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初小説がアマゾンで1位に。KindleデビューのコツをGene Mapper作者に聞く

2013年01月25日 14時00分更新

 初めて書いた電子書籍のSF小説『Gene Mapper』が、紙の書籍を押しのけ、アマゾンで1位に。スピード感のある文章と緻密な構成の内容もさることながら、執筆から表紙デザイン、広告までをプロ級に一人で行なったということで話題を呼んだ。『Gene Mapper』の成功を機に、文芸誌デビューも果たした作者の藤井太洋氏に、『Gene Mapper』誕生の裏話から、セルフパブリッシング、そして次回作の概要までをうかがった。

『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー

『Gene Mapper』
藤井太洋氏が2012年に発表した処女作。進化し続ける科学技術に一石を投じる深いテーマと、スピーディーな文体とストーリーで一躍話題となったSF長編。1月28日までキャンペーン価格300円で購入できる。

【ストーリー】
 2014年にインターネットが封鎖され、拡張現実が日常的に使われるようになった2037年。農作物にかわり、遺伝子を操作した“蒸留作物”の外観を設計するスタイルシート・デザイナーの林田は、納品した蒸留作物の異変により調査を始める。舞台は日本から、2014年に封鎖されたインターネットが未だ生きているホーチミンへ。そこで、林田は驚愕の事実と、大きな決断に直面する。

作者紹介:藤井太洋

1971年生まれ。舞台美術やDTP制作、グラフィックディレクターなどを経て、現在はソフトウェア会社に勤務。2012年7月に公開した『Gene Mapper』は、執筆から広告にいたるまで、すべて一人で行なっている。2012年末には、『S-Fマガジン』、『小説トリッパー』で作家デビューを果たした。

『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー

■作品はiPhoneで通勤の往復に執筆

――デビュー作の『Gene Mapper』は、iPhoneで執筆されていたそうですね。
藤井:ええ、会社勤めなので、40分の通勤の往復で書いていました。フリック入力ならあまり画面を見ずに打てるので。それから昼休みにはiPadでも書いていました。書いたものはDropboxに同期して、あとでまとめる感じです。

――どんなアプリを使われているのですか?
藤井:50ぐらい色々なアプリを試しましたが、わたしの書き方に合うものがなかなかなくて……。最初は縦書き表示に惹かれて『iText Pad』を使ってましたが、Dropboxとの同期が手動だったのと、同期に時間がかかるので、使うのをやめました。今は章立てのできる『Notebooks』を使っています。iPhoneやiPadで書き終わったら自動で同期してくれないと、端末ごとにバージョンが違ったりしてしまうのは致命的なんです。

――書く順番は頭から書かれたのでしょうか? それともシーンごとに?
藤井:『Gene Mapper』は初めて書いた小説なので、できあがり方もあまり参考にならないかもしれませんが……。最初短編の予定で、『iText Pad』で書いたときは頭から書いていたんですが、その後章立てしたいなと思ってからは、バラバラに書くようになりましたね。

 長編にしようと決断したあとは、Mac版の『Scrivener』という執筆専用のソフトを使い、章と節をガツガツ立てて、それぞれ文字数を決めて、空のテキストファイルをDropboxに落として、それを『Notebooks』で拾うという形で、箱を埋めていくように書いていました。

『Scrivener』
『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑Mac版の執筆を目的としたエディターソフト。章の順番を簡単に入れ替えできるコルクボード機能のほか、目標文字数を設定できる機能や、書き直す以前の文章を参照できる履歴機能などを愛用しているとのこと。

■1人で書き上げることと編集者と作り上げることの差とは?

――『Gene Mapper』執筆期間はどのぐらいですか?
藤井:2011年11月に初めてのファイルができていますので、半年ぐらいですね。やはり、前半と後半ではちょっと雰囲気が変わっています。そうならないように努力したんですが、違います(笑)。執筆の終盤は編集者的な視点をもって書こうとしていましたが……

 もし別の編集者が入っていれば、序盤はもっと精巧な文章でスタートできたはずです。読者が振り落とされない程度には説明を入れたり、キャラクターをもっと立てたり。そういった作業が入ってくると思います。それも外部で見ていれば可能なんですが、一人では限界がありましたね

