6月は世界を占うシーズンだ。
世界最大規模のコンピュータショウ「Computex」(5~9日)、ゲーム関連の世界最大のショウ「E3」(5~7日)、アップルの「WWDC」(11~15日)、グーグルの「Google IO」(27~29日)と立て続けに開催されるからだ。というわけで、これはデジタル業界での話だが、いまや生活の中にデジタルは必須だから「世界を占う」というのもあながち間違った表現ではないかもしれない・・・。
「PC」、「電話」、「テレビ」、「ゲーム機」といったデバイスが、家族合わせのようにクロスして、新しいフォーメーションを組もうとしている。これらに「タブレット」や「電子書籍」、「映画」や「STB」なども加わって、製品やサービスを提供する会社も入れ替わったり飛び越えたりしている。アップルがテレビを発売するというし、Facebookもスマートフォンを開発中だそうだ。グーグルもAndroidの次期バージョン「jelly bean」搭載の自社ブレットを投入してくる。たとえば、下の図は、米国のテレビを取り巻く世界の混沌ぶりを示したものだ。
図1 米国の家庭のエンターテインメント環境はテレビを中心に激しく変化している(OTTというのはPCでのネット映像の視聴のこと。米国ではそれらに次ぐ動画のインフラとしてゲーム機への配信はすでにかなり行われているが)
任天堂のWii Uの発表内容は、まさにそうした状況に応えたものといえる。週刊アスキーPLUSでも「Wii U GamePadの詳細判明! 新たなゲームの遊び方を提案する任天堂 :E3 2012」とレポート。注目の「Wii U GamePad」は、「INTGRATED SECOND SCREEN」を標榜。「ゲーム」、「ソーシャル」、そして「エンターテインメント」すべての入り口になるとプレゼンテーションされたそうだ。
最大の注目点は、その「Wii U GamePad」と名前を与えられたコントローラデバイスだろう。これは、スマートテレビにおける「セカンドスクリーン」(あるいはコンパニオンデバイスと呼ばれる)を、先取りするものといえる。次に、同社のソーシャルネットワークとなる「Miiverse」。それから、 Netflixやアマゾン、YouTubeやHuluなどの動画配信も楽しめる(米国にいないと実感は乏しいがこれだけのラインナップの映像を手元でサクサク選べて楽しめるのはよさそうだ)。
Wii Uは、「まさに任天堂!」という感じで、ファミリーとリビングのこれからのために生まれてきたデバイスなのだろう。本来、Wiiがめざした世界をネットの世界の環境変化にあわせて再定義したというべきか。その評価は今年末に発売されてからで、とくにソーシャルな部分はユーザーの判断を待つしかない。しかし、まずはターゲット層をどれだけ取り込めるかがカギとなるだろう。この点について、アスキー総研のデータがあるのでご紹介しておきたい。
図2 Wii Uの購入意向者の性年代別に占める割合
「1、2年以内に欲しい」と応えている人のその世代に占める割合では、なんといっても10代前半の男女がともに高いことがきわだっている。これは、父親・母親が買いやすい製品にしたい任天堂にとってはグッドニュースだろう(今後さらに認知も進むだろう)。参考までに、以下に、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation Vita」の購入者・購入意向者を示す(発売後ということもあり数値としてこちらが大きい=グラフではスケールが異なる点に注意)。これにはいくつかの理由が考えられるが、20代男性が中心の分布になっている。
図3 PlayStation Vitaの所有者+購入意向者の性年代分布(グラフのスケールが図2と異なる点に注意=条件も異なるが数値としてはこちらのほうが大きい)
E3のレポートでは、英国BBCの番組『Click』なんかを見ると、任天堂、マイクロソフト、ソニーのほかに、クラウドゲームの「Gaikai」を大きく取り上げていた。これは、「スマートテレビ」をターゲットにすえたもので、お茶の間の最大のエンターテインメントセンターであるテレビでは、やはり「ゲーム」が重要なキーワードになるということだ。任天堂が、テレビ(放送)との関係をどう考えているかは是非とも聞きたいところではある。とくに日本では、いまのところ肝心のゲームのほうが重要というのは真なのだとは思うが。
お茶の間のテレビが戦場になってきている以上、アップル対ニンテンドーなんてことになったりすることもありうるわけだ。それって、アップルとディズニーは親密なので(ジョブズ以降もディズニーのCEOがアップルの取締役を兼任、配信でも早くから協業している)、最終的には「マリオVSミッキー」という図式になってくるかもしれない。まるで別のフィールドであるかのように無視しあって戦いにならない可能性もあるが。
アスキー総研では、Wii Uの購入意向者がプレイしているゲームタイトルや好きなキャラクター、好きなテレビ番組や映画、ネットの利用状況やライフスタイルなどと合わせた分析データを提供できる。また、全国約3000店舗のゲーム機とゲームタイトルの販売データである「電撃便」の販売もしているので、ご興味のある方は、アスキー総研の公式サイトからお問い合わせいただきたい。
アスキー総合研究所(http://research.ascii.jp/)
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭
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