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今こそ、あらためて知りたいケータイの緊急地震速報

2011年03月30日 20時54分更新

   東北地方太平洋沖地震でにわかに注目を集めたケータイの機能がある。それが緊急地震速報だ。この記事の執筆中も、まだ余震は完全には収まっていない。備えを万全にする意味でも、仕組みや対応機種などを改めて確認しておこう。

【情報追加】
ドコモは3月30日、今年の冬モデルからスマートフォンも緊急地震速報に対応することを明らかにした。国内メーカー製だけでなく、「海外メーカーにも対応をお願いする」とのことだ。

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 そもそも、緊急地震速報とは、気象庁が配信を行なう地震の予報・警報システムのことを指す。地震のP波(初期微動)を感知し、S波(第2波)の規模、到達する場所、時間を瞬時に計算。震度5弱以上の揺れがある場合に、震度4以上の地震が起こることが予想される地域に配信を行なっている。

 数秒から数十秒前に地震を感知できるため、エレベーターに乗るのをやめる、机の下に隠れる、クルマを停止するといった行動を取ることができる。予報の区域は、約200に分けられている。

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 緊急地震速報の画面。専用のブザーと共にこのようなメールを受信する。 

 ケータイ向けの緊急地震速報も、情報源はテレビやラジオと同じ気象庁のデータだ。他のメディアとの決定的な違いが位置情報。通信している基地局の位置に基づきユーザーの居場所を把握できるため、配信エリアがテレビやラジオよりきめ細やかになる。テレビで緊急地震速報が流れたのに、ケータイは鳴らないということがあるのは、そのためだ。

 ただ、ケータイは一斉に通信を行なうと、ネットワークが輻輳(ふくそう)してしまい、タイムリーな速報を出せなくなる。緊急地震速報はその性質上、同時に対象エリアにいるすべてのユーザーに送信しなければならず、基地局やサーバーの許容量を超えてしまう可能性がある通常の通信は利用できない。そこで、各社は放送に近い“1対多”の通信方式を導入している。ドコモやソフトバンクが採用するW-CDMAでは“CBS”、auのCDMAでは“ブロードキャストSMS”と呼ばれるものだ。どちらも3gpp、3gpp2で標準化されている(ただし、一部独自の拡張もある)規格だ。

 基地局と端末の両方がこの規格に対応する必要があり、普及には時間がかかるものの、都心のターミナル駅のようにユーザーが密集した場所でも、同時にかつ素早くデータを送ることができる。

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  緊急地震速報の簡単な仕組み。ドコモは'07年、auは'08年発表時のもの。

 ドコモでは'07年末に発売された“905i”シリーズ以降のiモード端末の多くが緊急地震速報を搭載しているが、残念ながらスマートフォンは非対応。一方のauは、'08年春モデルの“W6X”シリーズから緊急地震速報を開始し、今では『IS02』、『IS03』、『IS04』、『IS05』などのスマートフォンでも受信可能だ。ソフトバンク端末は'09年に発売された『831N』のみだ。機種によってはデフォルトでオフになっていることもあるので、これを機にあらためて設定を確認しておこう。

 ちなみに、iPhoneには『ゆれくるコール』、アンドロイドは『なまず速報β』というアプリがあり、設定すると緊急地震速報がプッシュで届く仕組みだ。緊急地震速報に非対応の機種を使っているユーザーは導入しておいてもよさそうだ。ただし、過信は禁物。ケータイの緊急地震速報とは違い、アプリだけではどうしても通信部分の混雑を回避できない。ユーザーが多ければ多いほどネットワークに与える負荷が上がるため、受信が遅れる可能性もそれだけ高くなる。ケータイの緊急地震速報との仕組みの違いをしっかり理解したうえで利用するようにしたい。

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  『ゆれくるコール』を使えばiPhoneでも緊急地震速報を受信できるが、仕組み上、ケータイのものよりは遅れる可能性が高い。

 もちろん、気象庁の緊急地震速報そのものにも、まだ課題が残ってる。今回の東北地方太平洋沖地震でも、1回目の地震の規模を正確に予測できておらず、その後も震源地や規模の間違いが相次いだ。機器の故障や、複数箇所で同時に発生した地震のデータを処理できないなど、原因は様々だが、今後の精度向上にも期待している。

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