2012年06月14日13時00分

東京カレー日記ii by 遠藤諭

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

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「コロンブス指数」というのをご存じだろうか? 慶応義塾大学教授の増井俊之先生が提唱したもので、次の式で求められるものだという。

コロンブス指数 = インパクト ÷ シンプルさ

これに対して、私が一昨年「軍平ナイト」というイベントで提唱させてもらったのが「横井軍平指数」である。いうまでもなく、ゲームボーイの生みの親、横井軍平氏の名前を勝手ながら使わせていただいたもので、次の式で求められる。

横井軍平指数 = 楽しさ ÷ シンプルさ

いくらアメリカ大陸を発見しようが、コロンブスの玉子を立てようが、「楽しさ」のほうが一方的でない広がりがある(ちなみに、コロンブスはコロンブスの玉子を立ててないんですけどね=建築家ブルネレスキのエピソードが間違って伝えられ日本では教科書にのって広がったものなのだ)。横井軍平氏の功績の中でも、私が言いたいのはゲームボーイやゲームウォッチより前に作った「ウルトラハンド」や「ラブテスター」などの不思議なオモチャの数々だ。詳しくは以下のレポートの動画をご覧アレ。

軍平ナイト! (第一回)
http://blogmag.ascii.jp/tokyocurrydiary/2009/12/post_155.html

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

WiZの「アプベースボール」。最初は私もなんとなく箱から出してみたのだった。

というわけで、横井軍平指数がビビビーンと高い商品に出会ったのでこのコラムを書いている。すでに発売済みの商品なので「そんなの知っているよ」という方も少なくないと思うが、私の感動に免じてお付き合いいただきたい。それは、昨日、『マックピープル』編集部を通りかかったら見つけた「アプベースボール」という商品である。

ご覧のとおりの「野球盤ゲーム」なのだが、中にiPhoneやiPod touchを入れて遊ぶようになっている。発売元は「WiZ」という会社で、いままでにも電車の車窓の風景をiPhoneで楽しめる「車窓満喫 踊り子号の旅」という抜群のセンスを感じさせる商品を発売してきたのはこの会社だった。「アプリズムという遊びズム」などとキャッチコピーしているので、ご興味のある方は同社サイトからどうぞ(http://www.wizinc.co.jp/applism/)。

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

本体手前にiPhone4、4S、3GS、iPod touch(4G)をセットして遊ぶ。

そもそも、私は、エポック車の野球盤の世代である。いまでも家に野球盤が1台あるし、国産のLEDモノ、定番のMATEL ELECTRONICSの「BASE BALL」、任天堂のテレビ野球専用ゲーム機なんてのも所有している(ここ単なる自慢ですね)。ちなみに、「東京おもちゃショウ」で発売元エポック社のブースで展示されたりする初期バージョンの1つ(非常にレアだとされている2代目)は、私が、同社に請われて日本最初の家庭用テレビゲーム機「テレビテニス」と交換したものである。

さて、そんな私の心もときめかせたWiZの「アプベースボール」だが、何が素晴らしいかというと原理が素晴らしい。iPadの上に小さな駒や自動車のオモチャをタッチさせて遊ぶゲームは海外ではいくつも発売されている。しかし、この野球盤のような仕組みの製品は私はこれしか知らない。しかも、2人でピッチャーがエイっと投げて、バッターが物理的なバットを振ってプレイするというのが野球盤そのものだ。

ところが、これの原理、社内の何人かに問いかけてみたのだが1分以内に分かった人はいない(私は割とすぐに気がついたんですけど=実物に触りながらですからね)。

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

どんな原理で動作するのか? 「分からない」、「分からん」、「分かりません」・・・。裏を見るとボタン電池のフタと電源スイッチが・・・。バットを振るとホームボタンが押される仕組みとか、ボールを投げると液晶画面をタップされるとかいう物理的なカラクリではないようです。1分で分かった人ほとんどいない・・・。

