2012年08月06日15時00分

ARROWS Z ISW13Fは初代よりどれだけ進化しているのか? 本田雅一氏寄稿

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どれぐらい進化できているのか?
ARROWS Z ISW13F

 富士通モバイルコミュニケーションズ製のauスマートフォン『ARROWS Z ISW13F』の使用感レビューを!なんてことで、数日間だけれどやってきましたARROWS Z。ジャイアンさんによって、すでに数字としての性能は出ている(『クアッドコアスマホARROWSの最新実機でベンチマークテスト12本実施』参照)ので、僕の方は初代ARROWS ZであるISW11Fを使っていた経験から、どれぐらい進化できているのか? という視点で、主に使用感について書きましょう。

 といっても、あまりに変わっている要素、追加されている要素が多いですし、そもそもAndroidのベースバージョンが異なりますから、印象的なところを抜き出して書きますね。まずは先代モデルで不満だったポイントがどう改善されているか、次に新機能として追加されている指紋認証や、端末の揺れを検知してスリープに入るタイミングを遅らせる機能など、ISW13Fオリジナルの工夫について書き進めます。

やっとスタートラインに立てた? ハイエンドARROWS

初代機の不満はほぼ解消!
ARROWS Z ISW13F

 僕はいま使ってるau端末はHTC Jなのだけど、その直前、半年近くを一緒に過ごしたのがISW11Fでした。思えば発売前から開発、チューニングの遅れが伝わっていたのですが、それでもこの端末を選んだ理由は2つありました。

 WiMAX内蔵でおサイフ対応デュアルコアの端末として唯一の選択肢だったこと。それに発表会で、ついつい説明をしてくれているエンジニアの方々と話し込んでしまい「頑張ってチューンするなら何も言わずに買いますよ」、なんてことを口に出してしまったこと。この2つなんですが、社運を賭けて取り組むって話なんだから、Android 4.0対応ぐらいまではきちんと面倒見てくれるだろうし、最初は不具合が多くとも、どこかで改善してくれるに違いない。なんて、甘い考えをしていたからでした。

 いやぁ、結果はというとなかなかキビシイもので、世の中の評判通りに問題の多い端末でありました。特に僕が悩まされたのは、バッテリー消費の多さ、タッチ操作への応答性能の悪さ、発熱によるWiMAX停止といった問題などです。

 同社はARROWSブランドだけでなく、REGZAブランドでも何度も不具合が出ていましたし、正直「またですか……」と少々残念な気持ちになった方々も多いことでしょう。毎度お約束をキッチリこなすドリフターズのコントを見ているようでもありました。

 なんてことを書いていますが、結論から言うとISW13F。今度こそは大きな不具合、おかしな振る舞いなどなく、ARROWSブランドのハイエンドモデルに相応しい製品に仕上がっているように思います。なんていうと、どこかで“激賞してる”なんて反応もあるんでしょうが、これによってやっと“スタートラインに立った”という方が正しいでしょう。

 しかし、これでいいんです。同じスタートラインに立って、端末として過不足なく働いてくれさえすれば、オリジナルの要素で差異化だってできるんですからね。

おもなスペック

  ARROWS Z ISW11F ARROWS Z ISW13F
OS Android 2.3 Android 4.0
CPU OMAP4430(1.2GHz、デュアルコア) Tegra 3(1.5GHz、クアッドコア)
ディスプレー 4.3インチ(720×1280ドット) 4.6インチ(720×1280ドット)
メモリー(RAM) 1GB 1GB
内蔵ストレージ 8GB 16GB
カメラ 約1310万画素(インカメラ約130万画素) 約1313万画素(インカメラ約130万画素)
通信 WiMAX/3G(下り9.2Mbps/上り5.5Mbps) WiMAX/3G(下り9.2Mbps/上り5.5Mbps)
バッテリー容量 1460mAh 1800mAh
サイズ/重量 約64(W)×10.1(D)×128(H)mm/約131g 約67(W)×10.6(D)×135(H)mm/約143g

 

●バッテリー消費の具合は(おそらく)改善

 ISW11FとISW13Fを比べると、バッテリー容量が1460mAhから1800mAhに増量しているので、駆動時間が長くなったから省電力か? というと、そうでもないのですが、ユーザーから見たときは常に“使える時間”こそが重要ですから、あえてバッテリー容量の違いは無視して話を進めます(なお、両者とも初期化した上で同じGoogleアカウントを設定し、メールやスケジュールなどを自動同期させている)。

 まず確認したのは、システムの基本的な電力消費。ディスプレーはオフで待ち受けにしたまま放置して、どのぐらいバッテリーが減るのか? ですね。初期のISW11Fでは、再起動をかけて何のアプリケーションも立ち上げていないのに、グングンとバッテリーが減っていくなんてことがあったので、まずは確認……と、こちらは大丈夫のようです。

