと文化庁主催の“第16回 文化庁メディア芸術祭”の“エンターテインメント部門審査委員会推薦作品”に選出された。

虚構新聞インタビュー

 今回はこれを記念して虚構新聞の社主、UKさんにインタビュー。メディア芸術祭にまつわるさまざまな話や、サイト運営のウラ話などを聞いた。

虚構新聞インタビュー

↑週アス編集部に遊びにきたUKさん。

──まずはメディア芸術祭選出、おめでとうございます。

UK ありがとうございます。

──虚構新聞の受賞報告記事では“10年来のファンだった『土星マンション』で受賞された岩岡ヒサエ先生が昨年大賞を受賞されたので、うまくいけば何かの機会でお会いできるかもしれないという下心で応募した”と書かれていましたが、受賞に至るまでの経緯は実際のどのような感じだったんですか?

UK 実は、声をかけていただいたんです。私も昨日知ったんですが、文化庁の芸術祭チームのなかで、その時期で話題になってたりするようなところに「出品してみませんか」と呼びかけるという、そういう試みがあるそうなんですね。うちもその一環で声をかけていただたらしくて。私は最初、「作品が足りないのかな」と思い、「水増ししていくなかのひとつなのかな?」って。なので、全然気負うこともなく、気楽に応募させてもらいました。そうしたら、あれよあれよと……。だから今度は逆に「出来レースなんじゃないか!?」と。声をかけてもらったら自動的に受かるようにできるのではって。でも昨日担当者さんとお会いしたら、「全然そういうことはなくて、しっかり審査してます」とおっしゃっていましたね。

 それでもやっぱり「なぜ……」という思いはぬぐえなくて。文化庁は血迷ったんじゃないかって。なにしろ推薦作品のリストを見たときに、あいうえお順なんですけど、虚構新聞の次に来るのが『巨神兵東京に現わる』なんです。庵野秀明監督の。「これと並ぶの?」って……なんかすごく、申し訳ない。「えらい賞、もらってしまった」という戸惑いが、あとからどんどん増していきました。

虚構新聞インタビュー

↑虚構新聞に掲載された“審査委員会推薦作品”のリスト(一部抜粋)。

──すごく恐縮されてますが、虚構新聞さんも、何年も毎日あれだけ更新されてるんですから、そこは誇っていいところではないかと思いますが……。

UK 嫌われるところも、ありますからね。100人いれば100人が評価してくれるようなサイトでは絶対ないですし。それに、文化的なものをつくるだとか、そういう大きい目標でやってきたわけではなくて、ネットで何かを書いた、やったときに「おもしろかったです」ってレスポンスが来ると……“麻薬”なんですよ。それが中毒になってしまって。だから読者の皆さん、たまたま見に来た人に「おもろい」って言ってもらえることがいちばんうれしくて、それだけのためにやってきたことなので。だから今回の賞もですけど、2冊目の単行本『虚構新聞2013』が今年1月に発売されたのも全部、成り行きですね。来る物拒まず、でやってきただけなんです。

──本といえば、ゲリラ的な販促活動をされてますよね。“各地の本屋を巡って、単行本に勝手に名刺を挟んで回る”っていう。

UK それもやっぱり、楽しんでもらいたいというか、ちょっと得した気分になってもらいたいからですね。

↑虚構新聞の公式ツイッターでは、単行本のゲリラ販促活動の報告も行なわれている。

──少しお話が戻りますが、メディア芸術祭にはもう行かれたんですか?

UK 先日、受賞者の祝賀会にお招きいただきまして、そこで展示品も見させていただきましたね。

──祝賀会では何か出会いや出来事がありましたか?

