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『ポケモンカードゲーム』オフレコだらけのビッグネーム会談

 週刊アスキーにてコラム連載中の樋口真嗣氏が『ポケモンカードゲーム』のイラストを描いた! どんな経緯でこのコラボレーションは生まれたのか――日本が世界に誇る人気キャラクター『ポケモン』のコンテンツ事業を取り仕切るカンパニーのトップ・石原恒和氏と人気映像作家との出会いや、制作中のエピソードに迫る!
 

◆ポケモンワールドの“ボスキャラ”と破壊神の遭遇!

――お2人は同世代なんですか?
樋口 いえいえ。石原さんの方が大先輩ですよ。
石原 僕は51歳で……。
樋口 で、僕は44歳。世代はちょうど1つ、石原さんの方が上ですね。

――知り合った経緯は?
樋口 我々、あまりオモテには出せない話なんですけど、都内某所で“男芸者衆”ってのをやってまして(笑)。
石原 実はコレ、“国家的なプロジェクト”でして(笑)。そんな秘密の活動をやっていたときからのつき合いになりますね。

――秘密の活動とは?
樋口 国内外のいろんなVIPを接待しなきゃいけない……とかね。そんなときに我々が“男芸者衆”として呼びつけられる……と(笑)。ホントの話だけど、詳しい話はオモテには出せない(笑)。
樋口 そんな“男芸者衆”のコネクションってのがあって、そこで知り合いました。

――初めて会ったときのお互いの印象は?
樋口 ゲームソフトの『ポケットモンスター』が発売されたときに、「これはスゴイ作品が現れた!」って、思ってたんですよ。当時怪獣映画を作っていた私としては、「怪獣映画のお客さん、全部持っていきやがった!」って思ってました(笑)。……と言うと勘違いされるかもしれないけど、決して“商売敵”と考えていた訳じゃなくて、“新しいヴィジョンを構築した人”という……尊敬に近い感情かな。そんな考えもあって、初めてお会いしたときは「ついにボスキャラに会った!」って思ってました。まぁ、そんな考えとは別に、ポケモンの映画とかをお手伝いさせてもらってたんで。

――ということは、出会ったのはゲームソフト『ポケットモンスター』発売後のこと?
石原 最近ですよ。3~4年ぐらい前かな。

――石原さんの(樋口さんに初めて会ったときの)印象は?
石原 初めて会ったのは先ほどの“国家的なプロジェクト”のときなんだけど、“男芸者衆”としての活動中にカラオケで樋口さんが歌われた歌が、某番組の特撮番組の主題歌だったんですよね。それで、そのあとに歌ったのが、その番組の挿入歌。歌詞の途中に、物騒なキーワードを連発するという内容のヤツ(笑)。それで、「なんだ!? この人は!? こんな場所でこんな歌を歌う人なんだ!?」って思ってました。もう、ユニークな感性がキラリと光る……というどころか、感性が爆発してましたからね(笑)。しかも、他の人が別の曲を歌ってると、それに合わせてもっと大きな声で歌うので、ほかの人は非常に迷惑していた(笑)。印象に強く残ってますよ。
樋口 完全に“歌ドロボウ”ですね(笑)。大人ジャ○アンというか。みんながそれぞれ楽しく歌うという、カラオケというシステムを根底から……。
石原 破壊してましたね(笑)。
樋口 他の人の歌に、無理矢理割り込んでるつもりはないんですよ。自分としては、バックコーラスのつもりで……ダブルトラックとしてやっているつもりなんですよ。「あ、この人音程ヤバいなぁ……」とか、「この人歌詞忘れてないか?」ってときに、フォローしてるというか、縁の下からスッと支えてあげるというか……。
石原 いや、そうとう“上から”踏みつけてた(笑)。

ポケモンインタビュー
ポケモンインタビュー

◆映像作家×ポケモン世界コラボ誕生!

――そんな“歌ドロボウ”にイラストを発注したのは、やはりコネクションのつながりの強さから?
石原 いやいや(笑)。大本はやはり、樋口さん自身が、先ほど「怪獣映画のお客さんを……」って言っていましたけど、樋口さんの目にはポケモンは“怪獣”として映っていた。その感性で、“怪獣としてのポケモン”をもっともフォトジェニックというか、決定的なポーズで描いてもらえる人という期待とイメージがありました。昔、とある食品玩具で、樋口さんが監修されていたいくつかの作品を見たんですけど、見る角度を変えるだけですごく立体感が得られるという不思議なシリーズがあったんですよね。そんな作品を眺めながら、「いつになるかは判らないけど、ぜひポケモンを描いてもらいたいな」という思いがあったんですよ。先ほどの“国家的プロジェクト”をやっている頃は、商売的な話はできないものですから、どこかで(そんな話ができる)タイミングがあればいいなって思っていました。

――樋口さんは依頼が来たとき、どう思った?
樋口 ポケモンって、十年以上の歴史がある作品じゃないですか。その歴史の延長上に、ボクの描いたポケモンがいてもいいんですか? それとも、あえて外れちゃっていいんですか? ってまず思いました。どこまで突っ走っちゃっていいですか? ……って。歌のエピソードからも判るとおり、自分は常識的な人格を持っていない人間なので(笑)。「まぁ、そういう部分を当て込んで来た話なんだな」と、勝手に自分の都合の良いように解釈しちゃいましたけどね。……その考え方のおかげで、毎回いろんな誤解が生じるわけだけど(笑)。

