ソニーは10月26日、ソニー・エリクソンの完全子会社化を発表。同日にソニー・エリクソンの本社がある英国にてプレスカンファレンスを開催し、その模様はウェブでも配信された。
ただし、今後のソニエリ端末はどうなるのか、といったユーザーの気になる具体的な点までは語られなかった。そこで、ソニーのソニエリ子会社化によって何が起きるのか、スマートフォン業界の動向に詳しいケータイジャーナリスト・石野純也氏に今後の予想を語っていただいた。
――以下は、石野純也氏のコメント。
ソニーの子会社になったことで、よりソニーグループのサービスとの連携が進み、サービスと端末の一体化が進むと予想しています。サービスと端末の融合は、アップルをはじめとしてどのメーカーも注力しているところ。ソニーなら、ゲームのコミュティー“PlayStation Home”やビデオ配信サービス“Video Unlimited(ビデオアンリミテッド)”などを持っているので、それらをシームレスに利用できる端末の登場なども考えられます。
たとえば“プレステスマホ”こと『Xperia PLAY』では、同じグループにも関わらず、グローバル版では“PlayStation Store”の搭載に時間がかかってしまいました。“Video Unlimited”のサービスインも、Xperiaと歩調が合っていたとは言えません。子会社化に伴い、ソニーの“4スクリーン戦略”の中にスマートフォンが組み込まれましたが、こうした連携がスムーズになれば端末とコンテンツが融合した、今まで以上に魅力的な端末を開発できるかもしれません。
気になる“Xperia”ブランドついては、2月のMobile World Congressでお会いしたExecutive Vice President(当時・現在はソニーに所属)の坂口立考氏が「来年には新しいデザインランゲージを打ち出す予定」とコメントしています。それに伴ってXperiaのブランドを変更するのかどうかまではわかりませんが、端末の開発には少なくとも1年はかかるので、ソニーの子会社化の影響が出るのは、もう少し先になると思います。記者会見を見る限りでは、新社名なども現在検討中とのこと。買収完了が来年1月なので、1月のCESか、2月のMobile World Congressでは、新しいスマートフォンを伴って何らかの発表があるのかもしれません。
ソニー・エリクソンの軌跡 |
ソニエリがソニーの一部になることで考えられる懸念として、下記の点が挙げられます。これまでソニーとは独立して動けたため、小回りのきく開発ができていました。いわゆる“ウォークマンフォン”や“サイバーショットフォン”をいち早く出せたのも、そのためです。距離が近すぎると、事業部ごとの壁もあって、逆に遠慮してしまいますからね。その点、ソニー・エリクソンは携帯電話しか持っていなかったので、必要な機能やブランドを、遠慮なくソニーから持ってくることができたのだと思います。ソニー・エリクソンには、当然ソニー出身の方も多いのですが、彼らのチャレンジ精神を見ていると、「ソニー以上にソニーらしい」と感じることもありました。
ところが、今後はソニーグループの中に組み込まれることになり、この小回りが失われてしまう懸念もあります。たとえばウォークマン部隊に遠慮してスマートフォンの音楽再生機能にウォークマンの名前を使わなくなってしまったり、他部署の開発スケジュールに合わせてスマートフォンの投入が遅れたりしたら、本末転倒です。ソニー・エリクソンはグループの中ではいち早くAndroidに取り組んでいたメーカーですし、現在はラインナップの8割がAndroidスマートフォンです。Androidスマートフォンを開発するメーカーの中では、確実に世界で5本の指に入っています。その意味では、ソニー・エリクソンのノウハウをどこまで活かせるのかが、ソニーの今後を左右するような気がしています。
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