2010年09月07日20時10分

生みの親とセガが語る! 初音ミク3歳の歩みを総ざらい!!

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 8月31日に3歳の誕生日を迎えた初音ミク。PCソフトとして生まれた初音ミクですが、2009年にはPSP用ソフト『初音ミク -Project DIVA-』でゲームデビュー。今年6月にはアーケード版、7月にはPSP用の『初音ミク -Project DIVA- 2nd』発売、さらには『感謝祭』という形でフィルムコンサートが行なわれるなど、いまや“アイドル”と呼ぶにふさわしい存在感を手に入れています。

 今回は、初音ミクの生みの親、クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さんと、初音ミクをゲームに起用してヒット作となった『Project DIVA』シリーズの制作に携わってきたセガの内海洋さんをお迎え。 “ボーカロイド”がゲームの主役を張れる“アイドル”にまで成長していった歩みと初音ミクの今について語ってもらいました!

生みの親とセガが語る! 初音ミク3歳の歩みを総ざらい!!:クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さん
↑初音ミクの生みの親! クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さん。
生みの親とセガが語る! 初音ミク3歳の歩みを総ざらい!!:セガの内海洋さん
↑『Project DIVA』シリーズに1stから携わる、セガの内海洋さん。

■0歳の初音ミクはとにかくカオスだった

―― ボーカロイド「初音ミク」が2007年に発売されて、Project DIVAシリーズの第1作にあたるPSP用の「初音ミク -Project DIVA-」が発売されたのが2009年7月ですよね。その間約2年ほどあったわけですが、そもそも初音ミクとセガさんってどういう出会いだったんですか?

佐々木渉(以下「佐々木」):出会いはなかなかカオスですよ(笑)。最初に連絡をもらったのがリリース直後の(2007年)9月なんですけど、東京ゲームショウの会場から電話が来たんです。会場って爆音でBGMがかかっていて、何を言っているのか全然聞き取れなかったんですが、とりあえず「初音ミクに興味があります!!」と熱く語ってるのはわかりました。実は同時期にほかのゲームメーカーさんからも声をかけていただいていたんです。そういう場合って、たいていメールで丁寧な資料と一緒にいただくんですが、セガさんは情熱から(送ってきてくださった)。

内海洋(以下「内海」):僕は少しあとからプロジェクトに加わったんですけど、当時の担当者が最初に電話をかけた時はほぼノープランだったと思いますよ。普通、実際にお話を持ち込む前にはいくつかのステップを踏んでいくものなんですけど、このときはそれを飛び越えていきなり連絡した感じだと思います(笑)。

佐々木:勢いだけで来ていただいたんで、逆にこちらも気負わずお話をしやすかったですね。

―― ほかのメーカーさんでなく、セガさんと一緒にやろうと思った決め手は何だったんですか?

佐々木:ほかのメーカーさんは、やはりブームが早々に終わるのを恐れてらっしゃって「とにかく冷めないうちに出したい!」って感じだったんですね。でも、セガさんはいろいろな相談をさせてもらえる。初音ミクが出たばかりで、これからどうなるかなんて全然わからない頃でしたから、一緒に試行錯誤してもらえる感じがすごくよかったんです。

内海:僕らは、あまり「ブーム」ってとらえ方はしていなかったんですね。社内会議でも当然「いつまで人気は続くの?」と聞かれたんですが、「それは誰にもわかりません」って(笑)。「誰が買うの?」って聞かれても、「う~ん、わかりません」。そうとしか言いようがなかった。さすがにちょっと怒られましたけど(笑)。

 

■Project DIVAはユーザーと同じコースを走らない

―― その頃って、まだオリジナル曲もほとんど出てきていない時期ですよね?

佐々木:まだ9月でしたね……「みくみく(にしてあげる)」が出た直後くらいですかね?

内海:2chのネタとくっつけて歌わせるみたいなものが目立ってましたよね。

―― 一般的にはユーザーコミュニティってメーカーが仕掛けて育っていくことが多いと思うんですが。

佐々木:いや、そういう感じは全然なかったですね。ユーザーさんはユーザーさんでもうファンの方々と縺れ合いながら異様に盛り上がってた。どんどんいろいろなものが出てきて、育っていくんです。(ユーザーサイドから)「MMD(MikuMikuDance)」が出てきたときはセガさんと一緒に、「ものすごいの出てきましたけど、どうしましょう?3Dやめます?(涙)」なんて話もしていました。

内海:もちろん我々もハイエンド機にお金をつぎ込んでいけばMMDに近いものは作れるでしょうが、基本的にはかなわないと思っていました。これはもっとどんどん進化していくだろうと思っていましたし。「じゃあ、僕らがプロとして作るのは、MMDとどう違うのか」というのを考えるのが課題でしたね。例えば、「俺たちモーションキャプチャーとかしちゃうもんね! いいだろ!」とか(笑)。

―― いい意味でユーザーと競争できた?