――描くときにとくに注力した部分は?
樋口 存在するもの、存在しないものを含めて、何かを描こうとすると、描く人のいろんなフィルターがかかると思うんですね。感性というか。実際に存在する生き物だって、いろんなフィルターをかけることで可愛くも見えるし、恐ろしくも見えるし。

――そのフィルターのおかげで“怪獣としてのポケモン”が描けた?
樋口 そうですね。今回描かせていただいたルギアとホウオウって体長数メートルもあって、実際に目の当たりにしたら恐ろしいタイプの生き物だと思うんですね。「そんなやつらが本当に存在したらどう見えるだろう?」って考えながら。しかも、そんな恐ろしい生き物を、自分で御することの醍醐味ってあると思うんですよ、ポケモンって。その感覚を絵にしたいという……ワザのすごさとかね。普段、「モンスターボール」という小さなアイテムに封じ込められている(ところでアレって、圧縮されて入ってるんですよね?)生き物が、解凍されて外に出てくる瞬間の迫力とか、ね。
石原 そうですね。一応、「あぁ、科学の力ってスゴイな」ってコトで設定に収めてあるので。細かい技術とかは、ボクも判らないけど(笑)。

――では、今回描くにあたってのフィルターというのは……。
樋口 勢いと“生き物観”。質感とか。質感をどこまで出せるのか……最初の打ち合わせでは、質感をどこまで許容してもらえるか? ってことを話し合いました。

――「許容してもらえる」というと?
樋口 “ポケモンの世界”のなかで、どこまでいけば仲間として入れてもらえますかってことです(笑)。

――じゃぁ、最初はその(世界観の)ラインを踏み越えちゃってた?
樋口 自分のなかでは、いいところに収まったと思ってますけど。ルギアの方はまだ、生き物として成立しやすかったんですけど、やっぱりホウオウはボディーが炎ですからね。「絶対、羽とかも実体のない炎でできてる!」て思ってて。それを単なる省略化したラインではなく、炎の質感を、全部表現したいという思いがあったので。その設計図みたいなものは全部頭の中にあって、それを少しずつ出しながら描いていった感じですね。

――最初にイラストを見ての感想は?
石原 最初、見たときの勢いとパワーはすごかった! でも「これはポケモン世界のラインを踏み越えてるな」っていうのはありました。うちのライセンシング部の連中も、「こりゃぁダメですよ」って(笑)。でも、“映像作家である樋口真嗣さんが描いたもの”という注釈が入り、その中でこれもひとつの表現世界である、ということを伝えることでクリエーターとしての表現として解釈すれば踏み越えるのもアリかな……と。たぶん、注釈で樋口真嗣と書いてなかったらダメだったかな(笑)。
樋口 治外法権みたいなものですね(笑)。
石原 樋口さんの目からこのように見えてしまっている、ということなんだな、と。しょうがないじゃないか! ということで(笑)。

――そんなホウオウとルギアはどういう位置づけで生まれた?
石原 初登場は『ポケットモンスター 金・銀』になるんだけれど、その2本のソフトのもっともシンボル的な、パッケージをかざる究極のポケモンとして、それぞれが生まれ
たわけです。一方は海底深く、もう一方は天空高く存在し、ときどき(その作品の舞台である)ジョウト地方に舞い降りる伝説のポケモン……2つのソフトの対比として生み出されたものです。2本のソフトを買った、プレイヤーみんなが目指すべき“究極のポケモン”として。

――あこがれを持ってもらいたいという?
石原 そうですね。もちろん、ポケモンのゲームはポケモンマスター、つまりチャンピオンになることが目的なんですけど。もう一つ、プレイヤーに目指して欲しいのが、ルギアやホウオウを手に入れることになりますから。2本のソフトの、一番の極点の2匹という扱いですよね。

――大怪獣のようなイメージはもともとあった?
石原 そうですね。ポケモンのなかではかなり大きい部類に入るし、怪獣映画を見て育った世代が作ったゲームが『ポケットモンスター』ですから。どうしても、その血を引き継いでいるんですよね。好きだった怪獣映画の迫力をどう表現したいか……モンスターボールの中に入っていて、そこから解放されたときの迫力とか、初めて遭遇したときにどのくらい怖いかとか。最初にホウオウとルギアを生み出した頃は、そういった部分を意識してましたから。「仲間にしたけど、本当にコントロールできるんだろうか?」と、自信がなくなるほど強くて、少し怖い生き物……そう思えるようなポケモンですよね。この2体というのは。

――ということは……そんな設定すら越えるようなイラストだった?
石原 そうですね(笑)。そのまんま怪獣でしたよね。
樋口 黒目の部分とかない状態だったし。
石原 最初のイラストはもっと光ってて、「コレ、色も違うじゃない!」ってつっこんじゃった(笑)。
樋口 おっしゃるとおりで(笑)。

 

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ポケモンは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

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