――『Gene Mapper』を発表されるまでの期間はどのくらいかかりましたか。
藤井:自分で脱稿としたのは2012年5月末。それから、友人に最後の読みをやってもらって、その間に出版準備で公式サイトをつくったり、ePubの試験を繰り返し、7月26日までまる2ヵ月かけています

――ちなみに、紙の雑誌に発表された短編2本の執筆期間はどのぐらいですか?
藤井:5週間~8週間ぐらいですね。この2本を書いている頃はだいぶ書き方が固まっていたので、通勤の往復で1日に原稿用紙8枚ぐらい書いてました。昼食時にiPadで読み直したりしてました。

――紙の雑誌でプロの編集者とかかわっていかがでしたか?
藤井:いやー、やっぱりプロは違うなと(笑)。初めて一緒に作品をつくった方なのでコメントが難しいんですが、私が知らないことだらけなので、色々と勉強させてもらいました。文章の磨き方とか、やりとりしている中でどんどん磨かれていきます。

――セルフパブリッシングでも「全部一人でやらないこと」とおっしゃてましたが、やはり誰かに読んでもらったり助言してもらうことは大事ですね。
藤井:プラスになります。必ずプラスになります。特に作品になっていない段階で話ができる友人は、絶対離しちゃダメです(笑)。その人とはコミュニケーションを続けたほうがいいと思います。作品ができあがってしまうと、意見が入れにくくなってしまうと思うんです。セルフパブリッシングの場合は、どうしても一人よがりになりがちなので、せめて一人ぐらい満足させてから出しましょう、と。

 ただ、部数の大きいマスメディアで出す編集だけがすべてでない気がしています。印刷して書店に置いたり、何千という単位の販売数を狙うのならば、文章を磨き、一貫した目でキチンと見ていくのは有効な手段だと思います。が、Kindleで買う本の中に、“弾き語り”みたいな本があるんですよ。表現も揺れてるんですけど、短い小説で、作家の文章が生の形で出ている、そういう良さのある作品に出会うことがあります。当然ダメなものもたくさんありますが。ただ、増えていくんじゃないかなって。弾き語り的な、ライブな文章で出てくる中にしかない良いものが出てくるんじゃないかな

――それは紙では生まれえない?
藤井:そういうものを出版するのは怖いでしょう(笑)。

――でも、『Gene Mapper』ほどすごいものを一人でつくられると、「編集者いらないんじゃないか」って危惧しちゃいますね(笑)。
藤井:いえ、そんなことはないですよ。『Gene Mapper』はたまたま7000部出ましたが、もしこれが書店で平置きされた本だったりするとツライですよ(笑)。パラパラッとめくって、出てくる用語にほとんど説明がない状態が続くこともある。それは避けたほうがいいと思う。

――次回作も1人で書かれるご予定ですよね。
藤井:はい、こういうチャレンジは続けようと思っています。セルフパブリッシングでやる弾き語りみたいなものは。あと、もし紙の本でという出版社があれば、「じゃあ、全面書き直しつきあってください」と(笑)。きっちりとエンターテインメントにして出しますね。

――もし『Gene Mapper』を紙の本でということになったら、やはり書き直しされますか?
藤井:書き直しです。ボリュームがちょっと足りないですし。文庫本で、ゆるめの組版にして200ページぐらいですから、せめて300ページぐらいになるまで増やさなきゃ……大変だ(笑)。ちなみに『Gene Mapper』の表紙は紙の本では絶対やらないことをやっているんです。

――え、どれですか?
藤井:まず、レイアウトが完全なシンメトリー(左右対称)になってるんですね。これは縦書き、横書きどちらでも対応できるようにしたためですが、紙の本では動きがないのであまりやりません。それに、帯が来る位置にタイトルをつけました

 もうひとつは蛍光グリーンですね。こんなに蛍光グリーンを多用したデザインは紙はやらないです。デジタルの本なので、蛍光グリーンを使ったデザインにしてみました。

■『Gene Mapper』裏話。主人公は実は女性かも!?

