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東京カレー日記ii by 遠藤諭

楽しい“コンテンツ技術”集まれ!

2012年07月13日 21時00分更新

 動物の皮を張って木の棒で叩いて太鼓が生まれたあたりからず~っと、コンテンツと技術というのは切っても切れない関係にある。ニワトリとタマゴの関係に似ていて、コンテンツのための技術とそれを生かし切った作品が、より豊かに世界を表現してきた。楽器も、絵の具も、写真も、テレビも、デジタルメディアもすべて、油まみれの機械工作や、薬品の調合や、回路やプログラムの設計からもたらされたものなのだ。

 戦後間もないトランジスタラジオやカメラもそうなのだが、日本の1980年代以降の技術にはこの領域に関係するものが多かった。ウォークマンやビデオデッキ、カラオケやファミコン、プリクラや世界に先駆けてサービスした携帯電話だってそうだ。米国の技術がヘビーデューティを指向するのに対して、日本の技術はソフトウェア的な“軽み”のようなものがあると思う。

 森川嘉一郎氏が『趣都の誕生』の中で喝破している航空機の発達のお話が、私はえらく気に入っている。1960年代、英仏はコンコルドを開発、米国もボーイング2707みたいな三角翼の超音速旅客機を作ろうとした。しかし、実際は、ベトナム戦争による大量輸送需要なども手伝ってジャンボジェットのような機体で打ち止めとなった。

 そうしたハードウェアの進化を吹き飛ばすようなイノベーションを起こしたのが、'93年のANA(全日本空輸)による「マリンジャンボ」だったというのだ。小学6年の女の子の描いたクジラの絵をあしらった機体が世界の航空関係者のド肝を抜き、大きなムーブメントになっていく(「痛車」の精神的ルーツなのか?)。

 ところで、こんなお話を書いているのは、10月25日に「デジタルコンテンツEXPO」がお台場の日本科学未来館で開催されるからだ。昨年も海外も含めて2万人以上の企業や学校やメディアなどの関係者がつめかけた会場では、シンポジウムなどの催しのほかに「コンテンツ技術」が展示される。今年は、そうした技術を広く募集して“Innovative Technologies”として選び、世の中に知らしめる努力をするそうだ。

楽しい“コンテンツ技術”集まれ!!

デジタルコンテンツEXPO 2011では私も参加させていただいたシンポジウムは、ゲーミフィケーションやファブラボなどがテーマ。いまでは注目テーマの1つとして認知されていましたが昨年10月にやっていたんですね。

 コンテンツ技術というのはなにか? さっき述べたように「コンテンツ」と「技術」というのは両輪だし、実のところその距離はどんどん近づいていると思う。募集ジャンルは、以下のとおり。

Industry :特にデジタルコンテンツ分野以外の産業分野への波及・応用が期待される技術
Culture :特に文化・芸術分野への波及・応用が期待される技術
Human :特にライフサイエンス分野への波及・応用が期待される技術
Ecology :特に環境分野への波及・応用が期待される技術

 応募条件として「製品・サービスは対象としない」とあるけど、実際にはそれを成立させる技術ということになるので、これの対象範囲はとても広い。デジタル分野でおこなわれているあらゆる新しい取り組みはすべて含まれると言っていいんじゃないか? なお、締め切りは2012年7月20日となっている。

 個人的には、「それで何ができるかまだ未定」みたいなマッドだけど地道な技術なんかが見たいと思っている。技術をひっさげてお台場までやってきて、喧々囂々やれたらそこから生まれるものって多いはずなのだ。いまの時代なりの動物の皮を張って、ドンドコやりはじめた時代の感覚ってのが楽しいんじゃないかということですね。

楽しい“コンテンツ技術”集まれ!!

最近のコンテンツ技術を生かしたさまざまなデモンストレーションやイベントも行われるので公式サイトをごらんのこと。

Innovative Technologies 募集要項などのページ
デジタルコンテンツEXPO 2012公式ページ

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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