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ドコモ『クラウドサービス』インタビュー、メールや電話帳はここまで進化した!

2012年12月03日 19時30分更新

ドコモクラウドインタビュー001

 冬モデルの発売と同時に『ドコモクラウド』として、各種サービスを展開しているドコモ。音声でさまざまな情報を引き出せる『しゃべってコンシェル』や、ストレージ上で写真を管理・分類できる『フォトコレクション』なども、ドコモクラウドの一環だ。そして、2013年1月には今まで手つかずだった“キャリアメール”がクラウド化する。これまでは端末と密接にひも付いていた「docomo.ne.jp」のメールだが、WEBブラウザーからの参照も可能にするなど2013年度上半期にはいよいよマルチデバイス対応も行っていく構えだ。

 メールと対になる存在の電話帳は、冬モデルの発売と同時にクラウド化に対応した。電話帳をサーバーにアップロードして管理できるほか、SNSとの連携も備えている。これらの新クラウドサービスはどのようなコンセプトのもとに生まれたのか、ドコモのスマートコミュニケーションサービス部 太口努氏と河内みずき氏に話をうかがった。
 

クラウド対応の『ドコモメール』なら利用環境に応じた使い分けもできます

――まず最初に、『ドコモメール』とはどのようなものなのでしょうか。

太口氏  『ドコモメール』は『spモードメール』をクラウド化したもので、来年1月以降順次対応機種を増やしていきます。また、直接クラウドと関係があるわけではありませんが、合わせて操作性と機能の向上も図っていきます。spモードメールのアプリケーションに対し、UI(ユーザー・インターフェース)をこうした方がいいなど、さまざまなご意見をいただいています。そうしたご意見を検討したうえで刷新していきます。

 (ドコモメールで)やろうとしていることは、ある程度ご想像のとおりです。キャリアメールはプッシュ的にメールをクライアントである端末に配信しています。今までは、これが端末側に蓄積されていました。一方でドコモクラウドメールでは、メールの管理をクラウドサーバー側に移します。端末側からはそのメールを同期しながら参照する、という形になります。


――クラウドの場合、端末側にはメールが残らないと圏外の時などはちょっと不便です。

太口氏 はい。ですから、クライアント側のアプリでも、ヘッダ情報だけ、本文だけ、添付ファイルも丸ごとダウンロードするといった設定ができます。これなら少なくとも圏外でも最低限のヘッダは見られる。ただし、あくまでもマスターはサーバー側。これが今までのspモードメールとの違いです。

 機種変更のとき、対応端末同士であればメールのデータがサーバー側にあるので、特殊な移行作業は必要なくそのままお使いいただけるというのがメリットです。万が一端末を紛失しても、メールはネットワーク側に残っているので安心という側面もあります。また、1台だけでなく、2台で1つのメールアドレスを使うことも可能です。たとえば、外出先ではスマートフォン、家ではタブレットというように、利用環境に応じた使い分けもできます。

 もう少し先の話になりますが、来年の上期にはパソコンのブラウザからでも、WEBメールという形でドコモクラウドメールの送受信ができるようにして、マルチデバイスの対応範囲を広げています。
 

ドコモクラウドインタビュー004
↑冬モデル端末発表会で展示していた『ドコモメール』サービス画面。サービスは来年から提供する予定。


――メールの保存容量など、スペックを教えてください。

太口氏 1人あたり1GBで、保存件数だと8万件が最大になります。他のISPやGmailなどと比べて少ないというお客様もいて、もちろん、ごく一部の方々には制限になると思っています。ただ、送受信メールは1通あたり最大10MBとなっているので、平均的な使い方であれば利用動向を見ると数年単位で使える保存容量だと考えています。

――Gmailのように、追加で容量を購入できたりといったこともできるのでしょうか。

太口氏 いまのところ具体的な計画は立てていません。基本的にスマートフォンやタブレットで使うメールなので、そこまで大容量にはならないと思っています。それでも、利用環境が変わってきて、キャリアメールでももっと容量を増やしてほしいとなるかもしれません。そういった時はどのような対応ができるか検討していきます。

――クラウドだと、メールの保存数も増えてくると思います。検索機能はどの程度充実しているのかが気になります。

太口氏 検索は、アプリの中で行います。ヘッダ情報や本文が検索の対象です。対象はクライアントにダウンロードしたものだけですが、サーバー側にもそういう機能を入れていきたい。そこが今後の検討課題です。
 