藤井:実は、『Gene Mapper』では主人公の性別に関する描写を一切していないんですよ。

――!! 確かにそうですね。男性だと思い込んでました。
藤井:ひょっとしたら女性として読んでくれる人もいるかな……と思って、全部消したんです。途中で。ただ、誰も女性だとは思ってくれなかった(笑)。意味のない小細工でしたね

――これは“男の物語”だと思ってました。
藤井:そうですよね。“男の物語”でしかないんです、誰が読んでも(笑)。

――女性がほとんど出てこないですよね。出てくるキャラクターはみんな個性が強かったですが、その中で主人公はニュートラルな立場だったのでしょうか。
藤井:主人公は弱いというか、主人公の動機を支える組み立てが弱いんですよね。今の状態だと、流されて動いているんですよ、特に前半。あやしいと思ったり、好きとか嫌いが薄すぎるんですよね。性別に関する描写を消すときに消し過ぎてしまったんですよ。そんなことやんなきゃよかったな、と(笑)。

――3作目の『UNDER GROUND MARKET』でやっと女性が主人公クラスに登場してきましたが、あまり登場人物のビジュアルについて描写されてないですね。
藤井:直接的には描写を書きたくなかったというのはあります。キャラクター小説を書きたくないわけではないんですが、ビジュアルが固定してしまうのは怖い部分がまだあって。皆さんが好きなビジュアルをあててくれるとうれしい。

――ちなみに、『Gene Mapper』で初台のカフェが出てきましたが、なぜ初台だったんでしょうか。
藤井:あれは実はアップルの跡地なんです。オペラシティのある場所ですね。

『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑iPadのKindleアプリで表示。主人公と、“ジャパニーズ・サラリーマン”の黒川さんが、初台のカフェで落ち合うシーン。

■小説を書くようになってから読書量が増えた

――読書はどれぐらいされていますか。
藤井:あまり読んでないですよ。年間で100~200冊ぐらいですかね。ジャンルもあまり広くなく、SF小説とか科学書をよく読みます。『Gene Mapper』を出したころから読む量が増えました。やはりインプットが足りないなと思って。あまりにものを知らなすぎるので(笑)。あとは実際書いてから読むと、過去の名作がすごくおもしろいんですよね。

――今注目されている作家や作品はありますか。
藤井:19世紀に、小説がエンターテインメントになった時代。あの頃に書かれていた本で今でも残っているものを読んでみようかなと。今と同じようにメディアが変わっていく時代なので、そうそう、『吸血鬼ドラキュラ』がおもしろいんですよ

――読書は原書でされるのですか。
藤井:日本語のものもありますが、『World War Z』や『シャーロックホームズ』などは英語で読んでます。時間かかるんですけど、ほとんどKindleのおかげですよ(笑)。なぞったら辞書が出る(笑)。英語はほぼKindleですね。紙と電子書籍の割合は、1:1ぐらいですね。電子書籍はセルフパブリッシングのものや、新書をよく買ってます。新書は装丁が似ているから、書店でよく買い間違えていたので電子書籍で買っています(笑)。

『World War Z』
『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑インタビューや録音を収録した形態が19世紀の作品である『吸血鬼ドラキュラ』に何となく似ている。
『吸血鬼ドラキュラ』
『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑今、楽しんで読んでいるという1冊。手紙、タイプライター、速記から起こしたもの、ミックスドメディアの文章が入り乱れるところが興味深いとのこと。

■セルフパブリッシングのデメリットとは

藤井:セルフパブリッシングの本って買いにくいんですよね、普通に考えると。私は公式サイトで『Gene Mapper』のレビューを集めたりして内容がわかるようにしていたので、「買っても大丈夫かな」という壁を壊せたのは大きかったと思います。

――確かに。アマゾンならまずレビューを見ますね。
藤井:Amazonの日本のサイトでも、『Gene Mapper』はすぐレビューがついたので、ありがたかったですね。海外では書影をクリックすると、ちょっとだけサンプルが読めるんですが、日本のアマゾンではウェブで中を見ることができないので、まだ買いづらいですね。

――ご自身のサイトでも、中身が読めるサンプルをアップされてますよね。
藤井:あれはamazon.comのAPIを使っているので、縦書きができないんですよね。日本でももう、ブラウザーの中で縦書きを使って表示できるモジュールなどは色々なところで開発されてますね。ボイジャーのBnBとかいいですね。

――Yahoo!ブックストアなどもBinBのシステムを使ってますね。ご自身では、ブラウザーのシステムを使われるご予定はありますか?
藤井:ブラウザーで小説を読むのもどうかな……というのがありまして。モバイルに対応してくれるといいんですが。KindleやiBookストアなど、ものすごく買いやすくて読みやすいプラットフォームがあるので、ブラウザーで読ませるのは難しい気がします

