2012年09月10日16時30分

想いをつなぐ編集力

デジタルが変えるコンテンツのかたち

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 楽天のkobo、AmazonのKindle、有料メルマガ、ニコ動のブロマガ……今年はつくづくデジタルコンテンツの販売が盛り上がる年のようです。

 ぼく自身も、前職で、本だけでなく電子書籍もつくっていました。その時の話は、こちらの記事(『もしドラ』100万部の裏側:デジタル時代のミリオンセラーはいかにしてつくられたか?(電子書籍編))に掲載されています。記事では5万ダウンロードと書かれている『もしドラ』デジタル版は、その後17万ダウンロードまでいき、同僚が担当した『適当日記』も、同じくらい売れています。

 このときは、iPhoneアプリの形をとった電子書籍でした。本をなるべく使いやすく見やすい形でiPhoneアプリに置き換えるという作業を行ったわけです(後にiPad版やAndroid版もリリースしました)。

デジタルが変えるコンテンツのかたち

 iPhoneアプリの場合は、ゲームやツールなどといっしょにApp Storeで流通することになります。本がゲームやツールなどと同じ土俵に乗るというのは「なるほど、ぜんぶ等しくコンテンツなんだ」と意識させられる出来事でした。

デジタルが変えるコンテンツのかたち

 同僚の編集した『適当日記』は、App Storeの総合ランキングで1位を成し遂げたのですが、その時の第2位と第3位は『ファイナルファンタジー』シリーズです。本の可能性と今後のコンテンツビジネスの競争の激しさの両方を、いちどに表している象徴的な話だと思います。

 

■コンテンツにふさわしいかたちと売り方

 アプリ形式の電子書籍をつくっていて思ったことは、本当はコンテンツの質とか量もデバイスにあわせて変えるべきなんだろうな、ということです。「紙の本というデバイス」に載っているコンテンツは、やはり紙の本というデバイスにあわせてつくってあるのです。

 いちばんわかりやすい例は、紙の本をデジタルに変換すると「長すぎる」と感じられることがあるということです。

 動画で考えるとわかりやすいのですが、Youtubeが普及してから人が動画に耐えられる長さはどんどん短くなっています。それまではテレビを通じて、30分とか1時間の動画を見ていたわけですが、ネットにのせるとどういうわけか我慢ができなくなります。いまでは3分以上の動画は、長いと感じるひとのほうが多いのではないでしょうか。

 ぼくは電子書籍もそうなる気がしています。実際に本をiPhoneにのせてみると、もっと短いほうがいいかもしれない、と思うことが多かったです。もしかすると、ひとは基本的には、細切れの情報のほうが好きなのかもしれませんね。長かったのは流通やデバイスの制約だったのかもしれません。

 また、売り方もまったくかわることがわかりました。アプリの場合は、ランキングにないものは存在しないのといっしょです。だからランク外になるとまったく売れなくなります。デジタルコンテンツの売り場は、広いようでいて実は狭いのです。

 宣伝もマス広告は費用対効果を考えると使いにくいですし、いちばん効果があるのはクリエイターが自分で宣伝することです。ジャーナリストの津田大介さんがTwitterでメルマガの宣伝を自分でしているのは、とても正しい行為といえます。

 

■ウェブでコンテンツを売買する時代へ

 2012年の7月にはじまった楽天のkoboも、もうすぐはじまるAmazonのKindleも、話はだいたい同じで、図にするとこうなります。

デジタルが変えるコンテンツのかたち

 koboやKindleは専用の端末で読めるようになるわけですが、しばらくは紙の本からの置き換えが進むでしょう。過去に出たコンテンツは大量にあるので、しばらくはそういう時期が続くはずです。

 とはいえ、コンテンツというのは常に新作が求められます。昔はその役割は、雑誌がはたしていました。でも、だんだん雑誌がきびしくなってきて、そういう場所が減ってきています。ぼくは編集者として、この状況に危機感を覚えています。

 クリエイターがやりたいことはじつは単純なのです。新しいアイデアをみつけたときに、ぱっと見せて、みんなに伝えて、できれば、お金にかえる。ここまで考えると、電子書籍というパッケージングされた形態よりも、ウェブのほうがいいのではないかと思えてきます。

 ウェブは、ほとんどのデバイスで読めるし、みんな慣れています。長さも、長くても短くても、なんでもいけます。コンテンツをつくるのにもお金もかからないし、つくったらすぐに発表できます。ウェブでコンテンツを売買するのが一般的になれば、コンテンツ製作の流れは以下のようになるのではないかと思います。

デジタルが変えるコンテンツのかたち

 クリエイターはコンテンツをまずはウェブで発表して、まとまった量になったら本にしたり、電子書籍にしたりするという流れです。また、場所の制約がないので、こういうこともできます。

デジタルが変えるコンテンツのかたち

 図のように、すでに本や雑誌のコンテンツとしてつくったものを、あとからウェブに掲載してお金にすることだって可能なわけです。

 ただし、ウェブには弱点もあります。ひとつは、コンテンツを売買するためのいいしくみがないということです。そしてもうひとつは、読み手の側にお金をはらう習慣がないことです。ひとはみんなウェブは無料だと思っているのです。

 ただこれは、タブレットの普及によって、そして技術的な進歩によって、変わりつつあるように思えます。そして、そして読み手の気分についても、有料メルマガが流行ってから変わってきました。問題を解決するための材料がぜんぶそろってきているのです。

 

 というわけで、じつは、ぼくの会社、ピースオブケイクは、ウェブでコンテンツを自由に売ったり買ったりするための場所をつくるためにつくりました。そうなれば、クリエイターはもっとクリエイティブになれるし、読者はもっと面白いものに出会えるようになります。

 明日、9月11日にウェブベースの有料コンテンツ配信サービス『cakes(ケイクス)』(外部リンク)をはじめます。豪華執筆陣、豪華コンテンツが集まっております。興味を持っていただいたかたは、ぜひご登録いただければ幸いです。

【筆者近況】
加藤 貞顕(かとう・さだあき)
株式会社ピースオブケイクCEO。cakes(ケイクス)の追い込みで死にかけておりますががんばります。

■関連サイト
cakes(ケイクス) クリエイターと読者をつなぐサイト
cakes公式ツイッター:@cakes_PR
株式会社ピースオブケイク公式Facebookページ

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