ドコモクラウドインタビュー005
↑ドコモメールの画面イメージ。絵文字にも対応している。


――UIの改善も行っています。率直に申し上げて、spモードメールはかなり使い勝手が悪かったと思いますが、それが改善のきっかけなのでしょうか。

太口氏 spモードメールについては、確かに厳しいお声をいただいている現状があり、操作性や機能向上のきっかけです。一方で、クラウド対応については世の中の動きを踏まえ、メールの利便性を向上させるために取り組んでいます。

――サーバー蓄積型というと、IMAP方式がメジャーですが、あえて独自の方式を採用した理由を教えてください。

太口氏 確かにIMAPは使っていません。ただ、プロトコルをスクラッチから作っているわけでもありません。世の中の標準的なプロトコルないしは技術を使い、シーケンス的には独自のものにしています。メールをクライアント側に取ってきたり、未読/既読の管理などのシーケンス部分が該当します。IMAPと比べても、プロトコル的、シーケンス的に重くならないような実装をしています。できるだけ信号のやり取りを少なくするというのも、独自の設計を入れた理由です。

――IMAP対応なら、ほかのメーラーを使うこともできました。WEBメール以外のマルチデバイス対応はあるのでしょうか。

太口氏 今後、そういったニーズも出てくると思います。その時に、標準のプロトコルもサポートするかどうかを検討します。今も、標準プロトコルが視野にないわけではありません。

――アプリのサイズが大きすぎるのも、spモードメールの不満のひとつです。

太口氏 そこも、よくお声をいただく部分です。spモードメールでは、おっしゃるように、アプリ本体に加えて、メールのデータも抱え込んでいます。デコメールの素材も入れたせいで、こんな容量になるのではとも言われています。ですから、ドコモメールでは、容量をそぎ落とすような形で作っていきたい、そこも重要なポイントです。

 ちなみに、spモードメールでは、外部アプリと連携する機能をスタートしています。その中でデコメを扱えるアプリもあり、外部のリソースとして使えます。この方法だと、デコメに限らず、手書きの文字をそのままメールにつけられるなど、色々なアプリが考えられます。アプリ本体に入れる機能と、外と連携する機能のバランスを考えたインターフェイスを設けました。今後、ドコモメールアプリにも、同じような形で実装していきたいと思います。


――ドコモでは、spモードメールのほかに、CommuniCaseというメールアプリも出していました。これとの住み分けは何か考えいますか。

太口氏 CommuniCaseとは、コンセプトがまったく違います。spモードメールやドコモメールは、「docomo.ne.jp」のメールを専用に使うアプリで、表現力豊かな形でメールが送受信できるようにしています。対するCommuniCaseは、マルチアカウント対応が主な狙いで、キャリアメールについては最低限扱えるだけの形にしてあります。垂直的に機能を向上させるのではなく、色々なアカウントを扱えるというアプローチでアプリを提供したわけです。ただし、ドコモとしてのデフォルトはspモードメールであり、今後はドコモクラウドメール対応も検討していきます。

――spモードメールは、プッシュ受信をするためにSMSを裏で受信しています。Androidでは別の仕組みもありますが、ドコモメールではどちらを使うのでしょうか。

太口氏 プッシュの仕組みについては、基本的に今までと同じです。瞬時に検知できるのがメリットですね。一方でAndroidには「GCM(Google Cloud Messaging)」というプッシュの仕組みもありますが、SMSプッシュを使えば即時性も十分保障することができます。

 

電話帳のクラウド化には3つのメリットがあります

――続いて、電話帳のクラウド管理についてですが概要をおしえてください。

河内氏 電話帳をクラウドで管理するというのがコンセプトで、ドコモアカウントに登録している電話帳が対象になります。来年2月、PCなどのブラウザー経由でアクセスできるようにする予定です。

 クラウド化することのメリットは、3つあります。「新しい機能が使えるようになること」、「ブラウザーからもアクセスできること」、「機種変更時のデータ移行などが簡単になること」です。
 

ドコモクラウドインタビュー006
↑クラウド化した電話帳サービス


――メリットの中にあった「新しい機能」とはどのようなものでしょう。

河内氏 1点目は電話帳変更お知らせ機能です。プロフィールを変更した際に友だちへの一括通知ができます。ただ、クラウド対応している方同士が対象になるので、サービス開始時点では本機能を利用できるユーザーは限られてしまうといった課題があります。

 もう1点がSNSとの連携です。アカウントを登録でき、友達に通知すると、相手のタイムラインにつぶやきなどが最新5件まで表示されます。SNSを積極的に利用している人は全体の3割ぐらいなんですね。残りの7割の方にもその世界をチラッとお見せして、興味を持っていただこうと考えています。
 