内海:いえ、「競争」はしてないですね。MMDの方が全然スペック高いですし。僕らはどちらかというと「抵抗」。ハイエンドPCでやっているのと同じようなことを、小さな携帯機でやってみせる。それがプロの技。そういう小さな意地みたいなものです。

佐々木:MMDはすごく自由で風通しが良くて熱量が高くて、何もない広大な原野があっという間に開拓されていくような感覚でした。完全参加型で、ある意味無敵とも思えるMMDに対して、変に対抗したりするのはナンセンスだと思いました。

内海:僕らはユーザーと同じレースに参加して競争するんじゃなくて、別のコースを走ろうと思ったんです。彼らのレースをサポートするような道具を作っていくというか。MMDを見ながら、「自分も何かしたい!」と思っている人たちに、何か提供できないかと。

佐々木:むしろ意識すべきはムードや温度感ですから。「空気を読む」みたいなところを優先しないと、自分たちの作るものがユーザーの目にどう映るかわからなくなってしまう。

 

■「セガ、わかってんじゃん」って言われたかった

―― セガさんとしては、Project DIVAをどういうふうに展開していこうと思っていたんですか?

内海:僕らがゲームのリリースを発表できたのは、(初音ミクの)発売から1年後だったんですけど、その頃にはユーザーさんの間に「これからも初音ミク応援していこうぜ!」っていういい空気ができてたんですね。そういうところにゲームを出すとなると、賛否が集まりますから、そこを一番気にしましたね。で、ユーザーさんに受け入れてもらうためにはどうすればいいんだろうと考えていたときに「8月31日って初音ミクの誕生日やん!」って思い出したんです。ここで発表して、「セガ、ちょっとはわかってんじゃん」って思ってもらえたらいいなと。

―― 実際にはどういう発表にしたんですか?

内海:ニコニコ動画の雰囲気を真似した動画を作ってティザーサイトで流したんです。当時まだ企業が公式としてニコニコ動画に投稿するって、なかなかできなかったんです。今と違って「ネタバレ動画サイト」って感覚が強くて。RPGタイトルを出すと、発売日前日にクリア動画が載ってるんですね(笑)。当時はどちらかというと、敵対意識ですよね。

佐々木:(ニコニコ動画の)公式チャンネルが始まる前でしたっけ?

内海:まだまだ全然前です。ともかく、そうやって作ったサイトがそこそこ見てもらえた。

―― じゃあ、まずはスタートはうまく受け入れられたわけですね。

内海:うまくいったかどうかはわからないですね。カウントダウンページがサーバの許容量オーバーでダウンして、カウントダウンが元に戻るというわけのわからない状態になったりしてましたし(笑)。カウントダウンしてからアップしちゃって。そんなご迷惑をかけたりとかしたんですが、まあ、それはそれでひとつ話題になった面もありますけどね。

―― 比較的笑える話と受け止められたと。

内海:そうですね。これまでもけっこう失敗ありますからね(苦笑)。最近だとサントラCDの商品情報で、公表前にゲームの収録曲がバレちゃったりしましたけど、それはそれでユーザーさんが面白がってもらえたので。僕らも楽しみながら「あー、(情報)出ちゃった。じゃ、そろそろ動画上げる?」とかできた(笑)。

佐々木:ほんと、独特のノリですよね(笑)

内海:実際にはかなり困ったネタバレもありましたけどね。公式サイトがアタックされて、発表前に動画が流れた時は「さすがやな」と思いました。デジタル社会舐めたらいかんわって(笑)。

  

■初音ミクのボーダーを広げたProject DIVA

―― Project DIVAって初音ミクにとってどういう意味があったと思いますか?

佐々木:ひとつターニングポイントになったのは、衣装じゃないかと思うんです。Project DIVAって衣装の着せ替えができるんですけど、それまでの初音ミクって、あの公式の衣装のイメージで固定されてたんですね。「サイバー」というか、「未来から現代に来たオノボリさんっぽい」というか(というイメージの衣装)……(笑)。

内海:あの格好にネクタイはなかなかないですからね(笑)。

佐々木:合理的な未来のイメージというより、「頑張って未来感出してます!」って感じじゃないですか(笑)。昔のSFにあったような、人間味もあった。でも、公式のあのイメージから離れちゃいけないって空気もあったんですね。で、Project DIVAでは、紆余曲折あって、最終的にがっちり方向転換をお願いしてピアプロで衣装を募集することにしたんです。

内海:正直、僕らとしては、普通にゲームユーザーさんが喜ぶような、女子高生、ナース、メイドさんというのは来るだろうと思っていたんですね。でも、来ないんですよ。こういう表現はおかしいですけど、もっと「女の子らしい、かわいい服を着せてあげたい」って思う人が多かったのかもしれないですね。

佐々木:当時はみんなの中に「初音ミクっていうのはこういうもの」って束縛があった。Project DIVAで衣装が増えたり、ユーザーさんが増えていくなかで、そういう束縛が解かれていって、感覚が拡張されていくような面白さがありましたね。今のキャラクターフリー的な流行にも繋がっているのかも知れません。

内海:いろんなミクが描かれていくようになってましたね。「どこまでなら(初音ミクだと)わかるか」っていう、ユーザーさんの感覚もだいたい固まってきた時期だったのかもしれないですね。ピアプロのなかでも「あ、こんな服着ても全然かわいいじゃん、ミク」みたいな解釈のし直しが出てきてた。そういういいタイミングでゲームが出せたのかな。

  

■初音ミクには常にサプライズがなくてはならない

―― Project DIVAの1stって結局どれくらい売れたんですか?

