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フィンランド駐日大使館Twitter人気の秘訣 2012年上半期ネット事件簿

2012年07月02日 18時00分更新

 Twitterでは現在、さまざまな国の駐日大使館が公式アカウントの運営を行なっている。その中でも図抜けた人気を誇っているのが、駐日フィンランド大使館のアカウント、通称“フィンたん”だ。

フィンランド駐日大使館

駐日フィンランド大使館 @FinEmbTokyo (関連リンク)

フィンランド駐日大使館

↑大使館のお堅いイメージをふにゃふにゃにほぐす、ツイートのゆるふわっぷりが特徴。“もい”や“にゅっと”など、ひらがなで書かれたフィンランド語がかわいい。あざとい。だがそれがいい。

フィンランド駐日大使館

↑特に話題となったのがこのやりとり。アニメ『ストライクウィッチーズ』には、フィンランド戦時中の英雄をモチーフとしたキャラクターが登場し、巨乳+パンツ姿(※ただし公式キャッチフレーズによれば“パンツじゃないから恥ずかしくないもん!”とのこと)で戦っている。この事実を知っているかという質問に対し、フィンたんは“全て把握しております”と謎の迫力に満ちた短文を返した。これを見たネットのアニメファンは、“やばい、国際問題になる……”、“フィンランド大使館、いったい何者なんだ……”と色めき立った。

フィンランド駐日大使館

↑お笑いコンビ・ハリセンボンの近藤春菜さんが、フィンランドのタルヤ・ハロネン前大統領と激似というツイート。確かに。ということは角野卓造さんとも似てないとは言い切れない。ぜひハロネン前大統領に“カドノタクゾウジャネーヨ!”とキレて頂きたいが、それこそ国際問題になりそうだ。

 

 週刊アスキー8月7日増刊号(7月2日発売)の特集『2012上半期ネット事件簿』では、この話題の人物、“フィンたん”に直接インタビューを試みた。東京は南麻布にあるフィンランド大使館に赴いたが、残念ながらフィンたんは“オーロラの向こう側”の存在であり、国家機密ゆえ面会することまかりならぬとのこと。しかし、フィンたんの代弁者(だと取材班が勝手に判断した)である広報部や参事官のかたがたから詳しい話を聞くことが出来た。

──Twitterを始めたきっかけは?

 Twitterのアカウントを取ったのは2011年の頭ごろですが、テスト的に取っただけだったので、フォロワーは5人くらい。テスト中に東日本大震災が起こったため、Twitterでも急きょ、Facebookで掲載した危機情報のフィードを流すようにしました。

 今のような運営を本格的に始めたのは、2011年の11月です。その頃はとくに愛称もなく、“駐日フィンランド大使館 ”という名前そのままだったんですが、ある日、NHK広報局(@NHK_PR)のかたが“フィンたん”と呼んできて……(笑)。それがフォロワーの皆さんにも浸透して、いつの間にか公式の愛称になっています。こういったインタラクティブなやり取りが、Twitterの素敵なところですね。皆さんに育ててもらう、というか。

──やはりまず、『ストパン』の件を伺いたいのですが?

 先日、『ストパン(ストライクウィッチーズ)』の島田フミカネ先生と対談させていただき、その内容をフィンランド大使館のサイトに掲載しました。その際、上映中だった劇場版の告知もしたのですが、これは別に出版社さんからお願いされてやった“ステマ”ではありません(笑)。もともと、フォロワーのかたから、“こういうフィンランドの英雄をモデルにしたキャラが出てるけど、知ってる?”と聞かれて、“全て把握しております”と答えたところから一気に広がったという偶発的なものなので。ある程度話題が広がったところで、私どものほうから出版社さんに連絡を取らせていただいて、対談に応じていただきました。

フィンランド駐日大使館

↑『ストライクウィッチーズ』原作者、島田フミカネ氏との対談を公式サイト(関連リンク)で公開。書き下ろしイラストも掲載され、ファンの間で話題となった。

──ほかに印象に残っている出来事はありますか?

