全国のFM放送系列であるJFN(JAPAN FM NETWORK)の番組でROLLYがパーソナリティーを務める『D.N.A.~ロックの殿堂~』。同番組内で展開している本誌コラボコーナー第8回の様子をお届けいたします。
放送局によって放送日程は若干異なりますが、下記の放送局にて月に1度、第1週に放送しており、11月ぶんは3日から順次開始しております。
ネット局予定:FM秋田、FM新潟、FM富山、岐阜FM、Kiss FM、FM OSAKA、FM山陰、FM香川、FM徳島、FM長崎、FM大分、FM宮崎
※放送局、放送時間などは変更の可能性があります。詳しくは各放送局のHPをご覧ください。
IPサイマルラジオ『radiko』でも聴取可能です(一部地域限定)。auのスマートフォン用アプリ『LISMO WAVE』、ドコモのスマートフォン用アプリ『ドコデモFM』なら全国で聴取いただけます。
今回の放送で取り上げたのはTASCAM(ティアックのレコーディング機器ブランド)の『PORTASTUDIO』というiPad用アプリです。
この名称に「おぅ!」と思った方は、結構いいお歳かもしれません……。これは1979年にティアックから発売された初のカセットテープMTR、『TEAC Portastudio 144』という製品から来ているモノ。実際にはその後継機であり、1984年に発売された『PORTA ONE』という製品をiPad用に再現したものです。私も当時PORTA ONEを購入し、今でも手元にあるのですが、比べてみてもよく似ていることが分かると思います。
そもそもカセットテープMTRをご存知ない方のために簡単に説明しておきましょう。ご存知のとおり、カセットテープは片面でステレオ2chの録音再生ができ、両面で使えるアナログメディアです。これを規格外の使い方として片面4chの録音・再生ができるようにするとともに、2chと4chを再生しながら3chに録音する……といった使い方を可能にしたものがMTRです。このひとつのチャンネルをトラックと呼んでいて、複数トラックに録音できる機材だからマルチ・トラック・レコーダー=MTRと呼ぶのです。当時、業務用だったMTRは8トラックとか24トラックの録音が可能でしたが、オープンリールの太いテープを使うとともに、機材の価格も何百万円もするものでした。それを4トラックとはいえ手ごろなカセットテープで実現するとともに、安い価格で登場させた(PORTA ONEは当時の定価が9万8000円)というものでした。
ROLLYさんも、高校生のころに、Portastudio 144を手に入れて、かなり使ったそうですが、100トラックでも200トラックでも使える現在のDAWと違い、たった4トラックしかないので、とにかくいろいろと工夫をして使ったのだとか。たとえば1トラック目にドラム、2トラック目にギター、3トラック目にベース、4トラック目にボーカルを入れたらそれで終了ですからね。ただ、当時ピンポンというワザがあり、1~3トラックを再生し、その音をそのまま4トラックへとダビングすることで、トラックを節約することができたのです。ですから、それをどういう手順でやると、いい音になるとか、ステレオで扱えるなど、いろいろと工夫したんですね。
さて、このiPadアプリのPORTASTUDIOは、あえて当時の4トラックのMTRを再現したものであり、実際操作もPORTA ONEの実機とソックリ。録音すると、テープは回るし、巻き戻すとキュルキュルと音がする、といった具合。一瞬で巻き戻し可能なDAWから考えると、ちょっとイライラする面もありますが、それこそが昔懐かしいカセットテープデバイス、ということなんでしょう。ただし、このiPadアプリは1点さらに大きな制限があります。そう、ピンポンはサポートしていないので、本当に4トラックのみという形なのです。
数日前に打ち合わせをした際、ROLLYさんから、ひとつ指令が降りました。その場(ラジオ収録)でドラムを入れるのは難しいから、1トラック目にスウィング感のあるドラムを入れてきてほしい、と。そこで、私の手元にあるループ素材を探し、それっぽいものを見つけるとともに、予め仕込んでおいたのです。聴いてもらうと分かるとおり4小節のリズムが繰り返し入っているというものですね。
ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源1
そこからは、まさにぶっつけ本番で番組スタート。ROLLYさんも、このドラム気に入ってくれたようで、ノリノリの感じ。すぐに曲としてのイメージを膨らませているようでした。ここでROLLYさんが取り出してきたのは、ベース。家の奥にしまっておいたものを、わざわざもって来てくれたとのことでしたが、あまりお目にかかれないROLLYさんのベースプレーを間近で見ることができて、なかなか感激。
ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源2
ここでROLLYさんから「これ、テープコンプレッションはかからないね(笑)」とのご指摘が。アナログのテープメディアの場合、レベルオーバーするほどの音量があっても、うまくまるめこんでくれるという特性があるのですが、残念ながらiPad版のPORTASTUDIOはそこまでを再現してくれているわけではないようで、レベルオーバーすると、クリップしてしまい、ノイズになってしまうため、一度録り直しをしています。
ちなみに、この演奏は、ベースをヤマハのギターアンプ、THR10に接続して演奏したものを、iPadで録音しています。とはいえ、iPad内蔵のマイクだと音質的に厳しいので、TASCAMのiPad/iPhone用のマイク、iM2を接続し、これで録っています。なお、放送時はまだ新型のiPadの発売前だったので、第三世代のiPadを用いています。
ベースとドラムがそろったので、今度は3トラック目にギターを録音。先ほどのアンプTHR10への接続をベースからギターに切り替えて準備完了。1~2分、試奏しながらフレーズを考えて、即レコーディング。さすがプロ、すごいですよね。一気に3トラックが完成しました。
ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源3
ここで、4トラック目をどうするかを相談しました。そう、これが最終トラックになるわけですが、ボーカルを入れるのか、ボーカルを歌いながらさらに一緒にギターも弾いてしまうのか……。そこで行き着いた結論は、これはFMラジオ放送用なので、レコーディング自体はオケに留め、最後にオケを聴きながらROLLYさんが歌ってしまうのがいいだろう、と。というわけで、引き続き4トラック目にセカンドギターをレコーディングしました。ここで、改めて再生するわけですが、せっかく4トラックレコーディングができたので、そのままただ再生するだけでは面白くありません。
PORTASTUDIOにはPANという音を左右に振る機能がありますので、これを使ってみました。ドラムとベースはセンターに残したまま、最初にレコーディングしたギターを完全に左、セカンドギターは完全に右に振ったのです。さらに、ベースの音はやや低音をブーストするようにイコライザーで調整した結果が音源4です。だいぶ雰囲気が出てきましたよね。
ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源4
いかがだったでしょうか? これだけの工程を10分強で行なえてしまうというのが、iPadの手軽さと、ROLLYさんの才能ということなんですよね。ここに掲載した音を聴くと、楽曲制作の流れもよく分かるので、勉強にもなるとのではないでしょうか?
「手軽で分かりやすいのがいいですね。また制限があるからこそ、曲のイメージをつくってバンドメンバーに配るためのデモをつくるというのには、結構いいかもしれませんよ」とROLLYさん。昔のカセットテープMTRを懐かしく思う方、また当時の雰囲気を知りたいという方にもお勧めですよ。
ROLLY×週刊アスキー『PORTASTUDIO』音源5
感想など、ぜひROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。ROLLYさんのiPadレビューは週刊アスキー本誌にも掲載中です。次回以降もどうぞお楽しみに!
『PORTASTUDIO』
App Store価格:250円 (価格は記事作成時のものです)
●関連リンク
JFN『D.N.A.~ロックの殿堂~』
welcome to ROLLY net .com(ROLLY公式サイト)
藤本健の“DTMステーション”
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります