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“くっつき虫”みたいな一枚 在日ファンクインタビュー

2011年09月12日 19時00分更新

もっと自由でいいんです

――在日ファンクとは一体?

久保田 バンドリーダーの浜野謙太がジェームス・ブラウンが大好きだというのが始まり。それでハマケンが「こいつとファンクやりたい」と思った相手をかき集めた。そういう集団です。

浜野 でもね、やっぱりどんなに好きでも、ジェームス・ブラウンにはなれないんですよね。なので、彼の生き様や、彼の奏でるファンクと僕らのズレを楽しもうと思っているんですよ。

――“ズレを楽しむ”とは?

浜野 僕らは日本人なので、彼らアフリカンアメリカンと同じ形のレベル・ミュージック(反抗の音楽)はできないんです。なのでいい意味で勘違いするしかないということですね。

久保田 何かに対して、立ち上がるその背景が違う日本でどうやるかが大事なんですよ。

浜野 僕たちは外側へのもの、例えば権力に対する怒りではなく、もっと内側への怒り。何気ない人間関係だとか、そういう身近なところに大きな問題点が
潜んでると思うんです。

久保田 怒りというか反抗心なんですよ。僕は彼の歌詞からアメリカのファンクを日本でやるジレンマを感じていて。ジャズもそうですが、知っている人に発言力があり、知らない人はそれを受け入れるしかない。そういう事に対する反発ですね。

浜野 日本でやる時点でズレてるんだしもっと自由でいいんですよ。

久保田 だからこそこの新作の中には「これがファンクの形だ、どうだ!」とか、「まさにファンクらしいフレーズだろ!」というのがまるでないんです。

――ところで音楽では自由なファンクを奏でつつも全員が揃いの服を着用するなど、ビジュアルイメージは統一しているのはなぜ?

久保田 僕らがちょっとでも崩した感じにするとお笑い方向に行ってしまう懸念があるからですね。リーダのハマケンの世間的なイメージがそうだし。やりすぎなくらい引き締めないとって僕は思っています。引き締めて初めて普通になるというか。

浜野 僕はリーダーなのにキャラとしての求心力がないんですよ。ファンクバンドと聞くと恐怖政治が敷かれていて、ボーカルやリーダーの思い通りにバンドが動くという印象がありますよね。でも在日ファンクは違う。僕は恐怖政治がしたいですけど……でもできないんですもん! でも憧れているだけで、できないっていうのも悪くないなって思います(笑)。

久保田 ようはやっている人たちがもう自由で、バラバラなので衣装くらいは揃えましょう、それくらいは縛らせてくれ! という話なんですよ。

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“秘宝館”的になった

――ところで新作、タイトルからしてかなりドキドキしますね。

久保田 放送禁止用語が入っているわけでもないのに、なぜか引っかかるという。だから“くっつき虫”みたいな1枚。一個一個の言葉が、一度でも観たり聴いたりするとひっかかるから。

浜野 爆弾って言葉聴くだけで気になりますよね。でもこわい。そういう大人になるとなかなか出せない素直な気持ちを出したタイトルだと思うんです。

――ということはある意味このアルバムは素、裸に近い状態?

久保田 もうかなり素の状態ですよ。まるで包み隠してない。

浜野 陰部も見えるほどですね。そういう卑猥性も含めた上での裸。ナチュラルを越えてます。でもエロい歌は書きたくないし、歌わないぞと思っていたんです。でもそう考えながら掘り下げたら結果エロくなっていったと。だから「エロって? 人間って?」と突き詰めたら“秘宝館”的になったと。本当、僕らの裸が詰まった1枚だと思います。
 

【プレイリスト】
【お題】
毎日明るく過ごすための5曲
選曲:久保田森

【コメント】
単純にみんなが明るくなるといいなと思って選曲しました。近頃はいろいろ大変ですし、息抜きとして聴いてほしいです。まさにアスキー読者の方向けの曲です。

【1曲目】
トニー谷
『ソロバンチャチャチャ』

僕の人生のお手本です。お金が無いなら無いという歌をつくり。モテたいときにはモテたいという歌をつくる。今ってみんなカッコいい歌をつくるじゃないですか。でもこういう真実味のある歌って聴いてて幸せになれるんです。「家庭の事情でお金がないざんず」とか言ってますが、この人も大変なんだ! ってなる。辛い時でも楽しくなれます。

【2曲目】
Count Basie
『Blues In Hoss’ Flat』

ジャズビックバンドのナンバー。このカッコよさは何なんですか!! スカッとする感じが集約されている曲。誰が聴いても気持ちよくなれるはずです。

【3曲目】
荒井由美
『ルージュの伝言』

ベストアルバムをよく聴きます。大人も青春時代にリアルタイムで聴き、その子供も映画で聴き、どんな世代でも聴くだけで幸せになれるはず。ドラムがフェードインしてくるところがすごくいいですよね。気持ちを明るくしてくれます。

【4曲目】
柄沢玲奈とお兄ちゃん
『チンチンポンポン』

すごく音痴な子供の兄妹がいっしょにお風呂にはいって「お兄ちゃんと私はなんだか違うわ?」というのを歌っている曲。怒っているときにこれを聴くと、もうどうでもよくなります。なのでドライブなどでイライラしているときに流すといいと思います。仕事で何か嫌なことがあってもこれを聴けば「もう、いいや!」ってなるのでサラリーマンにも聴いてほしい。へたくそ過ぎてニヤッとします。

【5曲目】
Count Basie and His Orchestra
『Every Day I Have the Blues』

歌も素晴らしいのですが、それ以上にバックのオーケストラでテンションが上がります。僕がビックバンド好きだからかもしれませんが。歌詞もいいけど、それを越えてくるバックバンドのすごさがあって、聴いていておもしろい。リズムも最高です。

 【ニューアルバム】
在日ファンク ニューアルバム
『爆弾こわい』

一度聴いたら忘れられない
バンド名、アルバムタイトルどこをとっても気になるファンクバンドのセカンド。新解釈のファンクが聴こえる。

●通常盤2625円 ●9月7日発売 ●P-VINE RECORDS

【プロフィール】
写真左から久保田森(Tb.)、村上啓太(Ba.)、仰木亮彦(Gt.)、浜野謙太(Vo.&Leader)、後関好宏(Sax.)、村上基(Tp.)、永田真毅(Dr.)によるファンクバンド。10月よる全国7ヵ所でライブを予定している。

●関連サイト
在日ファンク 公式HP

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