 でも、中国ではありかなと思います。実際、台湾版の『Gene Mapper』はBinBのシステムを使ってつくっています。サンプル見たんですが、すごくきれいですね。中国語版もすごく調子がよいです。今、200ぐらい出ています。あとは、唐茶というオンライン書店から中国本土で売っていただいてます。

――中国語版を出そうと思ったのは?
藤井:まず英語版のほうが先だったんですが、日本語の読者だけでは数が少ないかなと言うのがありまして。とはいえ、翻訳の細かいチェックなどはできないので、私もどうなっているのかわからないのですが。それでも物語の幅が広がればいいと思っています。また、そこからマンガなどに派生してほしいという思いがあります。中国や台湾でマンガとか、そういうふうに発展してほしいです。実は、台湾と韓国ではすでにコミック作家を探しています

――儲け話が出ましたが、現在何部ぐらい出てるんでしょうか。
藤井:今7000超えました。直販とKindleとkoboとiBooks Storeを合わせて。部数はKindleが多いですね。売上はかなり翻訳代に使っています。アプリを多数買ったり、ドメインの維持費もありますし

■オープン規格のePubを選択

――『Gene Mapper』の公式サイトはいつつくられたんですか。
藤井:2012年の5月ぐらいですね。

――先につくられたんですか?
藤井:ええ、コツコツと。WordPressですけどね(笑)。

――サイトだけでなく、表紙や装丁デザインもすべて一人でやってらっしゃるとのことですが。
藤井:すべて一人でやりました。あとは友人に2度読んでもらっただけですね。1度目は作品になる前の段階でアドバイスをもらい、2度目は最後出す前に通して読んでもらって文字校正に近いことをしてもらいました。友人は編集者なんですが、文芸の編集者ではなく、サイエンスライター兼科学書の編集者です。わたしより文章にはくわしいので、「一人称で書くときにはね」と指摘されたこともあります(笑)。

 あと、校閲だけはプロの方にお願いしようかと迷いました。やっておけばよかったと(笑)。漢字の使い方の間違いとか送りの間違いとかどうしてもあります。次回作では、セルフパブリッシングでも校閲をお願いしようと思っています。

――現在、『Gene Mapper』のフォーマットは8個ありますね。
藤井:ほとんどePubからの派生なんで、それほど手はかかっていないです。

――電子書籍の企画としてePubを選ばれたのは?
藤井:ほかにオープンなものがなかったので(笑)。ePubはHTMLの縦書きができることはわかっていたので、そのまま使いました。

――ePub作成には、タグの知識があるかないかで違うと思うのですが。
藤井:どうでしょう。どれだけ凝ったものを作るかによっても違うかと思いますね。あと、私は一人でやっているので問題にしてないだけで、もし分業されていたら、ePubの制作を担当している人はタグの知識がなきゃって話になるかもしれないですね。1人でやっていれば、「こんな形のePubに仕上がります」というのがわかって、その形に合わせて書くようにしているので、そんなに問題にはならないですね。

――藤井さんは一人でやってらっしゃるという点でスゴイと言われている反面、ここまでしなきゃだめなのかという意見も出てましたね。
藤井:ありましたね。私が始めた時点では、Kindleもkoboもまだ日本になかったんです。iBooksも縦書きが読めないので横書きもつくらなきゃ……という時期だったので、あれだけフォーマットをそろえたんです。これからやる方でしたら、KindleもiBooksもありますから。書くことに集中したいのであれば、PabooやBCCKSなどのePubをその場で作成して売るサービスを利用するのもいいかもしれませんね。

縦書きが読みやすいePub
『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑章の見出しは横書きにし、その後の本文は縦書き。ページごとの組版にも工夫が凝らされている。

■次回作の舞台は2020年! 

――次回作を今書いてらっしゃるんですよね。
藤井:はい、『Orbital Cloud』を書いています。他にもあと2本は書きたい話があります。それから『トリッパー』で発表した3人組の続きの話も書きたいなぁと。

――トゥルーネットとインターネットの崩壊のお話も書かれると、読者の方とお約束されていましたが……。
藤井:しますします、どこかで必ずやります(笑)。まずは『Orbital Cloud』をセルフパブリッシングで出しますが。

