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思わず読みたくなる3種の見出し――迷わず書くための文章術(3)

2013年01月04日 15時00分更新

 本記事は、誰でも上手な文章が書けるコツがつかめる書籍『Webライティング実践講座』(関連サイト:Amazon)から、一部を抜粋したものです。ブログや仕事の文書で活かせる手法が多数紹介されているので、気になった方ぜひ手にとってみてください。前回はこちら↓
起承転結は「転」から考える――迷わず書くための文章術(2)

迷わず書くための文章術(3)

見出しは3種類しかない

 つまらない文章を読んであげる義務はだれにもありません。Webにはいくらでも情報が溢れていますので、「なんか違うな」と思ったら、まとめサイトの最新記事一覧やYahoo! JAPANのトップページに行けば、いくらでも面白そうな情報を見つけられます。Webのおかげでだれでも無料で情報発信できるようになりましたが、多くの人に読んでもらうには、それなりの工夫が必要です。

 Yahoo! JAPANなどのポータルサイトは、ターミナル駅に直結した駅ビルです。放っておいても来客が見込めますので、派手な看板も強引な客引きも必要ありません。一方、ほとんどのWebサイトは路地裏の居酒屋です。接客態度も価格帯もわからず、独特の雰囲気で居づらいかもしれないので、わざわざ入ろうとはだれも思いません。だから、ホットペッパーにクーポンを掲載してもらい、安心して入れるように代表的な料理とその値段を看板に書き、女性店員にかわいらしいユニホームを着せて大通りでチラシを配るのです。

 クーポン誌や看板、チラシはそれぞれ異なる方法で見込み客にアピールする方法です。クーポン誌は、ある地域でお酒が飲める場所を探している人に自店の存在をアピールするには最適です。もともとニーズの高い人が読んでいるので、自店がニーズとぴったり一致し、期待以上であることをアピールすれば来客も増えるでしょう。しかし、すでに店のある地域にいて一人4000円くらいで済みそうな居酒屋はないか探している人には看板で十分に効果があります。いかにも二次会の場所を探していそうなサラリーマングループなら、かわいらしい女性店員が直接チラシを渡したほうが効果的でしょう。

 見出しの役割もクーポン誌、看板やチラシと同じです。本文は、読んでみないと役に立つのか、面白いのかどうかわかりません。それでは少しの人しか読んでくれないので、見出しを工夫するのです。ストーリーの根幹にある「転」を考えたら、どういうユーザーがどういう状況で読むコンテンツなのかを想像しながら見出しを書きます。

 コンテンツを見るきっかけは、検索エンジン、ソーシャルメディア、サイト内回遊の3種類に大別できます。それぞれに対応するのが、SEO見出し、煽り見出し、要約見出しです。

思わず読みたくなる3種の見出し――迷わず書くための文章術(3)


■(1)SEO見出し

 検索エンジンのスコアを高めて、検索結果のより上位に表示され、検索結果でよりクリックされやすいように工夫するのがSEO見出しです。検索エンジンに表示されるのは各ページのtitle要素ですから、SEO見出しで作るのはtitle要素のテキストです。Webサイトに集客するのではなく、キーワードに凝縮された何かのニーズを検索エンジン経由で特定のページに集客するときに効果的な見出しです。ただし、検索エンジン経由の訪問数をどんなに増やしても、肝心のコンテンツがユーザーの問題を解決しなければ意味がありません。検索ユーザーは何らかの疑問、問題を抱えた状態にあり、解決のためにキーワードを入力していますので、SEO見出しでは「ユーザーのニーズは何か」をできるだけ正確に表現し、本文で問題を解決してあげることが重要です。

 ユーザーのニーズを、SEO見出しではメインキーワードとセカンドキーワード、ターゲットキーワードの3語で表します。たとえば、検索エンジンから集客したいコンテンツのテーマが「ワイン」だとすれば、メインキーワードは「ワイン」です。しかし、ワインといっても赤ワイン、白ワインの製法の違いを調べているのか、ワインの産地を調べているのか、自宅用の値頃なワインを探しているのか、お祝い用の高級ワインを探しているのか、ユーザーのどのニーズに対応するコンテンツを用意するのかわかりません。

 どんなニーズが世の中にあるのかを知るもっとも簡単な方法はWebブラウザーの検索ボックスにメインキーワードを入力してみることです。たとえば「ワイン」と入力すると、「カロリー」、「つまみ」、「保存」といったセカンドキーワードが補完されます。Googleサジェスト(Googleのキーワード補完機能)には膨大な検索ログが使われていますので、「ワイン カロリー」、「ワイン つまみ」、「ワイン 保存」で検索している人が実際にいることを意味します。しかし、多くの場合はターゲットがだれなのかはわかりません。ほぼ間違いなく女性が検索している「看護婦 求人」といったメインキーワードとセカンドキーワードの組み合わせもありますが、「ワイン カロリー」を入力しているのがだれなのかはわからないのです。

