2011年08月25日13時00分

【私のハマった3冊】時を超える本物の恋 すれ違い、交錯する時間SF3編

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時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ
編 大森望、著 F・M・バズビイほか
早川書房
987円

ゲイルズバーグの春を愛す
著 ジャック・フィニイ
ハヤカワ文庫
819円

リセット
著 北村薫
新潮文庫
620円

 初めて“時間もの”に魅了されたのは『アトム今昔物語』だったと思う。それ以来、小説はもとより、映画でも舞台でも、時間がテーマの作品が好きだ。

 演劇集団キャラメルボックスが上演した『アンフォゲッタブル』は、人生をランダムに生きる男が主役の“時間もの”。原案となったのはバズビイの『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』で、昨年これを表題とする時間SF傑作選が刊行された。男は唐突に昨日とはちがう時代の自分として目覚める。突然少年や老人の自分となってしまい、昨日から続く今日を生きられない、そんな彼が人生のなかで時折出会う女性に恋をする。ところが、なんと彼女もまた同じランダムな人生を送っていた。交錯する時間を超えて結ばれる恋愛が、彼らの人生をどう変えてしまうのか読んでいただきたい。

 交錯し、すれ違う恋愛は遣る瀬ないが、決して出会うことのないちがう時代の2人が不思議な方法で出会うのが、ジャック・フィニイの短編集『ゲイルズバーグの春を愛す』に収録されている『愛の手紙』だ。古道具屋で買った書き物机の隠し抽斗から80年前に書かれた手紙を見つけた男は、返事を書き、古い郵便局で投函する。すると、別の隠し抽斗にその手紙への返信を発見する。時を超えるのは手紙だけで、2人の人生は決して交差しないのだが、彼が最後に手にしたのは“永遠”の証しだった。

 交錯しても、交差しなくとも、この物語たちは本物の恋だけが持つ絆の強さを感じさせる。この強靭な恋の絆が“時”を超える物語が北村薫の『リセット』だ。昭和のきびしい歴史をとおして、人々の人生観の変化を織り交ぜながら、若い2人の、たった一度しか訪れない美しい時間をていねいに積み重ねてゆく。やがて2人に訪れる、人が人を恋ふる想いが時を超えて相手に届くその瞬間、読み手は、最愛の人との絆を思い起こすとともに、その絆が永遠に続くことを心の底から確信できるだろう。

みかん星人
書評サイト『本が好き!』レビュアー。数冊同時に読むのが常。本はもちろん、映画も好き、演劇も好き。

※本記事は週刊アスキー9月6日号(8/23発売)の記事を転載したものです。

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