内海:20万本強くらいですかね。あとで出た廉価版も入れるともうちょっとですね。初回出荷で10万本くらい売れてくれました。

―― それで、すぐに2ndの企画に?

内海:いや、そのときは2ndをやるって話もなくて、「次、どうします?」って話が出たときも、もう1回企画の練り直しから始めて、気に入ってもらえる企画にするのに苦労しましたね。僕はとにかく、佐々木さんの言った一言が忘れられないんです。あるとき、「初音ミクで何かするなら常にサプライズがないとダメだと思うんですよ」って言われて、「あ、これは守らないとダメだな」って思ったんですよ。ゲームが売れてから、いろんな企画が社内でも出てきましたけど、一番僕が驚いたのは「Project DIVA Arcade」。「アーケードでやるの!?」って(笑)。

佐々木:ありましたね(笑)。

内海:「一番驚いたから採用!!」みたいな(笑)。他にも「携帯で」とか「某RPGに出して」とか、いろいろあったんだけど、ビックリしないじゃないですか。でも、アーケードは「クリプトンさん、驚くぞ!」って(笑)。

佐々木:アーケードが気づかせてくれたものや開拓してくれたものは大きいですね。コミュニケーションツールとしての初音ミクというものの訴求力もあるってわかった。並んでいる人の背中に「ボカロ曲大好き」って連帯感があったり。

内海:でも、アーケードのときは怖かったですよ。会社が潰れるんじゃないかと思うくらい「バカじゃねーの」「斜め上行き過ぎセガ」「調子にのってんじゃねーよ」みたいな意見が集中して。ニコニコ動画のコメントを消して見たのはあのときが初めてですね(笑)。

―― 実際に稼働が始まってしてからの感触はどうだったんですか?

内海:正式導入前に、秋葉原とか池袋とか首都圏近郊の6カ所くらいでロケテストをやったんですね。1月とか2月とか、真冬の時期だったんですけど、寒いなかものすごく多くの方に並んでいただいて、最長で6時間待ち。

―― 6時間!!

内海:手応えを感じたのは、お客さんの層を見たときですね。アーケードゲームって、バーチャファイターとかでもそうなんですけど、99:1とかで男性ばっかりなんです。でも、Project DIVA Arcadeは3割近く女性がいて、「これはけっこういけるかな」って思ったんです。カップルでいらっしゃる方もいましたし。今までとはちょっと違うユーザーさんに遊んでもらえるかもしれないって感覚はありました。

 

■初音ミク、海外へ!

佐々木:面白いのは、Project DIVAがコミュニケーションツールとして機能している側面があるところですね。某掲示板で有名な話ですが、あるユーザーさんは会社の上司にトイレに呼び出されて、「おまえ、Project DIVA持ってんだろ?」ってカミングアウトされたらしいです。で、「俺のでも水着(の衣装を)出してくれ」とかって言われて、(水着の衣装を出してあげたら)「でかしたぞ、昇進だ!」みたいなことがあったとか(笑)。

内海:Project DIVAで昇進!(笑)

佐々木:2ちゃんねるでもスレがすごいスピードで消費されたりとか、コミュニケーション的な要素がエンドユーザー間にあるんです。アーケードも、当初はネガティブな反応もありましたが、ふたを開けてみるとだんだん変わっていった。ロケテストをやってみると「けっこう女の子が来てるらしい」「みんなPSP持っててフレンドリーな雰囲気らしい」って話が広まっていって、「初音ミク好きの知り合いが増えるかも」っていう雰囲気ができていったんです。ボーカロイドとかCGM文化って、本質はコミュニケーションや共感、共有にあるんだなっていうのを改めて知ることができたきっかけでしたね。

―― 今後の展開もそういう部分がベースになっていくんでしょうか?

佐々木:今、海外展開を考えているんですけど、そこもそういう部分がないと成立しないと思います。今海外でボカロや初音ミクが好きって人がいたり、YouTubeなんかで見ながら、共有しているものがあるんだろうなと思うんですよね。だったら、世界中のファンの方に少しでも楽しんでもらいたい。そういう温かい温度に吸い込まれるような感覚がなかったら、Project DIVA 2ndも30万本も売れなかったと思います。

 

 海外展開なんて話も飛び出した3歳の初音ミク。これまでの流れを踏まえ、これからの展開や展望については、9月11日のイベント『週アスLIVE! 週刊アスキー800号記念 やりすぎましたSP』にて、じっくり語っていただこうと思います! Ustreamでの中継もあるので、初音ミクファンはお見逃しなく!!

初音ミク
(C)Crypton Future Media,Inc.

 対談の続きは週アスLIVE!で! 会場地図や開催概要など、イベントに関する詳しい情報は公式サイトでチェック。

週刊アスキー800号記念
週アスLIVE! やりすぎましたSP(スペシャル)

 イベントに関するツイートは #asciilive までどうぞ!

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