UK 皆さん集まって和気あいあいとされているなかで、誰も知り合いがいなくて。すごいぼっちだったので、とりあえずご飯だけお皿にいただいて立ってたんですけども、居づらくなり、裏手のほうに予備のテーブルとかが置いてある場所があったので、そこにひとりでいました。“顔写真”をお面にして持って行ったので、それをテーブルに置いて、「誰か気付いてくれるかな……」と思いつつ。

虚構新聞インタビュー

↑問題の“ぼっち”状態時に撮影された写真。UKさんがツイッターでこの写真を掲載したところ、「がんばって!」、「誰か!声かけてあげて!」といった励ましの言葉がフォロワーから送られてきたという。

UK そうこうしていたら、イシイジロウさん(『428 ~封鎖された渋谷で~』などを手がけたゲームクリエイター)が間に立ってくださって、SCEの外山圭一郎さん(同じくゲームクリエイター。『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』で第16回メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞を受賞)にご紹介いただいて。私はもう、普通に『GRAVITY DAZE』を買って遊んでいたファンだったのですが、外山さんに一応「こういうもんです」と名刺をお渡ししたら、そのSCEのチームの皆さんが急にワーッとなって。知っていただいてたみたいで、本当にうれしかったです。私からしたら雲の上の人ばっかりのなかで、単行本にサインまで書いたりしてしまって、心のなかで「逆」と(笑)。本当に楽しませてもらってた立場の私が、皆さんから「社主、社主」って呼んでいただいて、ほんとウソみたいでした。私が「ウソみたい」って言うとなんかややこしくなりますけど(笑)。

虚構新聞インタビュー

↑PS Vita用ソフト『GRAVITY DAZE』。「虚構新聞社主が絶賛!」と書くと何故か眉唾感が出てしまうが、ガチでオススメとのこと。

──今後の活動の予定などありましたら教えてください。

UK まぐまぐさんで『虚構新聞友の会 会報』(関連リンク)という有料メールマガジンをやらせていただいてます。書いてあることは、たとえば、ウェブ版に載せたら即座に炎上してしまうようなネタですとか。読めばわかるけど、見出しだけで拡散してしまうと確実に炎上するので、そういうのはメルマガだけで流すという。昔だったら載せてたと思うんですが、今は時代も変わって、ツイッターとかでどんどん拡散しちゃうので、ブラックすぎるものは躊躇する部分もありますね。

──時代が変わったといえば、最近は「虚構新聞かと思ったら本当のニュースだった」みたいなことが多くありませんか?

UK そうなんですよ! 本当、あがったりですよ(笑)。

──最近で、一番「なんてことしてくれたんだ」ってニュースはなんですか?

UK 原口さんが「グーグルアースで……」って言ったやつとか(笑)。うちで書いてもいいくらいの出来事が起きちゃってますよね。

 それと、現実の出来事で「やられた」ってなるものもありますが、ネタを先に言われてないかというのも気にしていますね。もう今、なにか事件が起きると、大喜利的にみんながワーッと虚構新聞的なイジリをするので。だから「書きたいな」と思ったときにも1回検索をかけて、ネタかぶりがないかというのはチェックします。なかには「虚構新聞ならこう書く」みたいにネタつぶしにかかる人もいて……(苦笑)。遠隔操作ウィルスの事件もなにかやりたいと思ってたんですけど、言われちゃってるのばっかりで、「この事件はもうムリ」ってなってしまったケースもありました。

──なるほど……。では結構ネタづくりのスピードが重要になることも多いんですね。

UK 時事ネタはやっぱりそうですね。あとは、「円周率が割り切れた」とか、そういう普遍的な話題、いつ読んでもいいものもなるべく混ぜるようにしてます。どうしても時間はかかるんですが。

──そういった苦労があったんですね。メルマガや週アス連載などもあり大変そうですが、今後のご活躍にも期待しています!

UK ありがとうございました! ほかにもおもしろそうなことを計画中ですので、ぜひご期待いただければと思います。今後とも“虚構新聞”をよろしくお願いいたします。

虚構新聞インタビュー
虚構新聞インタビュー

『虚構新聞』も選出された『第16回文化庁メディア芸術祭』は、2月24日(日)まで、六本木の国立新美術館をメイン会場に展示会を開催中。アニメーション部門では『おおかみこどもの雨と雪』が優秀賞に、マンガ部門では『GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガー・ガール)』なども選出されている。

■関連サイト
虚構新聞
第16回文化庁メディア芸術祭

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