2012年09月17日16時30分

想いをつなぐ編集力

セグメント化された市場と変わりゆくマーケティング

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 ここ最近、ものをつくって売っているひとびとの悩みはかなり共通しています。以前のように、普通にものをつくって、テレビや新聞の広告で宣伝をして……というのがなかなかうまくいかなくなりました。つまり、従来のマーケティングの手法が通用しなくなってきているのです。

 とくに、テレビCMや新聞広告など、数百万人単位の人々をターゲットにした広告の効き目が落ちてきています。もちろんマス広告は、多くのひとに商品やサービスを認知してもらうのにはすごく役に立ちます。自動車などのビジネスの規模の大きな商品ではまだいいのかもしれません。でも、本のような小さなプロダクトではかなりつらくなってきました。

 

■ひとつの言葉だけでは伝えられない

 では、なぜマス広告によるマーケティングが効きにくくなってきたのでしょうか? それを考えるために、昔のマス広告によるマーケティングがよく効いていた時の状態を図にしてみます。

セグメント化された市場と変わりゆくマーケティング

 単純な話で、消費者がみんな同じメディアをみていたため、CMや新聞広告でドーンと宣伝をしたら、一気にみんなに届けることができたのです。そしてもうひとつ大事なことは、それを見ているみんなの感覚も、かなりの程度共有されていたということです。だからマーケティングの際には、大勢の人に、ひとつの言葉で、伝えることができたというわけです。1980年代まではこういう時代が続いていたと思います。

 昔はメディアが少なかったから、必然的にそうなっていました。しかしその後、メディアはどんどん増え続けていきます。そして、インターネットの登場が状況を爆発的に加速させました。その結果、市場は細かなセグメントに分かれていきます。世代だったり、興味関心が同じ集団だったり、職業的な属性だったり、家族だったり、ほんとうにバラバラのセグメントがたくさんあって、個人とマスの間を雲のようにうめています。

 こんな状況でマーケティングをしようと思ったら、それぞれのセグメントに別々に語りかける必要があるわけです。

セグメント化された市場と変わりゆくマーケティング

 セグメントによって、見ているメディアも、世代も、興味関心もぜんぶ違います。だから上図のように、それぞれのセグメントに、別々の方法で、別々の言葉を使い、別々の表現でマーケティングするしかなくなりました。マスマーケティングばかりやっていても、一部のセグメントにしか届かなくないというわけです。

 じつは『もしドラ』のマーケティングの際には、これをかなり意識していました。顧客をセグメントに分けて、細かなマーケティングを積み重ねることで、読者の幅を広げていったのです。当初は20代~30代中心で、男女比は7:3で売れていた本でしたが、最終的には9歳から90歳までで、男女比も半々まで持っていくことができました(関連サイト:色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた アカデミーヒルズ)。

 

■クリエイターが自分でマーケティングする時代へ

 そして、電子書籍の場合はそれがさらに顕著になります。電子書籍のマーケティングはネット上での露出がすべてで、ネット上での顧客のセグメント化はリアル世界とは比較にならないくらい進んでいるためです。ネットではみんな、自分が好きなものだけ見ていて、興味のないことはまったく見ていません。だから、ひとつの言葉やひとつの媒体で、マーケティングするのは不可能なのです。それぞれのセグメントに適したメディアで、適した言葉で語りかけなくてはいけません。

 ちなみに『もしドラ』の電子書籍を売る際には、かなり多彩なマーケティングを試してみました。これにはいろいろおもしろいことがあったのでまたどこかで書きますが、その中でもいちばん効果があったのは、ブログメディアに取り上げていただくことと、そしてなんといってもtwitterでした(参照:『もしドラ』100万部の裏側:デジタル時代のミリオンセラーはいかにしてつくられたか?(ツイッター編) )。

 その時に確信したのですが、コンテンツのマーケティングは、クリエイター自身がやるしかない時代がくるんだろうなということです。先程も書いたように、セグメント化されたマーケットでは、語りかける言葉、届く言葉が、セグメントによって異なります。これを理解して発信できるのは、ものづくりをしたクリエイターだけなのです。津田大介さんは有料メルマガの宣伝を自分でやっていますが、あれが未来のクリエイターの姿だと思います。

 ぼくたちの会社で先日はじめた有料コンテンツ配信プラットフォーム『cakes(ケイクス)』(外部リンク)でも、この考えを取り込んでいます。

 1つ目の課題は、コンテンツ市場のセグメント化への対応です。消費者の好みがどんどん分かれていくのはもう止められません。そこでcakesでは、ログインユーザのトップ画面は、個人別にパーソナライズされて表示されます。開発チームに統計学者がいて、個人の好みに応じて、そのひとの好きなもの(好きであろうもの)が画面の上のほうに表示されるようになっています。そして、読めば読むほど学習されて最適化が進んでいきます。

セグメント化された市場と変わりゆくマーケティング

 2つ目の課題は、セグメント化された市場では、クリエイター自身がマーケティングするしかなくなるということですが、これも対応しています。クリエイターが自分でつぶやくことで購読者が増えたら、マーケティングフィーをお支払いするしくみがあります。

セグメント化された市場と変わりゆくマーケティング

 マーケティングフィーとは、要するにクリエイター限定のアフィリエイト機能なのですが、一定時間だけ読者が記事を無料で見られるようになっていたりして、クリエイターがつぶやきやすく、読者がリツイートしやすい、バイラル(クチコミ)が広がるしくみです。クリエイターがやるべきことをやれば、読者がちゃんと増えて、それに応じてちゃんともうかるということが大事なのかなと思ってつくったもので、実際にクリエイター自身のマーケティングからcakesを購読したひとの割合はかなり高くなっています。

 今回はセグメント化されていく市場と、それに対するマーケティングについてお話しました。テクノロジーと情熱を組み合わせれれば、なんとでもなる、おもしろい時代がきていると思います。ぼくらもがんばってやっていくので、ぜひご期待ください。

【筆者近況】
加藤 貞顕(かとう・さだあき)
株式会社ピースオブケイクCEO。おかげさまでcakes(ケイクス)がオープンしました。多くの人に来ていただいて驚きつつうれしく思っています。週150円なので、ぜひみなさん試してみてください。

■関連サイト
cakes(ケイクス) クリエイターと読者をつなぐサイト
cakes公式ツイッター:@cakes_PR
株式会社ピースオブケイク公式Facebookページ

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