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ソフトバンクも仲間はずれじゃない? キャリア絵文字統一化の背景

2012年04月18日 18時58分更新

石野純也氏寄稿! 3キャリア絵文字統一化の背景と今後の課題

 KDDIは、夏モデル以降の全端末(フィーチャーフォンも含む)とアンドロイド4.0にアップデートする既存端末に内蔵される、絵文字のデザインを刷新すると発表した。新しい絵文字は単色で、通常の文字の延長を意識したシンプルなもの。表情などの一部は、ドコモが採用する“i絵文字”と完全に同じデザインになる。

 また、テレビや新幹線の絵文字には、時代の移り変わりを反映。テレビには薄型テレビが、新幹線にはN700系を意識した車体が採用されている。647種類存在するすべての絵文字がリニューアルの対象になっているが、文字コード自体は変わらない。あくまでデザインのみ変更で、旧絵文字が送られてきた場合、単純に端末側で新絵文字に置き換えられる仕組みだ。逆の場合も同様となる。

石野純也氏寄稿! 3キャリア絵文字統一化の背景と今後の課題
↑表情豊かなau絵文字の愛用者も多い。ニーズに応えるため、旧絵文字はデコメ用画像として残す。

 auの絵文字はカラフルで表現力豊かなのがウリだった半面、他社に送った際に意図と違う変換がされ、ニュアンスが伝わりづらいこともあった。たとえば、以下の例のように、同じ顔でもauでは“鼻息が荒い”と表現したつもりが、ドコモだと“歯を見せて笑っている”ような顔になってしまう。auのユーザーが怒っていることを表わすためにメールしても、ドコモのユーザーにはその感情が伝わりづらかったというわけだ。

 猫が腕(足?)をクロスさせている絵文字も、ドコモだとシンプルに変換される。ここで示した例はauとドコモの場合だが、ソフトバンクやiPhone、ウィルコムなどにメールした際にも、同様の問題が発生していた。文字以上に感情をこめやすい絵文字だが、そのぶん、変換によるリスクも高くなっていたと言えるだろう。

石野純也氏寄稿! 3キャリア絵文字統一化の背景と今後の課題
↑auの絵文字を他社端末に送ると、表情の異なる絵文字や、文字に変換されてしまう。画像はドコモに送信した場合の例。

 絵文字改訂の背景には、こうした事情があった。「キャリア間の相互変換を開始し、互換性重視に方針が移っていった」(KDDI担当者)という市場動向の変化も、今回の発表の一因と言えるだろう。

 また、「今の若い人に調査すると、シンプルなデザインのほうが好きという意見があった」(同)という。時代とともに、ユーザーの嗜好も変化しているのかもしれない。

 一方で、旧絵文字のカラフルで細かい部分まで描き込まれたデザインを好むユーザーも少なくない。こうしたユーザーのために、旧絵文字はデコレーションメールとして画像化したそうだ。絵文字と同様、パレットから入力できるため、操作性にも大きな変化はない。

 新絵文字の開発にあたっては、ドコモでiモードの立ち上げに関わり、i絵文字のデザインを担当した現・バンダイナムコゲームスの栗田穣崇氏に監修を依頼した。iモードの絵文字は「100人が見たら、90人ぐらいは共通で認識できる」(栗田氏)ということを目指していた。当時は画面の解像度や表示カラーの制約もあったが、KDDIはあえてこのシンプルさを取り入れたというわけだ。

 なお、i絵文字は12×12ドットの単純なものであることから商標を取られていない。iPhoneが採用する、共通規格(Unicode)の絵文字に形状を近づける工夫も行なった。

 さらに同日、ドコモとイー・アクセスも絵文字の統一化に向けた取り組みを発表した。ベースがi絵文字になっているため、ドコモ側の変更は特にない。イー・アクセスもKDDIと同様に、ドコモのi絵文字を採用する。Androidについては、メールアプリのバージョンアップで対応する見込みだ。

 ソフトバンクモバイルは今回の取り組みの枠内に入っていない。理由は「2008年にすでにデザインの共通化を行なっており、他社絵文字を表示する機能を搭載している」(ソフトバンクモバイル広報部)ためで、すでに互換性が確保されているという見解だ。

 ただし、現時点では、互換性の問題が全社で完全に解消されたわけではない。KDDIの場合、新絵文字対応端末では一部の絵文字はデザインを変更したうえでパレットから削除しており、auの旧端末から受信した場合にのみ表示されるものもあるという。

 これは他社に送った際にニュアンスが大きく変わることへの対策だが、一方でまだ絵文字自体が「〓」になるものや、文字に変換されてしまうものは残る。今回の発表をきっかけに、さらなる共通化を図ってほしい。

 Unicode化も視野に入れているようで、ウェブやアプリでの利用シーンの広がりや、海外ユーザーとのコミュニケーションを円滑にすることを考えると、歓迎したい動きだ。今回の共通化は、あくまで完全互換に向けた第一歩と理解しておいたほうがよさそうだ。

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