――ちなみに、『Orbital Cloud』はどんな話になるんでしょうか。“Cloud”とつくあたり、ネットとか関連してくるのでしょうか。差しさわりのない範囲で教えていただけるとうれしいです。
藤井:近未来の話ですが、SFではないですね。長編です。タイトルの“Orbital”は人工衛星などが飛ぶ“軌道の”という意味です。2020年ぐらいを舞台に、主人公は日本人の若者の男女。国際的なテロに巻き込まれていくような話です。今回もスピード感のある話にしようと思っています。ただ、IT系の話以上になじみのない技術が出てきそうなので、そこは丁寧に説明していかないと。

――専門的な話はどこまで説明するかというところが難しいですね。
藤井:難しいです。これまでの話は、ITを知っている人たちにはスッと読めると思うんですが、ITから離れていくと、どんどんわからなくなりますしね。

■ニンテンドー3DSで電子書籍を出したい

藤井:実は『Gene Mapper』ってサイドストーリーなんですよね。本当はインターネットとトゥルーネットというテーマで書いていたんですが、何せ初めて小説を書いたので書ききれなくて。それで、同じ設定でいろんなサイドストーリーを書いていたんですが、そのひとつが『Gene Mapper』です。

―それではもしかしたら、キタムラが主人公の話も?
藤井:そうですね。キタムラたちが主人公の話もありました。でもこれはSFにはならないですね、きっと。ほぼ現行の技術の話になりますので、テクノ・スリラーといわれるジャンルの話になるんじゃないかなぁ。そういう感じにしたいと思ってたんですが、手に負えなくて(笑)

 シングルテーマの話ではだめだったので、そこにひとつ“遺伝子工学”を入れてみたら、うまくハマった。遺伝子工学に関する話も今後は書いてみたいと思ってます。

――それではこれからも『Gene Mapper』の世界のストーリーが読めると期待していいんですね。
藤井:ぜひ期待してください。『Orbital Cloud』に力を入れているので、今年中は難しいかもしれませんが……。

―あと、ジュブナイルも書いてみたいとお聞きしたのですが。
藤井:あー、ジュブナイルもやりたいんですよね。

――それは紙ではなく?
藤井:ニンテンドー3DSで出したいんですよ(笑)。中学生が300円もらって買うなら3DSじゃないかと。小学生の3~4年生が読めるぐらいの『Gene Mapper』を書きたいと思ってるんですが、さあ、書けるかな(笑)。

 『Gene Mapper』にはおじさんしか出てきませんが、子供のころ、『シャーロックホームズ』とか読んで楽しかったんですよね。子供も女性もほとんど出てこなかったけれど、おもしろかったですからね

■おもしろい作品に出会ったらどんどんほめてほしい

――最後にこれからKindleでセルフパブリッシングを志す方にメッセージをいただけますか。すでに、色々なところで散々コメントされているかとは思いますが……。
藤井:本当にわたしは幸運なタイミングでできて、おかげさまで文芸誌でも2本発表させていただきました。ジャンル小説をここまで広く支持頂けたのは、タイミングに助けられたことが大きいと考えています。

 『Gene Mapper』よりももっと広い読者を獲得できるジャンル、小説の可能性はあると思います。楽しいと思って続けられていられる限りは、セルフパブリッシングを続けてみるといいと思います。いま、セルフパブリッシングはすごく良い道具になりましたし、同好の士が集ういい機会でもありますので


 あと、これは繰り返しになりますが、作品未満の段階で見てくれる人は大事にしてください。また、「作品を読んで」とお願いされたら、ぜひ読んであげてください。頼むほうは必死ですから(笑)

 そして、どこかでおもしろい本を見つけたら「おもしろい」って言ってください。評価が増えれば増えるほど、セルフパブリッシングは豊かになります
 

『Gene Mapper』作者、藤井太洋氏インタビュー
↑ソーシャルネットワーク上で、読者にセルフパブリッシングのアドバイスをするなど、気さくな人柄の藤井氏。次回作が待ち遠しい!

■関連サイト
Gene Mapper | Official Web Site(関連サイト)
『Gene Mapper』の公式サイト。『Gene Mapper』を購入できるほか、途中まで読める無料プレビュー、レビュー記事の紹介が掲載されている。1月28日までは、期間限定で『Gene Mapper』を300円で購入できるキャンペーンを実施中。

 なお、週刊アスキー2/5号(1月22日発売)では、特集記事『Kindleで自費出版してみる』で、藤井太洋氏をはじめ、Kindle作家にインタビューしています。合わせてチェックしてみてくださいね!
 

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