Battery Mixベンチマーク(1)
ARROWS Z ISW13F
↑右がISW13F、左がISW11F

 むしろ待機時の消費電力は下がっているのでは。少なくとも使ってないはずなのに、半日持ち歩いただけでバッテリーが半分! なんてことにはならないでしょう。実に真っ当な結果です。

 しかし、これで終わりではありません。ちょいとブラウザーやメールなどなど、いくつかのアプリケーションを動かし、終了させたうえで、再び放置するという措置をとりました。なぜなら、ちゃんとアプリケーションを終了させているつもりなのに、よく解らない理由でグングンとバッテリーが減るという経験もISW11Fでしていたからです。

 ということで、両者で同じようにアプリを動かして放置していたところ、ここは劇的な改善が施されていそう?? な感じです。ブラウザーやメールなどは、そもそものAndroid標準のコンポーネントがバージョンアップされていますから、まったく同じアプリを動かしたとは言えないので“??”です。しかし、結果だけを見れば一目瞭然。ISW13Fの安定した電力消費ペースは安心できるものです。

Battery Mixベンチマーク(2)
ARROWS Z ISW13F
↑右がISW13F、左がISW11F

 実際の“アプリケーションを使った上でのバッテリの減り感”に関しても、上記のような電力消費の安定性もあって大幅改善です。ふだん使っているHTC Jも、実利用時のバッテリー持続はかなり良いのですが、並行して使っている感覚では、同等かややISW13Fの方がバッテリー消費ペースが速いかな? ぐらい。以前は圧倒的に負けていたので、このぐらいなら問題ないでしょう。

 また、追加で画面の明るさを両者とも最高にして、アプリケーションは動かさずにバッテリーの減るペースがどのぐらい違うかもテストしました。ISW11Fの液晶はかなり電気をたくさん食べていましたから、ISW13Fになってどう変化したかを比べたかったからです。

 すると最大輝度でのバッテリーの減り方は、ISW13Fの方が10%ほど遅いことがわかりました。もっとも、バッテリー容量の違いはこの場合、無視できません。液晶ディスプレーそのものの消費電力はあまり変わらないけど、バッテリー容量が増えた分、体感としては良くなっています。

●高パフォーマンスだけど応答性は??

 次は応答性。ゲームグラフィックスなどの絶対的な性能ではなく、使っている時の感触。タッチ操作への応答性。これもISW11Fでは不満がありました。

 富士通はタッチ操作に対して指の動きを予測しながら動作させるミドルウェアが入っていて、それを根拠にISW11Fの時、指に吸い付くような操作感を実現とアナウンスしていたのですが、残念なことに製品版ではその片鱗を伺うことはできませんでした。発売直後の完成度が低いことは明らかだったので、そのうち直るだろう的に思っていたのですが、今のところは変化なし。

 ではTegra 3へとプラットフォームを変えたISW13Fでは? ということで試したのですが、確かにグラフィックパフォーマンスは上がっています。スクロールする際の描画コマ数が全く違います。ISW11Fは描画フレーム数が少ないのか、ブラウザーのスクロールがカクカクカクっと動きますが、ISW13Fはスルスルッと動きはじめ、縦方向に指を弾けばスーッとスムースに画面が流れていくので画面の大まかな内容も把握しやすい。

 ……のだけれど、指への追従性に関しては、なんら変化していないという印象です。もっとも、これは富士通が悪いというよりも、Android採用機全体の問題と言えるかもしれません。各社、いろいろ工夫をしながら応答性の悪さを改善しようとしていますが、決定版と言える製品はまだ出ていないように思いますからね。

 応答性に関してはあまり変わっていませんが、全体のパフォーマンスが上がり、スムーズなスクロールをするようになったことで、かなり快適になっています。“爆速”とか“激速”ではありませんが、現世代のハイエンド機として十分なレベルでの快適性。これなら大きな不満は出てこないでしょう。

●発熱問題はほぼ解決

 最後に動作時の発熱問題に関して。ISW11Fは熱処理の設計がうまくいっていなかったのか、冬の間でも発熱で充電が停止してしまうという現象が起きていました。充電が停止してしまうので、モバイルブースターで充電しながらテザリングを使っていると、知らないうちにモバイルブースターがオフになってしまい、本体のバッテリ残量が危機的状況に……なんてことが、何度もありました。

 ファームウェアのアップデートでかなり改善はされていたのですが、問題はWiMAX用に使っている自社製LSIの発熱が予想より多かったことが原因だったと伝聞で伺っていますが、根本的な解決は難しいかな? と感じています。

 さて、ISW13FのWiMAXが自社製チップによるものかどうか、今のところ情報は持っていないのですが、発熱の方はかなり小さい。ボディーのサイズや厚みも違いますが、それより何より、前モデルの反省があったのでしょうね。

