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【私のハマった3冊】生き辛い子どもたちを穏やかな目線で描いた優しい3冊

2012年06月25日 13時00分更新

私のハマった3冊

円卓
著 西加奈子
文藝春秋
1300円

ペンギン・ハイウェイ
著 森見登美彦
角川書店
1680円

ポニーテール
著 重松清
新潮社
1575円

 集団に埋没できない“体質”故に、自分も周りも辛い痛みを持つ子どもの小説を最近よくみかけるのですが、こんなすてきな角度からのお話もありました……。

『円卓』のこっこは“凡”を厭う破天荒な小学生。人と違う自分、孤独な自分であることを願う彼女の憧れは、ぽっさんの吃音、朴くんの不整脈、ゴックんのボートピープル。その独特の感性のために誤解されたりもするけれど、家族にかわいがられ、クラスでもしっかり居場所を持つ彼女の関西弁炸裂話は優しい&おかしい&元気が出る!

 そして、『ペンギン・ハイウェイ』のアオヤマくんは「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。だから、将来はきっとえらい人間になるだろう」とノートに綴る4年生。なんでも真正面からものごとを見ちゃう子って、親としては心配でたまらないはずなのに、息子をゆったり受け止めている両親が実にいいんですよ。クラスでの浮いてる感は否めなく、実際小さないじめを受けてたりもするアオヤマくん。でも、それを本人が深刻なものとしては認識していないところに作者の思いを感じます。同じ匂いのする友だちはいるし、魅力的なおっぱいの歯科衛生士のお姉さんは不思議な世界を次々に見せてくれるし。うん、アオヤマくん、あなたの毎日が楽しくて私もうれしいよ!

 最後は、連れ子再婚夫婦の小さい妹・フミの目線から語られる『ポニーテール』。新しい姉と仲良くなりたいフミのかわいい気持ちをそっけなく退け続ける姉、マキ。でもマキのこだわりの強さがもたらす生き辛さ、外世界との軋轢が徐々に見えてくる中、「うちの子はいい子です!」と言い切る母には涙です。しかも、自分との折り合いを大人になったマキは穏やかな形でつけて生きていくんだね、というもっていき方は重松節絶好調かと。

 自分も人もふっと好きになれちゃう優しい空気を運んでくれる、私の大事な3冊です。

じゅん
書評コミュニティー『本が好き!』(外部リンク)レビュアー。娘2人、猫2匹、夫1人の新潟のお母さん。特技・雪かき!

※本記事は週刊アスキー4月17日号(4月3日発売)の記事を転載したものです。

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