なにしろ、これはiPhoneのドックコネクタに接続する必要があるわけでもないし、Bluetoothで接続しているわけでもない。ましてやいまどきのクラウド経由でデータをやりとりしているなんてこともない。それでも、ちゃんと球種を5種類から選んでボタンを押せば投球、バットを振れば「ヒーーーット!」、「大きい、大きい、大きい」、「ホーーーーームランッ!」なんてことになる。

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

結構エキサイトします。しかも、iPhoneゲームだけあって音声もバッチリ。深夜のオフィスに歓声がこだまします。

いやいや楽しい。なぜが本当に大の大人がやっても楽しい。 『マックピープル』編集部には「明日には返す」と言って借りてきたけど、バッくれるか・・・?

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

画面の中からほんのちょっと飛び出しただけでこんなゲームでもここまで楽しくなるとは、これがユーザーエクスペリエンスというものでしょうかねぇ?

原理がシンプルだと分かっているからこそ楽しいんですかね。やはり、横井軍平指数はかなり高いものと思われます。などと、話を引っ張りすぎてもいけないのでバラしてしまうと、投球したり、バットを振ったりすると、本体の中でLEDが光るようになっていて、iPhoneのカメラがそれを見て動作するのだった。「光」というあたりが、これまた「光線電話LT」(懐中電灯の光を使って会話する電話機)なんかを作った横井軍平感覚というものでしょう!!!

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

iPhoneをセットしたカメラの位置にLEDがセットされていて、投球ボタンやバットを振ると点灯するのが見えます。この種のカメラを使ったコントロールではニンテンドーDSとPSPとほぼ同じ時期に無謀にも発売された英国のGIZMONDOというポータブルゲーム機でテレスコピックモーションセンサーという技術がありましたが・・・こっちは、より大雑把な画像認識とかそういうのではない方法で制御しているものと想像されます。

「シンプル=安い」というオモチャの原則にのっとっているところが、「コロンブス指数」ではなく、あえて私が「横井軍平指数」を提唱したくなった理由かもしれない。そして、「楽しい」ということがそれを体験した人の一生に計り知れない価値を生じせしめる可能性がある。ちなみに、そんな横井軍平氏の作品で、私が、いちばん愛してやまないのが「ラブテスター」。

私が所有するこのラブテスターくんは、数年おきにテレビ番組の出演依頼があり、落合博満・信子夫妻、谷隼人・松岡きっこ夫妻、林家ペー・パー子夫妻の「ラブ度」を計測したこともある(これらは『トリビアの泉』でやったのだが林家ペー・パー子夫妻のラブ度は20くらいでかなり低かった)。そのラブテスターとアプベースボールをなんとなく重ねて写真を撮ってみたくなった。

「横井軍平指数」の高いiPhoneゲーム

横井軍平指数の高さを祝って、任天堂の歴史に残る秀作にして横井軍平の代表作「ラブテスター」と記念撮影。

なぜアスキー総合研究所の所長が、ここでこんなテーマで力説しているんだと、調査・コンサル料を払っていただいている大企業の方は思われるかもしれない。そうではないのだ。こういうクリエイティビティこそが日本のいまを作り出してきたのだ。この製品には、下手な発想法のセミナーを受ける以上のものが凝縮されている。

ちゃっかりした転用、誰の頭の中にもある普遍性、それっぽく見せる変形・・・など。1990年頃に、ちょっとGDPで世界第二位とかになったから勘違いしただけではないかと思うのだ。現に、ラブテスターの成れの果てともいえるゲームボーイは世界で何億台も売れた。ゲームボーイの大人版がiPhoneで、ウォークマンのコンピュータ版がiPhoneなのだ。

少なくとも、このアプベースボール、昭和30年代生まれのいまどきの一部上場企業の経営層に「ゲーム接待」で使える商品ですぜ、旦那!!

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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