 Twitterでだいたい7ヵ月間運営してきて、フォロワーさんが増えるきっかけになった出来事というのはいろいろありますが、特に印象に残っているのは……たとえば“にゅっと”ですね。フィンランド語で“なう”と同じ意味の“にゅっと(nyt)”という言葉を紹介して、“なう”の代わりに使うようにしたんです。“朝食なう”ではなく“朝食にゅっと”、のように。予想以上にたくさんのかたに使っていただき、フィンランド大使館のTwitterを知っていただくきっかけになりました。

 あとは、3月に“スオミネイト”というキャラクターのイラストコンテストもやりました。“スオミネイト”とは、フィンランドの国土の形を女の子になぞらえた、いわゆる“擬人化キャラクター”で、もともとフィンランドで伝統的に存在していたものです。この“スオミネイト”をTwitterで紹介したところ、フォロワーの皆さんから大きな反響がありました。さらに2人のフォロワーさんからは“スオミネイト”のイラストを送っていただいて、それではもういっそ、コンペにしよう、と。そういった経緯で“スオミネイト”のイラストコンテストを開催し、35通のご応募をいただきました。このコンペはフィンランドでも新聞の記事になり、入賞作品などの展示会も開催されています。フィンランドの代表的なキャラクターが日本に紹介され、そこで日本の皆さんの力によって現代風にアップデートされ、フィンランドに逆輸入されるという、とてもおもしろい現象になりました。伝統的な見方からすると、少しセクシーすぎるものもあるという意見もありましたが(笑)。

フィンランド駐日大使館

↑フィンランドで古くから伝わる“スオミネイト”のイラスト。国土の形を女の子になぞらえている。フィンランド人は自分のいる場所を、スオミネイトの体の部分にたとえ“左手あたり”というように説明するという。

フィンランド駐日大使館
フィンランド駐日大使館
フィンランド駐日大使館

↑“スオミネイト”イラストコンテストの入賞作品。フィンランド大使館の公式サイト(関連リンク)で確認できる。

──日本とフィンランドは何か似ているような感じがします

 ここまでフィンランド大使館のTwitterを受け入れていただけた背景には、日本とフィンランドの相性の良さがあると思います。“もい”や“にゅっと”など、フィンランド語はひらがなにするとなぜか、日本語でかわいらしい印象になります。もともと発音に似ている部分があって……“ウニ”はフィンランド語で“夢”という意味ですし、“モノ”なら“スキーブーツ”、(インタビュアー岩倉の名刺を見て)……失礼ですけど、“クラ”は“泥”です(笑)。こういう同音の異義語は、挙げていけばきりがありません。こういった日本語とフィンランド語の関係はフィンランドでは有名で、おじいさんおばあさんも知っています。若い人たちは日本のマンガやアニメが好きなので、もっと詳しいです。アジアの言葉では日本語が一番人気がありますね。中国語よりもです。

 言葉に限らず、フィンランドと日本には似たところがいっぱいあります。フィンランドは“ヨーロッパの日本”と言われてるくらいなんです。ちょっと静かな人々で、“技術屋”と思われていて……デザインの“味”も共通しています。自然を大切にするし、サウナ・温泉が好きだし……。とにかくいろいろあります。ロシアを挟んで“隣の隣”と言えば、確かにそうなので(笑)。ただ、ロシアもビジネスや観光で大切なパートナーですが、“心の距離”で言えば、フィンランド人にとっては日本のほうが近いと言っていいと思います。約束したら守る、という日本のイメージも、フィンランド人から共感を得ていますね。

──今後もTwitter上で何か行なう予定などありますか?

 今後も、何を計画中とはヒミツなので言えないのですが、これまでにやってきたこととは違うことをやっていければと考えています。“フィンたん”のTwitterともども、フィンランドをよろしくお願いいたします!

■関連リンク
フィンランド大使館、東京

※記事初出時、本文の位置が間違っていたのを修正いたしました。関係者の方々にご迷惑をおかけしましたことをお詫びして、訂正いたします(2012年7月3日22時)。

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