2012年07月19日18時30分

東京カレー日記ii by 遠藤諭

iPad mini、私がムチャクチャ気になる別の理由

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 アップルが、7.85インチの「iPad mini」を発売するらしい。『ウォールストリート・ジャーナル』や『ブルームバーグ』に続いて、先週『ニューヨーク・タイムズ』が、今年発売されるだろうと書いたからだ。この3つがこうはっきり「出る」といったらたぶん出るのですよね、米国では。

 ニューヨーク・タイムズの記事は、いままでiPadの独壇場だったタブレット市場に、安くて小さいタブレットのニーズが顕在化してきて市場自体に動きがある。「グーグルのNexus 7の評判もよい」とか「アマゾンは「Kindle Fire」の大きいのを作っている」とか、「マイクロソフトは電子書籍でバーンズ&ノーブルと提携」といったことをあげている。

 アナリストや業界関係者の言葉を借りながら、アップルが7インチクラスを発売する理由にも触れている。いちばんまともそうに聞こえるのは、「iPad mini」は教科書ビジスネの一部としてやるという意見だ。「いまのiPadは、大きくて重いので持ち歩かない人もいる。7インチは、女性のハンドバッグに入れるにはちょうどよい大きさだ」と指摘するのは、ほかでもない元アップルのマネージャーである。

 7インチのiPadは、故スティーブ・ジョブズ元CEOが否定したサイズの製品である。「iPad mini」に関する記事は、ほとんどかならずこの経緯に触れていて、ニューヨーク・タイムズの記事では、同氏が、180度意見を変えることがあることで有名だったなどと書いている。

 しかし、どうなのだろうか? ジョブズが7インチに否定的だったのには理由があると思う。私は、「7インチはカッコわるい」からだと思う。「そんな理由ってあるのか?」と言われそうだが、同じニューヨーク・タイムズに掲載される製品でも、クルマやインテリアならこんな理屈が通るはずである。

 ただ、「7インチがカッコわるい」という理由は、それが便利で仕事に役立ちそうだからだ。ちょっと分かりにくいかもしれないが、今回の7.85インチの画面というのは対角線で約20センチメートルなので、ちょうどシステム手帳なんかの大きさに相当する。これは、アカデミズムとテクノロジーの交差点に位置する会社を標榜するアップルとしては、あまりにビジネスっぽくて似合わない。

 というよりも、7インチは手に持って使ってちょうどよいので、現実的過ぎて「何も生み出さない」という感覚がある。いささか穿った見方と言われそうだが、3.5インチや9.7インチという我慢の大きさにこそ新しいバーチャル空間への扉が隠されている。弁当箱のような手ごろな箱は、魔法に使われることはないというわけだ。

 ニューヨーク・タイズムの記事でも、音楽プレイヤーのiPodでは、ShuffleからClassicまで、さまざま形とスタイルの製品を出したと指摘している。それによって、同社は、音楽プレイヤーで世界シェアを掌握し続けることができた。今回の7.85インチiPadも、どちらかというとそちらのストーリーではないかと思う。つまり、ちょっと「白っぽい」ということだ。

 iPad miniをアップルが出す理由は、ずばり「テレビ」との関係で語られるべきではないかと思う。

 もう少しいうと、それが使われるシーンは「お茶の間」というものを半分くらい想定している。アカデミズムでもテクノロジーでもないお茶の間だから、カッコよくなくても平気なのだ。その意味では、「教科書だよ」という意見も当たっているのかもしれないし、いろいろ苦労している電子書籍事業の刺激にもなるだろう。

 いまアップルが注力していることの1つは、「iPhoneをサイフにする」ことだといわれている。そして、もう1つが「テレビをイノベーションする」ことだったはずだ。

 アップルのテレビでは、音声エージェントの「Siri」がユーザーインターフェイスとして使われるという意見がある。いわゆるスマートTVの世界では、すでに音声やジェスチャーで操作する製品が登場している。レノボのスマートTVは、顔認識をして子供が前にいるとエッチ映像が流れないなんて仕組みもあるそうだ。音声エージェントで、ほしいコンテンツを引っ張りだせたらたしかに便利そうだ。

 しかし、テレビでは、車の運転のように“Eye-Free”であることにそれほど大きな意味はない。むしろ、テレビを見ながらネットをアクセスしたり、ソーシャルメディアとつなぐことが期待されている。日本テレビのJoinTVのように、テレビ番組に「いいね!」が押せる感覚が求められている。そういうときに、「セカンドスクリーン」とか「コンパニオンデバイス」と呼ばれはじめているタブレットが重宝する。

 仲の良いディズニー(CEOはアップルの役員を兼任)は、ずばり「セカンドスクリーン」という名前のアプリを提供している。これは、Blu-Rayディスクを再生するときにタブレット側ではボーナス映像なんかが見れるというものだ。その意味では、iPad miniは、Wii Uのコントローラのようなものかもしれない。アップルは、これから「4スクリーン+1クラウド」の時代がどう変化していくのかを真剣に考えているのだ。

 4スクリーンの1つは「テレビ」で、この領域だけは、ソニーやサムスン、マイクロソフトや任天堂が、いまのところ先行して支配力を持っている。そこをひっくり返したいのが、グーグルとアップルなのだ。すべてのデバイスが「スマート化」する時代に、主要なプレイヤーが激しく競合しているのがいまなのだといえる。

 iPad miniには薄型液晶が使われるらしいから、もともと、毎日持ち歩く連中が出てくるのはカウントずみではあるとして、こういう理由で7.85インチの発売に踏み切るんではないか? “クラウド経由の端末連携”というこれからきそうなトレンドの出口として、「兄弟がそろった」という見方がいちばん冷静かもしれない。このあたり「HTML5はなぜ重要なのか?」もご覧あれ。

iPad mini、私がムチャクチャ気になる別の理由

※クウラド時代にはスマートデバイスで各社が激しく競合しはじめている。3.5インチ、7インチ、10インチのフルラインナップが必要になってくる。

ニューヨーク・タイムズ
As Tablet Race Heats Up, Apple May Try Smaller Device

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

iPad miniほかApple最新情報なら『MacPeople 12月号』

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