2006年09月10日04時00分

引越し記念! よりぬき東京カレー日記(5)

鉱石ラジオとアインシュタイン

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 テーゲル空港からベルリン市内に向かうタクシーの運転手が、「日本なら街には古い建物はないだろう?」と聞いてきた。日本が、戦争のときに全部焼け野原になって、それ以前の建物がなくなったのだと思っているようだった。

 たぶんベルリンも、ほとんどの建物が空襲で瓦礫と化したのだと思うが、IFAの会場には、空襲でも破壊されなかった鉄塔が立っている。ラジオ放送のためのものだから標的になっても不思議ではなく、実際のところ爆弾が命中したのだが倒れなかった。

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 6日間にかけてIFAというイベントのためにベルリンに来ていた。IFAというのは、1924年に「大ドイツ放送展」として始まったという由緒正しきエレクトロニクスの見本市である。IFAの資料によると、第一回の主要展示品は「鉱石ラジオ」や「真空管」だった。たしか、第一回の開催にあたっては、アルバート・アインシュタインがやってきたとあったと思う。

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 エレクトロニクスの見本市、鉄塔、アインシュタインときて、ちょっと出かけてみたくなった。巨大な蟻塚のようなIFA会場を3日かけて30%ほど攻略したので、早引けして「アインシュタイントゥルム」(Einsteinturm=アインシュタインタワー)に行くことにした。会場の外で、列を作って待っているタクシーに乗り込むと「ポツダムに行きたい」と伝えた。

 ポツダムは、車でベルリン市内から50分ほどのところにある緑の中の街である。目的地は、ここの山の中にあるという「ポツダム宇宙物理学研究所」(Astrophysikalisches Astrophysikalisches Institut Potsdam)、そこに「アインシュタイントゥルム」という建物があるはずなのだ。

 ネットで確認した住所までいくと、そこは、研究棟しかないところで「アインシュタイントゥルムは別の山のほうだよ」と言われる。ホームページを、後でよく読んでみると確かに別のところにあって行き方まで書いてある。教えてもらった住所は、以下なのでご参考まで。

研究施設
Ander Sternwarte 16

観測施設
Telegrafenberg A 22

 ようやく現地に到着、ちょっとした丘陵地全体が、観測施設の集合体のようになっているらしい。入り口の門のところにいる係員に「アインシュタイントゥルムに行きたい」と伝えると、地図を示しながら「道を間違えなければ5分でつくよ」と教えてくれた。親切な人だ。

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 それにしても、ハイキングコースのような道を曲がったり登ったりしながら歩いていくと、古くて立派なドームの付いた天文台のような建物や、時代によるのか金属製の水道タンクのようなドームもあったりする。これらを見て回っているだけでも、十分に、楽しい時間が得られそうだ。もっとも、いまも立派に研究のために使われているから私のような観光客なんか中に入れてくれないだろう。

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 「アインシュタイントゥルムはこちら」の道案標識に従って行くと、いきなり下り坂になっていてグンと視野が開けた。真ん中に、遊園地の恐竜を真似た建物のような感じのアインシュタイントゥルムが見えて、四方は緑に囲まれた広場になっている。坂を下りていくと、薄く黄色に塗られた、アインシュタイントゥルムの不思議なカーブを描いたデザインが目の当たりとなる。土曜日の昼間なのだが、私のまわりに誰もいなくって、本当に独り占めしていいのか?

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 アインシュタインは、1914~1933年にかけて、ベルリンとポツダムに暮らしたそうだ。この建物は、1920年代のはじめに相対性理論の証明のために作られたものである。太陽の重力場によって恒星からの光が曲がることを観測しようというものだったが、実際には観測に成功しなかったらしい。

 それにしても、やさしいクリーム色をしているので、アイスクリームにしてペロリと舐めてしまいたい衝動にかられそうになる。第二次世界大戦中に空襲の被害を受けたが、1997~1999年になって修復されたものである。

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 建物のまわりをグルグルと回って、広場に置かれたベンチに座っていると、聞こえてくるのは風が木々の葉をなぜて鳴っている音だけである。天気が、ちょっと中途半端に青空が少し透けて見えるくらいの雲がビッシリ広がっていて、なんだか模型の中にいるような気分になってくる。ちょっと出来すぎなのだが、森の中からウサギが出てきて、しばらくピョンピョン跳ねたあと森の中に消えていった。

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 ところで、昨年のIFA会場では「アインシュタインイヤー」のミニブースがあった。特許局員だったアインシュタインが「特殊相対性理論」を発表したのは1905年。それから100年が経過したのを記念して国連が「アインシュタインイヤー」と決めたからだ。

 アインシュタインの「特殊相対性理論」よりも10年ほど経過したころに、人々は大ドイツ放送展で鉱石ラジオの展示に集まっていたことになる。

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【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
アスキー総合研究所所長。同研究所の「メディア&コンテンツサーベイ」の2012年版の販売を開始。その調査結果をもとに書いた「戦後最大のメディアの椅子取りゲームが始まっている」が業界で話題になっている。2012年4月よりTOKYO MXの「チェックタイム」(朝7:00~8:00)で「東京ITニュース」のコメンテータをつとめている。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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