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始まる違法ダウンロード刑罰化とDRM回避規制 (第2回)

ストリーミングは対象か? 違法ダウンロード刑罰化の影響

2012年10月09日 08時30分更新

 2012年10月1日から施行された違法ダウンロード刑罰化。著作権法に詳しい福井健策弁護士に、話を聞いている。前回はCDやDVDなどのディスクメディアのリッピングやコピーがどうなるのか、どんな罰則があらたに設けられたのかを確認した。今回は、わたしたちのネットとの向き合い方にも大きな影響を与える、ダウンロードについて注意すべき点を聞いた。

(1) CDやDVDなどのディスクメディアのコピーはどうなる?
(2) 音楽や映像のダウンロードなどネット利用への影響は?
(3) 録画したテレビ番組の利用はどうなる?
(4) どうしてこうなったのか? そして今後懸念されることとは?

 

【第2回】
音楽や映像のダウンロードなどネット利用への影響は?

違法ダウンロード刑罰化の影響

Q Winny訴訟も記憶に新しいところですが、ダウンロードサイトやP2Pなどのファイル共有サービスを利用すると違法なのでしょうか?

A 利用しただけでは違法ではありません。それを利用して違法にアップロードされた音楽や映像を入手すればもともと2010年から違法ですし、その作品が市販などされているものなら、今回からは刑罰の対象になります。誤解がないようにしておきたいのは、P2Pなどサービスの利用そのものが違法だというわけではなく、あくまでそこで何をやり取りしたかが問われるということです。

Q これも今回の法改正に反対する方から指摘が多い点ですが、違法アップだと知らずにダウンロードしてしまうこともありえます。合法(公式)に提供されているコンテンツなのか、そうでないのかは、どのように判断すれば良いのでしょうか?

A 日本レコード協会が発行する“エルマーク”はひとつの目安になります。ただ、まだ十分認知されているとは言えませんし、必ずしもすべての配信サイトに表示されているとも限りません。

違法ダウンロード刑罰化の影響
違法ダウンロード刑罰化の影響

↑一般社団法人の日本レコード協会(RIAJ)が発行。配信サイトのトップページやレコード(CD)音源などの購入ページ、再生画面ページなどに表示する。

 そのため現実的には、違法性の判断はある程度状況を見てするほかないでしょうし(下記Q参照)、違法と知ってダウンロードしたかの認定も、状況証拠に基づくものになるでしょう。最終的には本人の自白などに基づいて訴追していくわけですが、例えば短い期間に大量にダウンロードを行なうなど、客観的に見て疑わしい(違法性の認識があったと推定される)行為があれば、当然不利です。

 とはいえ、動画共有サイトなどには、権利者も了承して投稿されたPVなのか否かが判然としないものも多いのが実情です。そんな中、違法性の認識の部分はやはり曖昧となり、未必の故意(違法かもしれないけれど、大丈夫かなと軽く考えてダウンロードしてしまう)が認められてしまうケースや、たとえまったく違法性を認識していなくても、それを証明するのは難しく警察が認めてくれない――つまり冤罪が起こってしまう危険性も否定できません。

Q ストリーミングはダウンロードにあたらないという認識で良いのでしょうか?

A よく指摘されることですが、“ストリーミング”と呼ばれる視聴でも、一時的なデータ保存を伴うことがありますよね。それが“ダウンロード”かどうかというより、著作権法にはもともと、ストリーミングにともなうような一時的なデータ保存を許す規定があるのです(下記)。今回の改正には、そうした行為まで刑罰対象にする効力はありません。ですから、ストリーミングのためにローカルの記憶領域に一時的にダウンロードされたり、よくアクセスするサイトの情報を一時的に記録しておく“キャッシュ”のように一定期間が経過すれば自動的に消去されるような場合は、今回の処罰対象にはあたらないと考えられます。

(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)
第47条の8 電子計算機において、(中略)無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

↑別な著作権法の例外規定によって、ストリーミング視聴に伴うキャッシュそのものは認められている。

Q 結局わたしたちユーザーは何に気を付けてネットを利用すればよい、ということになりますか?

A 最低限以下の3つのことに気を付けてください。

1 当然ですが、明らかな海賊版サイト(いわゆるサイバーロッカーと呼ばれるような大量の海賊版ファイルがアップロードされているサイトなど)を利用して市販作品をダウンロードしない。

2 ファイル共有サービスで、市販の音楽や映画を検索して入手しない。

3 適法動画と判断がつく場合を除いて、動画投稿サイトから動画をダウンロードすることは避け、ストリーミングで楽しむ方が安全(なお、多くのサイトではダウンロードは規約で禁止されています)。

 たしかに、今回の改正には問題も多くありました。しかし、特に1や2の行為などネットユーザーも対処能力を見せることができなければ、もっと厳しい規制への動きが出ないとも限りません。ぜひ気を付けてください。

 

 第3回、「録画したテレビ番組の利用はどうなる?」は近日公開です。第1回はこちら↓

私的リッピングも違法!? いよいよ改正著作権法が一部施行

福井健策
●弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部 客員教授
 1991年 東京大学法学部卒。米国コロンビア大学法学修士。現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。『著作権とは何か』、『著作権の世紀』(集英社新書)、『契約の教科書』(文春新書)、『『ネットの自由』vs. 著作権』(光文社新書)ほか。国会図書館審議会ほか委員・理事を務める。

●関連サイト
http://www.kottolaw.com
Twitter: @fukuikensaku

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