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【私のハマった3冊】自分と向き合い、人生を左右する小説との運命の出会い

2011年04月08日 09時00分更新

BOOK

チャンス
成功者がくれた運命の鍵

著 犬飼ターボ
PHP文庫
680円

流星たちの宴
著 白川道
新潮文庫
900円

名残り火
てのひらの闇2

著 藤原伊織
文春文庫
700円

 今やどんな書店でもビジネス書のコーナーは多くの新刊で花ざかり。だが、人生のアドバイスが必要であればあえてビジネス書ではなく、良質な小説をおすすめする。僕は毎年200冊ぐらいの本を読むが、ビジネス書で人生に影響を与えるようなものに出会ったことはない。しかし、良質な小説のなかにはそんな本があり、運命の出会いがある。

 サラリーマン時代の出来事、かつての後輩に一生懸命愚痴っている自分がいた。その彼は黙って最後まで話を聞いたあとに、「この本を読んでみてください。そして読み終わったあとに感想を聞かせてください」と紹介されたのが『チャンス』だ。著者自身が体験したことをモチーフに小説仕立てで書かれた一冊。作品にちりばめられた数々の“日常”の出来事は、殻に閉じこもった僕の心を開いてくれた。

 日々生きていくことは決断の積み重ねと言ってもいいだろう。それは決して大きな決断ではなく、「何を食べようかな」という些細なものかも知れない。だからこそ命がけ、ギリギリの状態で決断し、行動する人物には憧れを抱くのではないだろうか。『流星たちの宴』にはそんな男たちが登場する。嘘と裏切りの世界のなかで“何を信じる”かはその人の生きざまそのものかも知れない。僕はこの本を過去に5冊買っている。友人にプレゼントする本はこれと決めている。

 作品のよさを味わうには、自分自身の成長が必要な本がある。まったく楽しめないわけではないが、真意をとらえ微妙なニュアンスに心を揺れ動かされるには、違いを理解するための知識と経験が必要になる本だ。『名残り火』はそんな作品だ。著者の完成作品としては最後の作品でもあり、完成度もすばらしい。主人公の堀江から、「知識は決断のため、決断は行動のため」と僕は学んだ。

 本を読むという行為には単に知識や情報を得るだけではなく、自分と向き合い自分の人生を左右する出会いがある。

chibizo0204
顧客視点のコンサルティングを本業としつつ、書評サイト『本が好き!』のレビュアーとして活動中。

※本記事は週刊アスキー4月19日号(4/5発売)の記事を転載したものです。

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