2012年05月03日21時00分

引越し記念! よりぬき東京カレー日記(14)

文豪トルストイはソロバン発明者

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 しばらく前から欲しいと思っていたロシア式ソロバンをゲットした。モスクワ市内にあるイズマイロボという土産物&アート市場みたいなところに売っていた。見てのとおり珠の数も10個ずつ(1桁だけ4個)の巨大なソロバンである。日本のソロバンとは趣向が異なると思いきや、木枠の中に珠のあるソロバンは、日本と中国とロシア式しかないらしい。それにしても、これって小学校の「数のおけいこセット」で使うもんみたいと言われそうなのだが。どっこい、ロシアをなめてはいけない。意外にも使い勝手がいいらしい……。

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 途中4個しか珠のない桁があるが、その上の桁が1桁目で上に向かって、十、百、千、万、十万、百万、一千万の桁となる。「ご破算では」の状態はすべての珠を右にやる。日本のソロバンでは、5になると上の珠(五珠)に繰り上げるが、それってロシア式では5個目までが左に行っている状態。これって、同じようなもんじゃないか? 実は、5で1つ繰り上がる計算法は、日本と中国の専売特許と思われがちだが、ギリシャの「サラミス算盤」まで遡る。ロシアのソロバンも、5で繰り上がる発想が珠の色変えに現れている。それでも、10個も珠があったらいかにも軽快に使えないように見える。ところが、『ロシアソロバンのルーツを求めて』(創栄出版刊、小林俊之著)を読んでみるとそうでもないのだった。

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 ロシアでは、子供が算数を習うとき、「1足す4は5」と一緒に「5引く4は1」も覚えてしまうのだそうな。実は、これが体感的にできるといろいろいいことがありそうだ。当然のことながら、合計が10になるような補数も体感的に覚えてしまっている。7+8を計算するとき、ロシア人の脳みその中では8の補数である2がイメージされている。何も考えずに7から2を引いて十の位に1を桁上がりさせる。日本人は、この計算、案外と手間がかかるのではなかろうか? 98+76の場合なら「十の位の9より7の補数である3をとって百位に1をおいて、1位の8より6の補数である4をとって十位に1を加える」なんてことがすんなりできる(答えは174)。これが、そのままロシア式ソロバンの操作となる。やってみると分かるが、これがなかなかである。

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 ところで、途中に4個しか珠がない桁があるのはなぜか? 写真のソロバンの看板(ロシアのオロナミンCやボンカレーの広告みたいなもんですね)を見ても、1桁だけ4個しか珠がないから(よく見えないかもしれませんすいません)、私のロシア式ソロバンだけが壊れているわけではない。これは、小数点の区切りの位置を表すとともに、2分の1、4分の1などに使ったりするらしい。要するに、英語でハーフとかクォーターを頻繁に使う感覚。きっとロシア人は、なぜ中国や日本のソロバンには、この4珠の桁がないのだ(便利なのに)と思っているに違いない。そして、それより下の3桁は、上1桁はルーブルの下のカペイカ(100カペイカ=1ルーブル)に使ったり、単位重量あたりの値段をおいたり、臨機応変に使う。まさか、この3桁を指数部にして浮動小数点演算する人はいないと思いますが……。

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 ということで、なかなかあなどれないロシア式ソロバンなのである。しかし、「こう大きくてはソロバン独特の素早い計算ができないでしょう」という指摘もありそうだ。たしかに、そうなのだが以下の考察を御覧あれ(http://blogmag.ascii.jp/tokyocurrydiary/2006/03/1940.html)。日本人がモーレツな珠算の世界に突入したのは戦争がきっかけのようなのだ。ちなみに、ロシア式ソロバンといえば、文豪トルストイが作ったという説がある。しかし、前述の『ロシアソロバンのルーツを求めて』によると、トルストイの考案したソロバンは、3種類の珠の大きさのあるこれはまた違った代物らしい。とはいえ、『人生論』を書く傍ら、ソロバンの設計図とかも書いていたとしたらちょっと楽しいでしょう。

※最後の2枚の写真はソロバンをゲットしたイズマイロボのなんでも市場。奥に行けばいくほど深い味わいがあります。案内してくれたお魚関係のHさん、旅行関係のMさんありがとう。

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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