 室温25度の環境ではISW11Fの38度に対し、ISW13Fの温度は35度。低負荷時ではありますが3度も下がっている。ISW11Fはテザリングをオンにして鞄のポケットに収納していると、温度が上昇してWiMAXがオフになるという現象が春ぐらいの過ごしやすい時にも発生していたのですが、この夏最盛期に同じ事をしても(さすがに本体は熱を持ちますが)機能が停止することはありませんでした。

 そりゃぁ、高性能なプロセッサーですから、思い切り負荷のかかるアプリをビュンビュン回せば話は変わってくるでしょうが、そもそも電池で動かすのに、そんな無駄なアプリはあり得ないでしょう。ということで、発熱問題は解決したと言っていいと思います。

●進んできたカスタマイズ、オリジナリティある機能も

 と、ここまではどちらかと言うと“後ろ向き”の話。前モデルまでは、なんだかスッキリしないデキだったけれど、今回はどうやら大丈夫そう、ということでしかありません。しかし、富士通もやっとエンジンがかかってきたのか(?)、オリジナリティーのあるユニークな機能が盛り込まれ、その中には有益なものも少なくありません。

 たとえばISW13Fだけでなく、これまでの富士通製携帯電話のシンボル的存在でもあった指紋センサー。今回の指紋センサーは電池蓋側、カメラレンズのすぐ下に取り付けられており、さらに押し込むとスリープ/スリープ解除ボタンにもなる設計です。

指紋センサはなかなか合理的な設計
ARROWS Z ISW13F

 本体を手に持って人差し指を探ると、すぐにボタンが見つかります。そのまま押し下げればスリープ解除。さらに人差し指をスライドさせれば指紋センサが指紋を読み込み、画面ロックが解除されるという、なかなか合理的な設計だと思いました。

 次に便利! なのが、センサー類を活用した“持ってる間ON”と“水平時すぐにロック”。手で端末を持っているときの微妙な揺れなどを検知し、使用していると思われる時は画面ロックが自動でかからないようにする機能です。

“持ってる間ON”と“水平時すぐにロック”が便利
ARROWS Z ISW13F

 ARROWSは省電力化のため、デフォルトの画面タイムアウトが15秒に設定されています。これでは使いにくいため、もっと長いタイムアウトに設定し直していたのですが、持ってる間ONを有効にしておけば15秒のままでも使いにくさを感じません。

 一方、ロックまでの時間を長く設定したい場合には、水平時すぐにロックが有効。この機能を使えば、水平な場所に端末を置いて5秒経過すると、タイムアウト前でも画面ロックへと移行します。

 “NX!エコ”も便利な機能です。バッテリ消費に関係するあらゆるパラメーターを制御し、その組み合わせプリセット、あるいは自由設定したものを登録したプロファイルから手早く選べるだけでなく、時間帯ごとにどの省電力設定にするかを選べるのです。

時間帯ごとにどの省電力設定にするかを選べる
ARROWS Z ISW13F

 昼間は明るい場所でよく使うから画面の明るさを確保できる設定、夜は機能やパフォーマンスは妥協しないが、画面は暗めでもOK、など、24時間のなかで2つの時間帯を決め、電力設定を変更できますし、特定のバッテリー残量になると設定を変更させることも可能です。

 さらに使い込んでいくと、カメラの起動速度が改善されていたり、カメラの画像プレビュー機能を起点に写真を共有するためのユーザ-インターフェイスが洗練されていたり、あるいはアプリ起動履歴の画面からタスクマネージャを呼び出してタスクを終了させることができたりと、ユーザーの動線を上手にキャッチアップし、細かく使いやすさを高める工夫が盛り込まれていることに気付きます。

 ハードウェアも、なかなか洗練されたラインと仕上げ、シックなカラーなど、なかなかのもの。カメラの画質に大きな違いを感じなかったのは残念ですが、ISW11Fで少なからず残念な思いをした僕でさえ魅力的に感じるものになっていました。

 ところで、新機能のうち、いくつかはISW11Fでもファームウェア更新により実装できるんじゃないだろうか? と思うのですが、富士通さん、あまりその気は無さそうですね。ISW11F発売から半年以上が経過しているとはいえ、この差はあまりに大きい。“次回も富士通を選んでもらうため”にも、ISW11Fのお客さんをもう少し大事にした方がいいんじゃないかな? ISW13Fのデキはいいのだから、ここでファンを作っておくといいのに。

 と、話が脱線しましたが、ISW13F。コイツはなかなかのツワモノですぞ。

【追伸】
 といったように、かなり好印象でスタートしたISW13Fとの出会いでしたが、エアコンをかけない暑い部屋で使っていたら、こんなメッセージが……。先代よりも、かなり発熱は抑えられてはいますが、まだ完璧とまではいかないようです。

こんなメッセージが……
ARROWS Z ISW13F

※8月6日17:53追記 Battery Mixの画像を2点追加しました。
※8月6日16:03追記 ISW11Fのスペックを修正しました。

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