ドコモクラウド007
↑住所やメールアドレスが変更になった場合、クラウドに対応している友人に一括連絡ができる。通知対象者(友人)や通知項目は設定可能。
ドコモクラウドインタビュー008


――PCでの閲覧や機種変更した際の電話帳データ移行に関して、これまでもGoogleアカウントを使っていればできました。

河内氏 いままでGoogleアカウントの利用が難しいと考えていたお客様にも利用いただけるものと考えています。操作方法がわからない方には店頭ツールやコールセンターなどでのご案内も可能です。また、ドコモ電話帳アプリがほぼ全ての機種にプリインストールされていますので、機種変更後も同じ操作感でご利用いただけます。

 PCからの閲覧・編集については、UIにこだわって企画・開発を進めています。マウス操作で簡単に操作いただけるよう工夫し、名前や住所の入力では日本人が慣れ親しんでいる並びなどにも配慮しています。

 もちろん、両者は共存していくと思いますので、お客さまによってお選びいただけるようにしています。機種変更に関しても、スマートフォンからスマートフォンに替える方の中には、すでにGoogle連絡先を利用している方もいる方はそのまま利用しつづけるケースもあると思います。一方で、初めてスマートフォンを使う人やドコモアカウントとGoogleアカウントなどバラバラに登録してしまって使いにくいなどと感じていらっしゃるお客様もまだまだ多いのが現状です。そういったお客さまには、ドコモ電話帳を利用いただき、電話帳のデータ移行操作のサポートができればと考えています。

――初心者層のことを考えると、Googleとドコモアカウントという選択肢があること自体が分かりづらいですよね。ドコモの電話帳ではドコモアカウントだけというようにはできないのでしょうか。

河内氏 極力、アカウントの選択肢はシンプルにしていきたいと考えていますが、現状docomoアカウントのみにすることは難しいと考えています。
 本体アカウントに関しては、Googleアカウント以外の「その他」という扱いで搭載している端末メーカ独自のアカウントですが、選択肢をシンプルにという考えもあり、国内メーカ製の端末には基本的に搭載されていません。電話帳については、お客様サポートの観点からも極力ドコモアカウントを使っていただけるようになればと考えています。

――電話帳に限らずGoogleなどのサービスと競合している部分があるようにも感じますが、ドコモクラウドとしての強みはどこにあるのでしょうか。

太口氏 キャリアが提供しているものなので、安心感を持ってお使いいただけるということです。メールや電話帳という通信に関する情報を扱うので、責任を持って情報が漏れないよう作りこみを行っています。もちろん、他社がセキュリティー上問題があるというわけではありませんが、不安感を払しょくできるのはキャリアとしての強みだと思います。キャリア自身がパッケージとしてクラウドを提供する動きは、他社ではあまりありません。iモードで提供してきたサービス・価値などもドコモクラウドの中で提供できるようにしていきたいと思います。

 

【ライター 石野純也の目】

ドコモクラウドは、Googleやメーカー独自アプリとの共存がポイントに
 今でこそ、普通に使えるようになったspモードメールだが、アプリ内の導線などはやはりタッチパネルを前提としたスマートフォンに最適とは言えない。また、複数の端末から参照できないのも、マルチデバイスが当たり前になりつつある中、不便な仕様だ。ドコモメールの登場で、こうした不満が解消されるのであれば、素直に歓迎したい。ここまで機能が拡張されれば、従来とは違ったキャリアメールの用途も生まれるだろう。ただ、現時点で実際に動くアプリを見たわけではないため、評価は保留にしておきたい。


 電話帳についても、クラウド化の意義はある程度理解できる。一方で、Androidを使う以上仕方がないのかもしれないが、電話帳に複数のアカウントが存在し、別々に連絡先を登録できるという仕様は、ドコモの狙いである初心者層には少々分かりづらいのではないか。ソフトウェアのデザインがどの端末でも同じというのも、操作が覚えやすい半面、メーカーの工夫や個性を奪っているような気がする。実際、GALAXYやXperiaなどにはメーカー独自の電話帳アプリも搭載されているが、決してそれらの使い勝手が悪いわけではない。はたから見ると、電話帳のアップロードやパソコンでの利用は、メーカー製アプリでも実現可能に思えるだけに、両者が共存する道を探ってほしいと感じた。
 

ドコモクラウドインタビュー009
↑新端末とともに、メールや電話帳のクラウド化などサービス面での充実化にも注目していきたい。


●関連サイト
NTTドコモ

(12月3日18時30分)本文内容を一部変更いたしました。

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