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【私のハマった3冊】東電も五輪もなるようになる? ケ・セラ・セラな発言集

2012年07月29日 15時00分更新

私のハマった3冊

とんでも発言集 ただちに健康に影響はありません
ラピュタ新書
903円

足が速くなる「ポンピュン走法」DVDブック
著 川本和久
マキノ出版
1500円

寺川綾公式フォトエッセイ 夢を泳ぐ。
著 寺川綾
徳間書店
1680円

 ヒッチコックの伝記映画を撮影中だそうだが、彼の作品で印象深いのが『知りすぎていた男』(’56年)のクライマックスに流れるドリス・デイの『ケ・セラ・セラ』(なるようになる、の意)。東電の勝俣会長も座右の銘にしているそうだが、福島4号機の惨状を見ると、確かに順守しているのがわかる。

 そんな彼らの物言いを集めたのが『とんでも発言集 ただちに健康に影響はありません』。福島原発事故発生から約2ヵ月間の、政府や学者、電力会社らの発言をひたすらソース付きで掲載。ライターにはありがたい資料集だが読み物としてもかなりいける。なにしろ皆さん見事なまでのデタラメぶりで、ほとんどブラックコメディー。件の勝俣会長も3月30日の段階で「対応の遅さは感じてない」と自信満々。爆発しようがメルトスルーしようが「なるようになる」んだから、早いも遅いもないわけか。笑いながらも、だんだん頭に血が上ってくる一冊。

 クールダウン代わりに最近の趣味、早朝トレーニングに役立てている本を。『足が速くなる「ポンピュン走法」』がそれで、世界的アスリートを多数輩出した陸上界のカリスマ先生による“早く走るコツ”。私は学生時代陸上部だったが、その指導の多くがここではダメだし状態。第一章“関節で緩衝するな”から目からうろこの連続であった。百聞は一見にしかずとばかりにDVDも付いていて、実践するとホントに早くなる(体験済み)。

『夢を泳ぐ。』はロンドン五輪背泳ぎ日本代表・寺川綾のフォトエッセイ。天才型の彼女がどん底から努力一本で這い上がる物語には含蓄ある発言が多数。中でも「“負けちゃいけない”じゃなくて“負けなきゃいい”と思えばいいんだよ」にはグッと来た。今のうちにこれを読んでから五輪を見れば、10倍くらいは入れ込んで観戦できそう。

 彼女ほどの努力家が言うならば、「ケ・セラ・セラ」にも共感できるのだが。

前田有一
亀有出身の映画批評家。100パーセント消費者側に立った“批評エンタテイメント”をテレビ等で展開中。

※本記事は週刊アスキー8月7日号(7月2日発売)の記事を転載したものです。

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