2009年11月17日04時31分

M950かMagic Mouseか、それが問題だ

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 ロジクール(米Logitech)と言えばマウス、トラックボール、キーボードなどのインプット系デバイスを中心に開発する世界的メーカー。いわばマウス界の老舗中の老舗、ゲーマー御用達の『Gシリーズ』など人気製品も数多い。そのロジクールから、ワイヤレス系マウスのハイエンドモデル『Performance Mouse M950(以下M950)』が11月6日に発売された。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑ロジクール製ワイヤレスマウスの新しいフラッグシップモデル『Performance Mouse M950』(直販価格1万2800円)。ひと回り小型のモバイル向け『Anywhere Mouse M905』(同8980円)も発売中。

 2006年にロジクールから発売された前モデルに当たる『MX Revolution』(併売)のあまりの快適さに魅了された筆者としては、この最新にして最強の呼び声高いM950には発売前から当然のごとく注目していた。ところが、発売直前の10月になって突如アップルから画期的なマルチタッチマウスである『Magic Mouse』が発表されてしまったのだ。Mac愛好家でもある筆者としては、この機を逃すわけにはいかない。要するに、本命のロジクールを狙ってマウス購買欲を高めていた矢先に、小綺麗なアップルのマウスが現われたので、思わずそちらを先に購入してしまったという次第だ。

 しかし、運良くM950を試す機会に恵まれたので、このまったく方向性の異なる2種類の最新ワイヤレスマウスの使い勝手を徹底的に比較してみる。なお、Magic Mouseは基本的にMac向けの製品であるが、Windows用のドライバが開発中との噂もあり、すでにある裏技を使えばWindowsでもデバイスドライバーを追加できることが知られている。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑M950とMagic Mouseの外観上の比較。デザインに対する考え方も機能もまったく異なる2つのマウスだが、いずれも現在もっとも注目される製品だ。

どこでも使えるっていいことだ

 まず、外観上はMX Revolutionとそれほど変化のないM950だが、いちばん大きく変わったのがレーザートラッキングの方式。“Darkfield”と呼ばれるこの新機能は暗視野検鏡法という光学技術をベースに開発されたもので、レーザーを反射してしまうような素材に対しては2つのレーザーによってミクロな粒子や傷から反射した光を検知して位置変化を正確に認識するのだという。具体的には厚さが4ミリ以上あるガラス面や大理石など、今までレーザーマウスが苦手としていた素材でも正確にトラッキングできるというわけだ。読み取り解像度も1000dpi(MX Revolution)から1500dpiに向上し、ゲーミングマウスほどではないにしても、ワイヤレスマウスとしては十分なレベルだ。

 とはいえ、あいにく筆者の自宅には洒落たガラステーブルなどないので、自分には不必要な機能かなと思っていた。だが、Magic Mouseではうまく操作できなかった透明アクリルのデスクマットでも問題なく使えることに気が付いた。これは地味ながらも非常に実用的な機能であると思われる。もちろん、木目のデスクとかマウスパッド、太ももの上などで操作するぶんには、どちらも問題なくポインターを的確にコントロールできることは付け加えておこう。

対照的なデザインとグリップ感

 次に、使用感の違いについて見ていく。Magic Mouseは薄く平べったいフォルムながら、2ボタンマウスの機能に加え、ボタンやスクロールホイールの代わりにマルチタッチセンサーを搭載することで、さまざまな操作を可能としている。一方のM950は手の形状に合わせたエルゴノミックなデザインで、厚みもあってかなり大ぶりな印象だ。こちらのボタンは左右クリックに加え、ホイールボタンと左右のチルト、進む/戻るボタン、ズームボタンとアプリケーションスイッチャー(Macの場合はエクスポゼ)用のボタンで計9ボタンという構成となっている。なお、MX Revolutionにあった本体左サイドのホイールは廃止された(個人的にはあまり使わなかったので歓迎できる仕様変更だ)。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑人間の手の形状を強く意識したM950と、ボタンの機能を極力意識させないデザインを貫くMagic Mouse。どっちが好み?