 SEO見出しはセンスに頼らず、Googleの補完機能やツールによる客観指標でメインキーワードとセカンドキーワードを導くのが基本ですが、ターゲットキーワードだけはセンスも必要です。「ワイン つまみ」なら「自宅」のように、なるべくユーザーの属性や状況が想像できるキーワードを考えます。こうしてメインキーワード=ワイン、セカンドキーワード=つまみ、ターゲットキーワード=自宅と決めたら、3つのキーワードをできるだけメイン、セカンド、ターゲットの順で見出しを作ります。

ワインのつまみが自宅で作れる激旨レシピ(20字)

 検索エンジンの検索結果には、全角で35字程度までしか表示されませんので、SEO見出しは35字以内が必須です。また、GoogleやYahoo!JAPANは検索結果の見出しに含まれる検索キーワードを太字にしてくれますので、メインキーワードとセカンドキーワードはできるだけ先頭に近く、隣り合って現れるように工夫すると、いかにもユーザーのニーズと関係が深い見出しに見えて、高いクリック率が期待できます。

 SEO見出しの目的はユーザーのニーズをくみ取って検索結果で目立ち、クリックされて記事に誘導することです。本書の『Webライティング実践講座 ニュースリリースから商品説明まで』という書名は、「Webライティング ニュースリリース」、「Webライティング 商品説明」といった検索ニーズがあることをツールで確認したうえで付けたSEO見出しです。Googleで検索し、Amazonなどのネット書店でコンバージョンするように考えました。


(2)煽り見出し

 煽り見出しの目的は、常識を覆し、ときには劣等感や優越感を刺激して、ニーズのないユーザーにもアピールすることです。ユーザーのニーズとは関係なく、ソーシャルメディアなどで話題になることを狙うのです。

 TwitterやFacebookのタイムラインに表示されるのは各ページのtitle要素ですから、ソーシャルメディアでアピールしたいページのtitle要素のテキストは煽り見出しで作ります。見出しを見るまで、ユーザーが知りたくなかったことを「知りたい!」と思わせるのですから、ユーザーの常識を覆したり、劣等感や優越感を刺激するなど、一歩間違えば炎上したり、大げさ、狙いすぎ、などの批判を浴びかねない見出しです。とはいえ、大衆紙や一般誌、情報誌の見出しで使われているのは煽り見出しの一種ですし、ソーシャルメディアで本当に話題を作ろうと思ったら、有名人を起用するか、煽り見出しを使うかしか方法はありません。

 当たり前に思っている素材やサイズ、形、価格が覆ると人々の「おっ?」という関心を引く、読んでもらえる見出しになります。ただし、単純に覆すだけだと一発ネタになりますので、覆ったことで役立つ要素があると、イチゴ大福が甘さと酸っぱさの組み合わせで定番和菓子になったように、受け入れられます。

 また、「肉をたくさん食べると太る」という常識に対して、(真偽はわかりませんが)

肉だけで痩せるダイエット

という見出しを立てれば、「本当に?」と思って読んでもらえるでしょう。

 劣等感や優越感を刺激する見出しは、週刊誌や一部の月刊誌でよく使われます。会社で上司とうまくいっていない人が

元首相の○○氏、次選挙で落選必至

と聞けば、心のどこかで「ざまぁみろ」と思うでしょうし、自身の境遇にどこか不満を抱いている人が

ノーベル賞受賞の◯◯氏、不遇の大学院時代

と見れば「自分もがんばろう」と思うでしょう。心の負の面に訴える見出しはどこか暗いので使いたくありませんが、世の中の見出しがどういう意図で作られているかは見抜けるようになります。


(3)要約見出し

 内容を簡潔にまとめるのが要約見出しです。SEO見出しや煽り見出しはWebサイトに訪れる前のユーザーに読んでもらい、集客するのが目的なのに対して、要約見出しはサイトを訪れたり、目的とする動作をしてもらった後で、ユーザーの利便性のためにh1~h6要素に内容を示します。少し抽象的にいえば、「コンバージョン後の見出し」です。本節の小見出しである「SEO見出し」、「煽り見出し」、「要約見出し」は、本書を手に取り、パラパラとめくって本文を読み始めたあと、読者の利便性のために付けたコンバージョン後の見出しです。

 要約見出しで内容を簡潔に言い表すには訓練が必要です。ノウハウを学んでもすぐには作れませんが、

  • できるだけ短く、長くても31字(5+7+5+7+7)以内に納める
  • 「主語+述語」が基本形
  •  変化したこと、いままでと異なる情報を入れる
  • 「5W1H」ではない
  •  一般的でない固有名詞は使わない

などの基本テクニックはあります。「1.7 キビキビとした文章への直し方」とその補講で説明している文章の圧縮方法を突き詰めて、内容を1行で表すのが要約見出しです。

見出し作りのポイント

■3種類の見出しを目的で使い分ける
■検索エンジンに表示されるtitle要素はSEO見出しで作る
■ソーシャルメディアで言及されるtitle要素は煽り見出しで作る
■コンテンツ内のh1~h6要素は要約見出しで作る

 さらに詳しく知りたい方はこちらの本で。

■関連サイト
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