 さて、この両者のデザインの違いは、実際に手にした際に、より大きな操作感の違いとなって現われるはずだ。M950が手のひら全体ですっぽりとかぶせて持つのに適した形状であるのに対して、Magic Mouseは操作時に本体を親指と薬指で支える必要がある。いわば“鷲づかみ”というか“鷲つまみ”という格好となる。これは長時間の操作においては疲労感が蓄積しやすいので不利だろう。ただし、M950が完全に右利き用の形状なのに対して、Magic Mouseは左右対称のため設定次第で左利きの人にも使えるというメリットがある。

スクロールはM950の圧勝

 そして、より大きな違いがスクロール操作だ。マウスの表面にタッチセンサを搭載したMagic Mouseでは上下になぞるだけでスクロールできる。これはこれで画期的な機能ではあるが、M950に搭載されているMicroGearプレシジョンスクロールホイールの便利さとは比べものにならない。このホイールは通常のクリック感のあるモードと、軽く回すだけで数秒間回転し続けるフリースピンモードに手動または自動で切り替えられる。とくにフリースピンモードの快適さは格別で、異様に縦長画面のブログやツイッタークライアントのタイムラインをするする~と高速にスクロール表示できるのだ。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑MX Revolutionから引き継がれた高速フリーホイール。また、ちょっとわかりにくいが、親指下にある部分がアプリケーションスイッチャーボタンとなっている。

ワイヤレス方式は一長一短

 どちらも煩わしいケーブルを必要としないワイヤレス方式のマウスだが、Magic Mouseが通常のBluetoothであるのに対して、M950はよくあるFM方式の無線通信を採用している。Bluetoothは、最近のパソコンであればレシーバが不要というメリットがあるが、初回のペアリングの設定が面倒だったりといった問題がある。それに対してM950の場合は、レシーバを装着する必要があるものの、すぐにマウスを使い始めることができるというメリットがある。とはいえ、各種機能の設定には“SetPoint”(Macの場合はControl Center)というソフトを導入する必要があり、手間に関してはどっちもどっちといった感じではある。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑Magic Mouseの環境設定(左)と、M950の設定画面(右)。多ボタンへの機能割り当てなどカスタマイズの柔軟性はM950が有利。

 最近のロジクール製品には“Uniflying”というユニークな機能がある。これは、1台のレシーバに対して、最大6台までの対応機器をコントロールできるもので、たとえば自宅ではM950とワイヤレスキーボード、外出先ではモバイル用マウスといった使い分けが可能となる。複数のロジクール製品を活用したいという人には便利な機能だ。

M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑レシーバー自体もかなり小型化され、ノートパソコンに装着したまま持ち歩くことも可能となった。なお、ロジクールのラインアップにも『M555b』というBluetoothマウスがある。
M950かMagic Mouseか、それが問題だ
↑底面にオレンジのアイコンが記されているのが“Uniflying”対応製品。右下のレーザーがM950の最大の特徴である“Darkfieldレーザートラッキング”。ミステリアスな語感が個人的にお気に入り。

充電方式はどうなった?

 ワイヤレスマウスの宿命と言えるのが、駆動するための電源が必要になる点だ。Magic Mouseは一般的な単3形電池2本による駆動だが、M950では単3形リチャージャブル充電池を搭載している。充電方法はMX Revolutionでは付属スタンドによる充電であったが、M950には本体前面下部にマイクロUSBポートを搭載しているので、付属のケーブルをパソコンと接続するだけで充電できる。充電中も操作は可能なので、外出時には付属のポーチにこのケーブルを入れて持ち歩くと安心だ。

完成形と進化形

 さて、ここまで長々とアップルのMagic MouseとロジクールのM950を比べてきたが、両者は外観や機能の違い以上に目指す方向性が異なるということに気付かされた。1961年にダグラス・エンゲルバート博士がマウスを発明してから再来年で半世紀。M950は、このマウスの進化の歴史における正統な後継者であり、現時点ではもっとも完成度を高めた製品であると位置づけられよう。それに比べてMagic Mouseは基本的にはマウスのアーキテクチャーを踏襲しているが、タッチパネルという新しいユーザーインターフェースを盛り込んだ最初の製品だ。このことから、マウスとしての練り込まれた設計、使い勝手の良さは明らかにM950に軍配が上がると結論づけられるだろう。しかし、視点を変えればそこは進化の袋小路かもしれず、イノベーティブな可能性を秘めているのは、ひょっとしてMagic Mouseかもしれない。こうした違いを意識しながら両方のマウスを使い比べてみると、新たなインスピレーションを得られるのではないだろうか。

 

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